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思っても無い事態に

 

 空船が、自分の船体を修理して貰える場所を求め、第3副都市ターミナルを出発したその後、目的のターミナルには呆気ないほど簡単に到着する事は出来たが・・・


 まあ、到着したターミナル自体には何も不満も問題も無かった。利便性だけを考えるとね、ただ問題は、空船が入港したドックの場所だった。



 その場所は、王都の学園に通っていた時にも良く目にしていたし、居候していた屋敷からも良く見えたと言うか?存在自体が妙な威厳があると言うか?目立つ構造物、王都の中心地から見て北西の位置にそびえ立つターミナルだった。



 問題は、サードを乗せた空船がターミナルにアプローチした際の高度。


 通常、再稼働した空船が入港した場所や区画で、空船の運用方法が変わるし、空船の船種が判明する。

 ターミナルの1階層から8階層区画が土木や工房系、9階層から15階層が商業系、16階層から25階層が軍関係、26階層から30階層が貴族の専用区画、そして31階層以上が王族達の区画であり、王族の居住区でもあり、王城でもある。


 通常ならば、26階層以上の高度から再稼働した空船がアプローチを開始する事など、有り得ない事なのだが、サードを乗せた空船は、高度2100mを誇るターミナルの更に高い高度からアプローチを始めたのだ、それに伴い王都のターミナルではハチの巣を突いた様な騒ぎとなり、400m級と800m級戦艦の空船が何隻も出航して来て周りを取り囲む中、王の御座である玉座が置いてある38階層の一つ上の、39階層の高さ800m/幅600mの門が静かに開き、サードが乗る空船だけがその中に迎え入れられた。



 それから3か月後、色々と面倒で難しい事態に巻き込まれ、今でもその渦中の中心である事は間違いないのだが、俺は今、病院区画のとある豪華な病室のベッドで横になっている。

 昨夜、念願の義手が左肩に装着されたのである。 それに、その装着手術も意外と簡単で、手術時間も短かった。


 ベッドに横になったまま、義手の手を握ったり開いたり、手首をクルクルと回転かせてみたりしていた。


「この義手って、外見は一番安くて機能も付随してない義手ですよね?」

「はい、サード様の左肩に装着させて頂いた義手は、見た目こそ球体関節仕様の一般的な義手と一緒ですが、内臓されている機能は高級品の義手以上の性能を有しています。」

「でも不思議だよね?目をつぶって左手の義手を動かすと、以前の生身のままの腕と勘違いするよ・・・ 物を触る感触に痛覚、冷たい熱い、風が当たる感覚のなんか・・・  全然違和感がないや!」

「はい、それが高性能義手の特徴でございますから・・・  それに、サード様の義手の素材として使用したミスリルと、サード様の相性が良かった事もございます。」

「この義手を触った感触は柔らかくて、温かさも感じるのに、一瞬で、同じミスリルで作った剣で切りつけられてもキズの一つも付かないなんて・・・ いまだに信じられないよ。」

「その辺りは、明日にでも訓練場でご説明させて頂きます。」

「ありがとう。また明日も宜しくおねがいしますね」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。 では失礼します。」と言い、サードの病室を退室して行った技術医師を見送ると、自分の左肩に装着された義手をまじまじと眺めた。


 義手は、球体関節仕様の義手や義足と同じ形式で、手首部分は球体が一個の関節だが、肩と肘の関節は二個の球体を連結させた様な形をしていて、球体の直径は90mm、肩関節と肘関節は直径80mm/長さ270mmの円柱の棒で接続されており、肘関節から手首の関節も同様の仕様で、手首から先の部分は生身の手と同じ様な形で、ただ、色は艶の無い黒鉄色仕様になっていて、関節可動域は生身の関節よりも広く、関節の稼働部分に全くの継ぎ目が存在しない、技術医師の説明では、

「サード様の義手の表面は、砂漠の民の義手や義足等でよく使う流体金属の被膜をコーティングさせて頂きましたが、実は、この流体金属の被膜コーティング仕様が肝でして、本来ならば外部から電力の補充もしくは魔力の補充をする必要が有るのですが、流体金属にミスリルとヒヒイロカネを配合する事で、この義手はサード様から生体エネルギー及び魔力を吸収して稼働する為の動力としていますので、サード様の義手は非脱着式仕様となっています。さらに基本的にはメンテナスフリー仕様でございます。」と言っていたのを思い出していると、病室のドアをコンコンとノックする音が聞こえた。


「はい、」

「失礼します。 私、先々代国王様の執事を務めさせて頂いております。セバスと申します。突然のご訪問、誠に申し訳なく思いますが、先々代国王様がどうしてもサード様にお会いしたいと申しまして・・・」

「えっ!? 私が先々代の国王様のおん前にですか?・・・」

「いえ・・・ 実はもう部屋のま『エエイ、セバス! 早く退かぬか!』・・・」

「サードよ! お主と会うのは初めてだが、ワシがハウゼクトの祖父、ヨハンソン・フォン・ナナシャルじゃ! 余の事は遠慮なく曾祖父様、もしくはおじい様と呼ぶが良いぞ! ああ、特別にヨハン爺ちゃんでも良いぞ!」と、額に汗をかいて恐縮する白髪をオールバックにした7~80代の老執事を押しのけるようにして、多分、80近い年齢なのだろうが、年老いても尚、逞しい体系をした老人が、元気に病室内へと入って来た。


 思いもしない突然の事態に、ただ、目の前に佇む老執事と同様に、額に汗を滲ませて苦笑いするしかないサードであった。・・・








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