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Past Letter  作者: 東師越
第1章 〝死神〟と呼ばれる男
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第7話 陰謀

 翌朝、アリシアは自室のベッドの上で目を覚ました。


 そのベッドのアリシアの右足の側にラルフェウが座って眠っている。


「……あれ」


 アリシアは全裸である。


 バッと反射的に布団で体を隠し、布団が動いた事によりラルフェウも目を覚ました。


「……あ、おはようございます、すみませんここで寝てしまって……」


「いや……それはいいけど……私の服は?」


「洗濯物に出しました、起こさずに脱がすのは初めてだったので、熟睡出来て何よりです」


「……そっか……」


 アリシアはラルフェウの言葉から段々と状況が読めだし、ラルフェウから目を逸らし後ろを向いて、恥ずかしさで顔をカァーッと赤らめた。


「身の回りの事も僕の仕事ですし、あ、胸の下着ですが合わないモノは着ない方がいいですよ、少し大きいモノばかりでしたから」


 ラルフェウは立ち上がり、両腕を上にグーッと体を伸ばした。


「……そっか……何で分かったの?」


「触診ですが?」


 その様子をアリシアは想像……妄想し、さらに恥ずかしくなって後ろに顔を逸らしたまま両手で顔を隠し、声にならない声を出していた。


「どうしましたか?」


「えっと……何をどこから説明したらいいのか……えっと……まず着替えたいから、出て行ってもらっていいかな……」


「はい……?」


 アリシアが脳内で勝手に完結させたため、何も分からないラルフェウは首を傾げつつアリシアの部屋を出た。


 ラルフェウの忠告通り自分に合ったサイズの下着を着て、アリシアはラルフェウが畳んで用意していた服に着替えてダイニングに向かう。




「美味ぇよ~何でスープがこんなに美味ぇんだよ~」


 ベイルはスプーンを握って、音を立てながら吸うようにスプーンからすくったスープ飲み、いちいち「あぁ……」と幸福感をこぼしていた。


「出汁とってるっすから」


「てかよ、結局なんで地面落ちてきたわけ? 意味分かんねぇんだけど、なあラルフェウ?」


「元々脆かったのか、もしくはあの兵士が核をついたり、爆破などで崩落させたのでしょうか──


 ──そもそもあんな草原のど真ん中に街がある理由の方が謎です……やはり昔あの地下をあの場所で掘っていたのでしょうか……」


「あの人達は地下掘る仕事してた人達の末裔達らしいっすよ、鉱石か何かがあったんすかね?」


 レオキスはアリシアの分のスープを器に注ぎ、アリシアの席の前にスプーンとパンを添えて置いた。


「なるほど……あ、ベイル様、これからどちらに向かわれますか?」


「飯美味ぇとこ」


「だとすると……セタカルド諸島辺りはどうでしょうか」


「そこは美味ぇとこか?」


「島なので海の幸は豊富かと……何度も行ってますよね?」


「はい決定ー」


 何気ない軽快な会話にも、長年の付き合いを匂わせる。


「速いっすね~決めるの」


「となると、まだかなり先になりますね……」


「ふあぁ~……」


 アリシアは椅子に座りスープを1口飲むと、力が脱けきったようなあくびが無意識に出ていた。


「漏らすなよ」


「いや漏らさないよ」




   ※ ※ ※ ※ ※




 ベイル達が船のダイニングで朝食を取っていたその数時間後、ルブラーン王宮の長官室にて。


 ルナは〝言伝貝ディーシャレ〟でエイダが属していた兵団支部に連絡を取っている。


「……そうか、分かった」


 会話が終わり、ルナは〝言伝貝ディーシャレ〟を切ってから長官室を出た。


(コロホの街にレフレアの移民受け入れの書類はなかった……エイダが何か隠しているのか……)


