ひまごとしょくじ
その後、王都から海洋都市へ向かって出発する日時、話海洋都市での先代国王陛下の視察予定、サードの空船の現在の改修進捗状況、そして国王陛下に護衛とせて同道する者達についての話など、事務的説明をしていると、ちょうど昼食時間となり、ゼットは固辞するサードを半ば強引に王都のとあるレストランへと連れて来た。
「サード、先ほどまでは少し固い話をしていた事もあって、曾祖父と曾孫との会話らしき話しも出来なんだ・・・ と言う事で! 此処では『曾祖父と曾孫』らしく、ざっくばらんに行こうではないか? サード、この店はなッ その昔、お前の母親を初めて連れて来た時に出された料理があまりにも美味しくて、その後もお前の母にせがまれて良く連れてきた店だ、そしてこの料理がお前の母が好きだった料理だ。」と、シェフ自らが料理をテーブルの横まで運んで来ると、深皿に取り分けサードに差し出してくれる。
「あー、この料理は母がよく作ってくれた料理に似ています。大きな肉の塊をホロホロと口の中で解けるぐらいにコトコトとゆっくりと煮込んだ後に、ニンジンやジャガイモを大きくカットして入れて煮込んだ料理で、父も私もこの料理が大好きで、味にも満足していましたが、父は母に『具が大きすぎないかい?』と、良く言っていましたが・・・ なるほど・・・ 納得しました。
母はこれを再現したかったわけですね!♪ 」とサードが自分の母親の話をする際、余りにも寂しそうな表情をしながら話しをするもので、ゼットは思わず席を立ってサードの横に立つと、
「すまぬ!お前には色々と寂しい思いと、苦労を掛けたなッ! 儂はお前を手助けしてやる事が出来なんだ!」と両眼に大粒の涙を溜めながらサードを抱きしめてしまった。
それから暫く経った後、厳つい身体に、厳つい顔をした老人は、静かに席に戻ると、何事も無かった様に再び話しをし始めた。
「で、サードよ! お前は先代国王陛下達からどこまで話を聞いた? 」
「父が先代国王陛下の三男で、下野に降ったのは宰相閣下の手助けをする為で、父は暗部と呼ばれる情報局局長として働いていた事、その為に冒険者を装い各地を巡って集めていた情報を、宰相閣下に報告していた事等の話を聞きました。」
「では、お前の父母が商会の旅団の護衛中に、盗賊連中に襲われて死んだと言う話に関しては、何か聞いているか?」
「はい、父と母が護衛していた旅団が貴重な金品を多く運んでいた為、何処からか?その情報を仕入れて来た盗賊によって、複数の盗賊達に声が掛けられて徒党を組まれた結果、父と母達が護衛していた旅団が120人以上の賊達に襲撃されて全滅させられた・・・ と、話を聞いています。 そして、襲撃した盗賊達も主導した8人組みの盗賊以外は、全員捕縛されて王都の処刑場で縛り首になって晒されるか? 捕縛する際の戦闘で聖騎士達に斬り殺されたと聞いています。」
「その残りの8人に就いては、何か聞き及んでいるか?」
「宰相閣下からお聞きした所、依然としてこの8人に関しての情報は掴めてはおらず、その8人に関する情報は、未だに『王国の情報部が最優先事項に指定して探っている情報の1つ』だと言う事だけは聞いていますが・・・ それ以外は全く何も知りません。」
「そうか・・・ 儂は、6年前のあの日以来、その残った8人の盗賊達を許すことが出来ず、いまだに情報は漁っている。『もし、お前が何かを王家から聞いて知っていたならば・・・』と思って微かな期待を込めて聞きはしたが、残念だ・・・ しかし、儂は、この事に関しては幾らででも金を惜しむ事無く使い、必ず情報を掴んでやる事にしている。 これが、儂の可愛い孫に対しての供養だと思ってな・・・」とゼットが残念そうな顔をする。
話しが長くなって冷めてしまった料理を、料理長に頼んで温め直して貰う間、出されたチーズをツマミに、元侯爵様から頂いたワインを飲むサードとゼット、
「ああそうだサード、お前は、これから自分で商売をしながらやって行こうと思っているのだろ? うならば存分に儂を頼れ! あの時、儂は、お前に対して何もしてやれなんだ! だから、今度はお前の為に儂は何かをしてやりたいと思っている。 で、お前は今回、空船の持ち主に成った事だし、空船を安心して停泊させる事が出来る港が必要となるだろう。ココを自由に使え!」とゼットが後ろに控えていた老執事に視線を飛ばすと、老執事が小さな箱をサードに差し出した。
「サード、その箱を開けて、中に入っている指輪を嵌めてみろ。」とゼットに促され、サードが言われた通りに、右手の人差し指に指輪を嵌めると、サードの脳内に聞き覚えの無い言葉が幾つも流れて来た。
サードが『えっ!?』っと驚いた表情をしていると、その表情を見たゼットは、イタズラが成功した時の悪ガキの顔でニタ〜 ♪ と笑って、
「サード、それをどう使おうとお前の自由だ、お前の好きにすれば良い・・・」
「えっ!いや・・・ でも!」
「サード、もうお前自身が理解しているとは思うが、それはもう儂には返却出来ないし、お前が今の儂の歳を超えるまでは、他人にも譲渡は出来ないぞ、まあ儂の遺産分与だと思って使ってやってくれ、ああそれと、コレが個人所有倉庫1522区画の譲渡証明書だ 」とゼットが言うと、老執事がサードの目の前に譲渡証明書を差し出した。
「今回のゼット会長との面会は、宰相閣下からの指示でしたが、もしかして事前に宰相閣下と何か?・・・ 」
「まあ邪推はするな! 宰相閣下・・・ いや、ジーク殿も儂も他意は無いよ! ただ、お前の事が心配なだけじゃ・・・ 」
この日、ナナシャ王国運輸ギルドの支局長と、副支局長のコティアの内覧が無事に終わった個人所有倉庫区画の1522区画が、正式にゼット商会からサードへと譲渡された。
ゼットが所有していた途轍もない遺産と同時に・・・
ただ、サードもやられっぱなしもしゃくなので、余裕の表情でワインを楽しむゼットに仕返しをする事にした。
「ああそう言えば、一つ、ゼット会長に報告し忘れてた事が・・・」
「サード、他人が居る場所や、公の場で儂の事を『会長』と呼ぶのは仕方のない事だとしても、プライベートな時は『ひい爺ちゃん』か?『爺ちゃん』と呼んでくれ 」
「はい・・・ 爺ちゃん、俺、3人の可愛い子供が出来たんだ! ♪ 」
「ブッハアァ〜〜〜〜! ゲッホッ! ゲッホッ! ゲッホッ!・・・・・・
なッ・・・ なんじゃと〜〜〜〜!!」




