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仔猫が二匹怒られたらしい。

 


 目の前に展開されたウインドウには、白目を剥き口からは泡を吹いて痙攣しているレアの姿が映っている。


「おいレア! レア~~~! 」と呼び掛ける声に反応して、赤い髪の色をした幼女が薄目を開けたが、また『おっ・・・ お父様が・・・・』と言いながら気絶してしまった。


 それと同時にクククと、苦笑を噛み殺している様な声がウインドウの奥から聞こえると、

「サード、レアは旦那様(あなた)の姿に驚いて気絶したんですよ!」と、ウインドウの画面が切り替わり、レアが体を預けていた女性の苦笑している姿が映し出された。


「俺の姿?・・・」

「はい、レアが驚いたのは、旦那様(あなた)の顔が、ゾンビの顔に代わっていたからですよ!♪」

「えっ? 俺の顔がゾンビ??・・・」と、膝の上に座る可愛い息子のチャトレに視線を送ると、

 チャトレはどこから持ち出したのか?小さな手鏡を俺に差し向けて来た。


 その手鏡を覗き込んて俺自身も驚いた! そこには恐ろしい顔をしたゾンビが・・・

 そして納得した。


 まあ、正直、俺もかなり驚いた。 驚いた拍子に体がビクッとなったし、声もウォッ!って出そうになった。 レアが白目を剥いて、口から泡を吹いて気絶したのも納得した。



「管理者権限! A格納庫上部ハッチ開放、デッキ上昇!」


 管理者権限で、船の内部に格納されていた俺の家を船の上部甲板に出すと、縁側から降りて下駄を履き、上部甲板に佇む全長80mに届こうかとする巨大な竜に向かって歩き始める。


 その両腕には、ジタバタと暴れる二人の幼女がしっかりと抱きかかえられていた。






 彼の名前はサード、この世界のナナシャ王国内の小さな村で生まれ、14歳で村を出て、18歳に成る迄はナナシャ王国の王都、ジースの学校に通っていた。


 元々は、彼と彼の両親の三人で、第5副都市所属の中規模な街ククレから、徒歩で1日の場所にある小さな村で暮らしていたが、

 ただ、彼の両親の仕事が、とある商家専属の護衛冒険者だった事もあり、彼は幼い頃から一人で留守番をしている事が多かった。


 でも、彼は、家を空ける事の多かった両親に対して不満に思う事もなく、また、寂しいと思う事もなかった。



 彼の両親は、護衛の仕事が終わると真っ直ぐに彼のもとへと、飛んで帰って来てくれるし、彼の両親も彼の事を物凄く溺愛し、大切に育てていてくれた。


 だから、彼の両親が仕事に出かける際、同じ村に住む同年代の子供達が、自分の両親達に抱き着いて、寂しいと泣いているのに対し、彼は素直に笑顔で行ってらっしゃいと言っていた。



 そして、彼が生まれた村も少し特殊な村だった。


 一応は、農耕と畜産が村の主な産業だが、それ以外に、この村は冒険者として生計を立てている住民が多く、そして、引退した元高ランクの冒険者、元上位聖騎士、元王の護衛騎士、極めつけは家督を息子に譲って引退した侯爵様まで住んでいた。




 引退して家督を息子に譲った侯爵様は、サードの家の近くに別荘を建てて、悠々自適に引退ライフを楽しんでいたが、早くに奥方様を亡くしたせいか? 一人での隠居生活が寂しいのか? 侯爵様の執事がサードの家に顔を出しては、侯爵様のお相手を頼む事があった。


 まあ切っ掛けは、彼が10歳の頃、村近くの山中を木の実を探して散策中、偶然にも、この村を視察する為に王都から向かって来ていた侯爵様御一と出会ったのだ、ただ、侯爵様御一行は、村に向かう道中に受け取った情報で『主街道で盗賊の目撃情報あり』との報告を耳にしていた為、一応の用心として迂回コースを選択したのだか、慣れない山道で道に迷い、右往左往していたのだった。



 サードに案内されて村に到着した侯爵様は、すっかり村の事が気に入った様子で、この村の領主である子爵家を呼び、その場で、村の小高い場所にある丘の上を購入、そこに隠居屋敷を建てると宣言すると、そのまま引退を宣言して、同行していた息子に家督を譲ってしまい、それ以来、この村に住み着いてしまった。



 王都でも、政治的にも実力者だとされていた侯爵様の突然の引退宣言に、王国内で色々な憶測が飛び交い、色々と騒ぎにもなったのだが、侯爵からの引退届の書状を読んだ国王は、

「余は、アレには色々と負担を掛け、色々と苦労も掛けて来た。 そろそろ楽に過ごさせてやろうと思うが、臣達はどうおもう?」との問い掛け、それに対して、王の前に立ち並んだ大臣たちは、無言で立膝を突き、王の言葉を受け入れたのだった。




 そして、引退を認められた侯爵様は、これまでの重圧から解放されたのか? 事有るごとにサードを呼び出すと『山に狩りに行こう! 川で魚を釣ろう! 剣術を教えてやるぞ! 馬の乗り方を教えよう! 空船に乗って別の副都市に遊びに行こう! 』と誘うのだった。

 それはもう、孫が大好きな祖父が、一生懸命に孫を遊びに誘う姿にも似ていた。


 また、祖父と言う存在を知らないサードにとっても、祖父が出来た様で嬉しくもあり、引退した侯爵様に無邪気な笑顔を見せるのだった。



 ただ、そんな微笑ましい二人の様子を聞いた王都に住むある人物は、受け取った報告書をビリビリに破きながら、

「トーマ! お前一人だけ~~~! この野郎~~~!」と悔しがって、地団駄を踏んだとか? サードと引退した侯爵様が空船で旅行に出掛けると聞いた時には、

「オイ!魔術師達! 今から第5副都市に嵐を呼び寄せて、空船が出航出来ない様にしろ!」とか、

「目的地の第3副都市の宿を、ワシの名前で全て貸し切りにしろ~~~!」などと、かなり騒いだらしい・・・・・



 ただ、サードが14歳に成った年、突然のサードの両親の訃報を聞いた時には、引退した侯爵様がサードの側に居た事を、とても感謝したらしい・・・・



















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