こもちになった
「で、何故?この子達は、こんな『幼児』の姿なんだ?」との問いに、
「この子達の記憶に関する事なのですが、提督に会う前の記憶が不確かと言うか、ほぼ残って無い状態でした。私達の状況を考察した上での憶測でしか無いのですが・・・」と、ティアがゆっくりと喋り始めた。
● 約2000年前に起こった大戦の際、最終作戦を決行した超弩級戦艦アルカティア号は、集中砲火を受けて航行不能となり、地表に落下した事。(この事に就ては、もう説明を受けている。)
● その際、アルカティア号が地表に激突する直前に、提督以下の高級幹部や司令所要員達を退避脱出させる為に、アルカティア号のコア部分でもあり、緊急時には脱出用艦となるコティアを分離した事。
● コティアがアルカティア号と分離した際、コティア艦内に提督が居ない事が判明した事。(提督は、ティアのメインコンピュータルームに残って居た。)
● 全乗員達を退艦させた後、3人が医療用のスライムを使い端末体のボディーを作り変えた事。(その後、アルカティア号から退艦した上級幹部達乗が中心となり、この巨大ターミナルがある場所で王国を立ち上げたが、その際、戦闘員以外のアルカティアの乗組員の多くは、墜落したアルカティアが見える場所に居を構え、街として栄える事となる。)
● その後、3人の行動の理由等は判明してい無いが、一度、スライムを使って巨大な大山猫系の魔獣を捕獲している事は判明している。
何故?山猫系の魔獣を捕獲している事が判明しているのかって?!
今も、サードを下から見上げる3人の頭には、ピコ♪ピコ♪と動く三角形の小さな耳と、お尻から生えた。髪の色と同じ長い尻尾が、可愛い動きでウネウネ♪と動いてるからだ・・・
「何故?こんな事になってるんでしょうか? まあ可愛いから良いんですけどね・・・ 」と言いながら、ティアはのほほんとした表情で子供達の頭を撫でているが・・・
「ああ、提督にもう一件ほど『何故こんな事に?』って事の報告が有りました〜!」
「えっ、何?」
「はい、先程も『スライムを使って巨大な大山猫系の魔獣を捕獲していた。』とご報告しましたが・・・」
「ああ、この猫耳と尻尾の件・・・」
「多分、自分達の『素体を維持する為』のスライムを使った捕食行動だったとは思うのですが・・・ サード様は、この子達に会う前に『大きなスライムに左腕を喰われた!』と仰ってましたよね?」
「ああ、大きなスライムに、突然、木の上から襲われて、気付いたら目の前に小さなスライムが3匹居て・・・」
「それで、そのスライム達に制御室に案内されて『気付いたら王都だった。』って事ですよね?」
「ああ、その通りだが・・・」
「サード様の左腕を食べたスライムが、多分、この子達です。」
「えっ!? でも、あのスライムは一体だったし・・・ 気付いたら居なかったよ!?」
「はい、多分、これからは私達の憶測ですが、この子達の素体を維持するのに限界が来ていて、その為に人の身体を必要としたのか? 意識を転写したスライムに活動限界が来ていて、それを補う為に、互いが意識を転写したスライム同士を融合させて活動していたか?などと、色々と考えられますが、この子達3人の記憶が殆ど無い事を考えますと、多分、両方なのでわなかったのか?と、私達は考えています。 そして今回『大山猫系の魔獣を捕獲した時』と同様に、サード様の遺伝子を、その素体に取り込んでいまして・・・ 」
「?・・・ 如何言う事?」
「羨ましい事に、あの子達はサード様の遺伝子を分けた存在・・・ 即ち、お子様って事に・・・」
「はぁ? 俺は独身だし!? ましてや彼女すらいないのに、何処から子供が出来たって話しが出て来るんだよ!?」
「・・・・・・」
『あっ、ティアが無言で目で合図して来た・・・』
「うっ!・・・・・」
ティアの視線の先には、俺の足元で、俺に声を掛けてみたいが、ティアと話しをしているので、グッと我慢していた幼児たちが、自分達の存在を否定されたと思ったのか?猫耳を垂らして、大きな瞳をウルウルシュンとさせながら、ジ〜〜〜イっと俺の顔を見上げていた・・・ そして、
「あたし達、要らない子?」と白い髪の幼女が聞き
「要らない子なの?」と黒い髪の幼女が訪ね
「う‘’ぇぇぇぇん・・・」と赤茶色の幼児が涙目になり、大粒の涙をホロリと零すと、3人の幼児が一斉に大声で泣き始めた。
その様子を見て、その場に居た大人達は、全員が一瞬でパニックに陥った・・・
一番、人生経験が少ないサードは兎も角、この場に居る超弩級戦艦のティアを含めた弩級戦艦の端末体の彼女達は、例え、正面に2万隻もの敵軍の艦隊に迫られても、無敵な笑顔で突撃して行く様な、ある意味で『場慣れ」した猛者達では有ったが、泣く幼児には・・・対処のしようが無い様で、全員が全員、オロオロしながら右往左往していた。
そんな中で、意外にも・・・・・・
「ほら、お前達が一斉に泣き始めるから・・・ お姉さん達がパニクって、スクランブル発進しそうな勢いだぞ! それに、俺もゴメンな〜 お姉さん達に『子供が出来た!』って言われたもんで、ちょっとだけパニクっただけで、別にお前達を否定した訳じゃ無いんだ!」と、3人の幼児達の涙目で濡れた顔を、ハンカチで順番に拭いてやっている。
この中では、村や街で子守のバイトをした経験が有ったサードの立ち直りが、一番早かった様だ・・・




