なまえがきまる
泣き止んだ幼児達の頭を撫でながら、3人と目線を合わせるサードに、
「私のパパなの?」と白い髪の幼女が聞き
「パパ?」と、黒い髪の幼女は疑問形な問いで
「おとうさん?」と、赤茶色の髪の幼児も疑問形で聞いて来る・・・
「うぅぅぅぅ〜ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」」」
サードが、色々と考えを纏める為に閉じていた目を、薄っすらと開けると、今度は大人しくサードの顔を見上げて待っていた幼児達と目が合う。と、突然!
「プッ!アッハハハハハ! 」とサードが笑い転げ出した!
薄っすらと目を開けたサードと、目が合った3人の幼児達が、揃って首を同じ方向にコテチ♪と傾げたものだから・・・
しかも、サードが突然に笑い出した事を、不思議に思ったのか? またまた3人が同時に首を逆方向にコテチ♪と傾げたもんで、とうとうサードの笑いが止まらなくなり、ソファーの上で涙目になりながら腹を押さえ悶えて始めてしまう。
そのサードの突然の笑いっ振りを、不思議に思った幼児達3人が、また反対側に小首を傾げたものだから、それを見たサードはツボに嵌ったのか?笑い声が引き笑いになり、とうとう過呼吸になって悶え痙攣し始めたが、『空船の姫』達は、誰もサードの事を心配したり、介抱する動きも無かった。
彼女達もまた、3人の幼児達の仕草に心を奪われて、ニコニコと笑っていたり、何を妄想しているのか?蕩けた表情で、真っ赤になった頬に両手を添えてたり、撮影用のシステムを起動させて撮影に専念したりと、先ほどとは違う意味で、パニクっていた。
やっと応接室の事態、いや、この場合は『痴態』と言っても過言では無い様子が鎮静化した頃、サードが
「で、ティア? この子達の名前を教えてくれるかな?」
「ええぇ〜っと・・・ この子達の名前は、提督が付けてあげて下さい。」
「えッ?! この子達には名前が付いて無いの? だって、以前はティアの弟や妹として働いていたんだよね?」
「はい、以前は名前はありましたが、今は、何度その名前でこの子達を呼んでも、全く反応を示してはくれないんです・・・ だから、提督に新しく名前を頂ければ、この子達も反応を示して返事をしてしてくれるのでは?と、思いまして・・・ 先程も一部説明はしましたが、基本的に船の操作やコントロール関係に関しては、完璧に覚えてはいるのですが、個人としての記憶が全くと言って良いほど無く、性格的にはあの子達そのままですが、肝心のこれまでに経験して来た記憶だけが欠落してまして・・・ って事で、
一度、あの子達に強制的に記憶をインストールしようとしたら、猛烈に拒絶反応を示されてしまって・・・
で、仕方がないので、提督にと・・・ 」と、最終的にはティアの語尾が小さくなってしまった。
「良し分かった! 今日からお前達はウチの子だ!」
「ホント!?」と白い髪の幼女は目を大きく見開き
「二言無し?!」と黒い髪の幼女は念を押し
「嬉しいです。」と赤茶色の髪をした幼児は嬉しそうにはにかんで、3人揃ってソファーに座るサードに飛び付いて来た。
「そうなると、お前達の名前を決めないとな〜
うぅ〜ん・・・
じゃあ、白い髪の子は『シロ』!
黒い髪の子は『クロ』!
で、赤茶色の髪の君は・・・茶トラ?・・・ いや『チャトレ』にしよう!」
「私の名前! シロ〜〜〜 ♪ 」とシロが嬉しそうに両手を挙げて、その場でクルクル回り
「私、クロ ♪ 」とクロはその場でシュタ!っと片手を挙げ
「僕! チャトレ ♪ 」とチャトレは嬉しそうに自分を指差してニッコリと笑った。
サードに名前を付けて貰い、テンションが駄々上がりの3人を、どうにかこうにかして宥め、コティアが、王都ターミナルの最上階にある『アルカティア専用ドックの桟橋』に辿り着いた。あの日以来、艦内に立ち入る事も、ましてやコティアが係留されている軍区画にすら立ち入る事の出来なかったサードが、初めて軍区画内を案内されているが、サード的には、整然と並ぶ戦艦達をゆっくりと眺める余裕が全く無かった。
サードが他の戦艦を眺めようとすると、
「パパ! 早く〜!」とシロに急かされ、
「パパは、こっち!」とクロが言い
「行こう、とうさん!」と、チャトレがサードの腕を引いて先導する。
シロとクロとチャトレが、交代にサードの腕を引きながら、広い通路をキャッキャ♪ キャッキャ♪ と楽しそうに案内して行く、その通路の両サイドには、各戦艦達のブリッジへと直通する桟橋の搭乗口があり、その入口付近では『空船の姫』達が、それぞれ自分の部下を従えて直立不動の姿勢を取り、サード達が目の前を通過する際には、優雅に敬礼しながら見送ってくれていたが、敬礼して見送ってくれる彼女達に対して、3人の幼児達が笑顔で手を振ると、敬礼した姿勢はそのままに、彼女達の顔の筋肉が緩み、優しい顔になっている。
厳しい規律を守る軍人でも・・・・・・・・・
幼児の可愛い笑顔には勝てない様だ!(((o(*゜▽゜*)o)))♡
そして、可愛く笑顔を振り撒く幼児3人を先頭に、一番奥の区画へと足を踏み入れると、目の前に大きな大樹を生やした空船が浮いていた。