よびだされた
400m級工廠艦の『姫』デストから、コティアの改修進捗の報告を受けた後、昇降機付き格納庫を活用した屋敷作りを相談してみる事にした。
「・・・ と言う具合に、一応は、基本的なグラフィックと図面を作ったんだけど、再現は可能かな?」
「はい、可能だとは思います。ただ、格納庫の壁面を利用してグラフィックCGを使った風景の再現に関しては・・・」
「もしかして無理なの?・・・」
「いえ、私達の技術で充分に再現は可能ですが・・・・」
「ですが?・・・」
「サード様が要望されている風景を、細密に再現しようと思われるのでしたら、情報収集艦の協力が必要だと思われます。ただ、今現在、該当の情報収集艦の彼女達は、サード様との接触は禁止されてますので、グラフィックCGでの風景の再現は、先の事となります。 格納庫の壁面の処理に関しては、私の方で進めておきます。」
「了解しました。宜しくお願いしますデスト。」
「ハイ!♪ 」と嬉しそうに応える工廠艦デストの声と共に、彼女との通話が終了する。
最近では、仮想空間システムを利用して、デストからコティアの改修状況の進捗報告を受ける事も多くなり、以前は書面による報告で分かり辛かった内容も、さして苦労する事も無く理解出来る様になった。
例えば、以前ならばボードや書面で確認してた箇所も、今では仮想空間で説明を受けながら、細部まで確認出来るのである。
ただ、相変わらずデストの姿は見えず、音声のみでの報告ではあったが・・・
その後、アイカに大量の木材と石材の発注を依頼したら、『サード様、こんなに木材と石材を発注して、何を始めるおつもりですか?』と詰め寄られたが、
「秘密〜♪ この事は極秘作戦なのだ!・・・・・・ いえ、ごめんなさい・・・ 完全に私事で、全くのプライベートです。ハイ・・・ 予算が出ませんよね?・・・」
アイカの睨み付ける様な視線に負けて、素直に引き下がると、以外にも・・・
「まあ、今まで、我が儘らしき我が儘をほとんど言わなかったサード様が、初めて我が儘を言うのですから、私も叶えてあげたいとは思いますが、こんなにもの資材を求められる理由が分からない事には、考慮するにも・・・」
「理由を言わないとダメ?・・・」
「はい!」
「笑わない?」
「ええ!」
「・・・」
「?・・・・ 今、何と仰いました?・・・」
「だから! 俺は、あの昇降機のある格納庫に『屋敷』を建てたいんだよ!」
「お屋敷ですか?・・・」
「そう、屋敷を!」
「?・・・ 空船がお有りになるのに?」
「そう!」
「空船の船内に、わざわざ屋敷を作ると?・・・」
「悪い?」
「いえ、悪いとは申しませんが・・・ 無駄では? 艦内にお部屋をお持ちだと?・・・」
「俺は、その無駄な事をして楽しみたいのッ!!」
「はあぁ〜?・・・ まあ、老後にご自分で家を組んで楽しまれる貴族もいると聞きますしねぇ〜」
「ダメ?・・・」
「まあ、サード様がどうしてもと、仰ならば・・・」
「じゃあ、そう云う事で!」
「仕方有りませんねぇ〜」
「ありがとうアイカ! 大好きだよ!」とアイカに抱き着こうとしたら、綺麗に避けられてしまった。
「いや〜 やっぱり言って見るもんだな〜 ♪ これで、屋敷を建てる目処は付いたな〜♪ 」とニコニコしながら準備された昼食を食べていると、ポォ〜ン♪と軽やかな音と共に、
「失礼しますサード様。 宰相閣下から『済まないが、午後一番で私の執務室に顔を出して欲しい。』との伝言が届いています。」と食事を取っていた食卓上に、詰所に控えているメイドからのメッセージが届く、
『エッ!? もしかして、もうアレがバレて、俺?怒られるの?!!!』と、戦々恐々としながら、ジーク兄ちゃんの執務室に顔を出すと、
「おおサード来たか?! でわ行くぞ!」
「はぁッ!? 何処に?」
「着けば判る!」
「えッ! 『着けば判る!』って?・・・」
「良いから早く来い!」とジーク兄ちゃんがサッサと執務室を出て行くのを、慌てて追い掛けて行くと、エレベーターホールに出た。
エレベーターホールの中でも、衛士がエレベーターの開閉口の前に立ち、厳重に警戒されているエレベーターに向かって、ジーク兄ちゃんが歩いて行く、
「ご苦労!」
「ハッ!」
『おお〜 ジーク兄ちゃん・・・ さすが宰相様の貫禄!』と思いながら、ジーク兄ちゃんの後に続こうとしたら、
「貴様! そこで止まれ! このエレベーターは王家専用だ! 無礼者め!」と、若い方の衛士に止められてしまった。
「俺の事?・・・」
「なッ! 貴様〜〜〜!」と若い衛士が激昂して、帯剣していた剣を抜刀してサードに突き付ける。
偶々、エレベーターを利用しようとホールに来ていた若い女性が、それを見て『ヒッ!』と短い悲鳴を挙げていたが、剣を向けられたサード自身は、それをキョトンとした顔をして見ていた。
そして、若い衛士は一切の躊躇もなく、サードの心臓に向けて剣を突き出したが、その突きはサードの左腕の義手に掴まれ、阻まれてしまう。
「彼の国の間者かッ?! サード、殺すなよ!・・・ ああ、心配する必要は無かった様だな・・・」
ジークが呆れた表情で見る視線の先には、サードに剣を突き付けた衛士が、床の上で口から泡を吹きながら痙攣していた。
その衛士の処置を指示し、連行されて行く姿を見送ったジーク兄ちゃんは、無言で顎をクイっと癪って、サードに向かってエレベーターに乗る様に促すと、エレベーターのドアが閉まった途端、何とも言えない表情をしながらサードの頭を、クシャクシャと乱暴に撫で『済まなかった・・・』と小声で呟いた。




