やしゃまごみたい
ゼット爺ちゃんに『子供が居ます!』宣言してからが大変だった。
まず、サードの空船に就いて何処まで知っているか?の確認をして・・・ まあ、あんな物を『遺産分与だ!』と言って寄越すぐらいだから、随分と詳しい所までは知っているだろう?とは確信していたが、矢張り巨大な貨物船の持ち主だけあって、かなりの所までは把握していた様だが、コティアの『空船の姫』はティアだと思っていた様子。
そんな曽祖父のゼットに、ゴブリン退治に行った村で聞いた温泉場で空船コティアと出逢った事、スライムに食べられてしまった左腕の事、そのスライムが後に出逢った3匹のスライムの集合体で、何故3匹が1匹になっていたのかは未だに謎のままだが、3匹のスライムがコティアに保管してあった人型AI端末体と同化した事で、超弩級戦艦アルカティアの戦術作戦司令室兼緊急時分離脱出用の空船が動き出した事、そして、本来なら契約した『空船の姫』に片目を提供して、代わりに『空船の姫』と脳内で直接会話する事が出来る義眼を得るのだが、サードは義眼ではなく左腕の義手がその役割を果たす事を説明した。
それに、今の段階では3人の幼児達が、コティアの人型AI端末体だと云う事は公表する予定も無く、表向きはティアがコティアの『空船の姫』で、3人の幼児達は、王都の医療区画で特殊な病気の治療中にサードと出逢い、その病気の治療に効果が有ったのがサードの遺伝子情報で、しかも生後直ぐに両親を無くしている設定にして、サードが遺伝子情報を提供した事から『サードの遺伝子を継承している子供達と云う事で、サードが引き取った。』と云う設定で、
ただ、サードの遺伝子情報を継承している事は事実なので、ジーク兄ちゃん側で作成している必要な書類の作成が終わったら、それを持ってサードが役場の住民課にその書類を提出すれば、晴れて3人の幼児達はサードの実子として認められる事も説明した。
「うむ、そんな事が・・・・・ じゃあ儂は未だヤシャ孫には会えんのかの?」
「現状ではココに連れて来るのは難しいです。 でも、この先、例の1522区画に『ゼット会長が見学』に来るのなら、会えるかも知れません。 一応は『雇用主』と云う事で、私に歩の良い仕事を回してくれるんですよね? ♪
」
「ああ、儂は『新人運送屋』の『雇用主』じゃったの〜! ならば、一応は空船の確認をせんとな〜! ♪ さて、儂の予定が空いているのは・・・? 」
「旦那様、次に旦那様のご予定が空いてますのは、2日後の夕方からで御座います。」
「サード、との事じゃ! ♪ 」
「では、2日後の夕方からと云う事で、こちらも準備しておきます。」
「では頼む。」
この日は、一応、今後の仕事の打合せを色々としたのだが、意外にもゼットの背後に控えていた老執事、この人『元営業統括主任者』で、
「サード様のご要望通り、今後はゼット商会の営業窓口で、他の空船の持ち主達と同じ様に仕事を割振りする事となっています。」と説明してくれた。
ただし、その仕事の内容はゼットの確認の上での仕事らしく、運送屋の仕事を始めるとナナシャ王国以外の国々にも行く事となるのだが、通常なら外国で仕事を終えたら、その国の運輸ギルドから次の仕事を請負うのだが、サードの場合は、その行った先の国の『ゼット商会の支店窓口で次の仕事を紹介される。』事になるらしい。
無論、次の仕事が入って無い場合や、サードが納得出来ない仕事は受けなくても良いし、自分でその国の運輸ギルドで仕事を探しても良いらしい、ただし、必ず行った先の支店の窓口には顔を出す事と、ゼット商会の仕事を受けなかった場合には、次の行き先は必ず報告する必要があるとの事だった。
その日は、ゼット爺ちゃんと色々な話しをしながら夕食を共にし、ゼット爺ちゃんには散々引き留められはしたが、そんなに遅くなる前に1522区画庫に戻った。
何で軍用の階層で無く、商用の階層なのかって?
ゼット爺ちゃんの邸宅で、1522区画が俺の所有に成った事をティアに報告した際に『では、これからコティアを1522区画に移動させておきます。』との報告を受けていたからだった。
個人所有倉庫1522区画の出入口ゲートの前に立つと、何もする前にドアが開き、「「「お帰り〜!♪ 」」」と3人の幼児達がもの凄い勢いで飛び付いて来た。
「はい、ただいま! シロとクロとチャトレは良い子でお留守番してたかな?」
「うん!」とシロは『首が捥げるよ?』と心配になるほどに元気よく首を縦に振り、
「今日は!良い子だった!」とクロは『今日は!なの?』と少々心配になり、
「今日も良い子だったよ!」とチャトレ、
『うん、相変わらずチャトレが3人の中では一番しっかりしてる!』と思いながら、順番に3人の頭をワシャワシャと撫でてやる。
「サード様、今日はゼット様の所でご夕食をお取りになられてはいますが、何かお食べになられますか?」
「いや、もう遅い時間だから風呂に入って、この子達を寝かしつけないとね!」
「はい、ではその様に」とティアがニッコリと笑うと、3人の幼児達が『お風呂だ〜!』と言いながら一斉に空船に向かって走り出した。