 するとルナの後ろから、兵士の男が気配をほぼ悟らせずに1人現れた。


「ルナ様、レフレアへの調査隊からの報告です」


「ここでは長官だ」


「失礼しました、長官」


 2人は歩きながら話し出す。


「話せ」


「レフレアにて、エイダ支部長の死亡が確認されました」


「死因は」


「解剖の結果、首の骨が粉々になっていたそうです、恐らくは即死でしょう……外傷は見当たりませんでした」


「外傷無しで首が粉々にだと? そんなことどの種族にも真似できない……ベイル・ペプガールか……」


 憶測に過ぎないが、ホーウェンとの会話の後でタイムリーなためにベイルは第一候補に挙げられた。


「現状だとそう考えるのが妥当でしょう、神話も見る限りじゃデタラメすぎる、何があってもそいつのせいに出来る」


「この話はくれぐれも王には話すなよ」


「何故ですか?」


「……王は〝ジェノサイド〟とつながっている可能性がある」


「っ!?……まさか、仮にもクルエルの血族なのに」


「このままでは人間界のフィクサーが〝ガービウ・セトロイ〟となるかもしれない、この現状を利用出来ればなお良し、とにかく引き続きコーゴーとの連携を頼む」


「はい」


「それよりマラク、その服どうやって手に入れたんだ? ここの兵団に属してないだろ」


「長官はご自身の名前がどれほど利便性があるのか今一度理解すべきです」


 ルナに直々に命じられたとでも(うそぶ)けば、カモフラージュなど容易い。


 それだけこの人間界では、ルナの存在は大きなモノなのだ。


「はぁ……やはり下位に甘んじてた方が自由は利いたか……」


「そんなこと言わないでください、それではこれで」


 マラクは会議室の手前でルナと別れ、マラクは窓から外に飛び出し、ルナは会議室に入っていった。




「遅くなりました、王」


「いや待ってないよ、はい座って」


 ルナは長机の王と対になる先端の席に座った。


「今日は3人の新人を紹介するね、はい自己紹介」


 言葉の後に、王の右側に座る3人の男女が立ち上がった。


「ドグラ・マギラスだ、セタカルド諸島? の統括本部長やるからよろしく」


「……何故ギュートラスは外されたのですか?」


「ギュートラスはルブラーンに戻す」


「何のために」


「警備強化だ、王女捜索で外に兵士が出るからな、何か問題でも?」


「その者に如何ほどの力があるかは知りませんが、ギュートラスは素行に問題があるので替え時だとは思っていました、ルブラーンなら秩序は保たれるかと……今日も無断欠席ですが」


 ルナと同等の地位に就きながら、本来ならいつ解雇になってもおかしくない素行の目立つ男──ギュートラス。


 それでも戦闘能力の高さや破天荒故のカリスマ性なども加味され、解雇はされずにいる。


「そうか、今日からセタカルド諸島へと行ってもらう、はい次の人」


「ランス・ウーク、コーゴーから派遣されました、序列外聖戦士です」


「……同じく……リア・テルト……」


「2人にはルブラーンの警備強化に務めてもらう、もう座っていいよ」


 言われた通りに3人は席に座った。


(3人の闘値は──


 ──ドグラ・マギラス、70万

 ──ランス・ウーク、74万3000

 ──リア・テルト、75万


 ──まあ本来の数値よかかなり抑えているだろうが……変だな、闘値万越えは俺とギュートラスだけで足りているのだが……)


「じゃあ定例会議始めよう」




   ※ ※ ※ ※ ※




 数時間後。


 定例会議は終了し、会議室には王とルナだけが残っていた。


「増員? 何人ですか」


「40万人」


「40万人!? コーゴー本部の聖戦士より多いですが」


「だが全員、序列外聖戦士程の力はある」


「まさか……〝種族変化〟……しかもノーリスクで」


「研究に40年かかった、犠牲になった人間は……まあ数えてないけど、ウン万人くらいかな……ようやく実現した」


「……遺伝子サンプルの提供者は……あのドグラですか」


「さすがルナ、勘がいい」


「……どうも」


「それで、何人かをドグラと一緒に行かせて、他はルブラーンに就かせる、よろしく長官」


「戦争でもするんですか?」


「しないといいね、ホントに」


 ルナと王はお互い会話の中で牽制し合い腹の中を探ろうとするもどちらも堅く、これ以上の動きは無いと見てルナは話題を変えた。


「……王、ひとついいですか」


「何?」


「協力者が付いていたり、何があるんですか? あの王女は……一部にしか存在すら知られていないはずなのに」


「そうだな、その辺りも調べないと」


「何故今セタカルド諸島の警備も強化する必要があるんですか、セタカルド諸島に何があるんですか……近い内に祭りがあるくらいでしょうに」


「ひとつじゃなかったのか? もう出ないといけないんだけど」


「……まだ夕方ですが」


「今日はひいきの子の誕生日なんだ、今夜はパーティーだ」


 そう言って王は会議室を出た。




   ※ ※ ※ ※ ※




 ルナもその後会議室を出て、長官室に戻った。


「長官、王は」


「今は2人だけだ、いつも通りで良い……娼館だ、奴は王としての誇りと自覚はあるのだろうか……」


「レフレアの生き残った民からの情報です、正体不明の4人が南へ向かっていったと……その内一人に、金髪碧眼の少女もいたと」


「支部の重要情報の共有は、まず俺を通すように言ってあるよな」


「もちろん」


「……1週間後、俺もセタカルド諸島に向かう」


「は……何故ですか」


「確かめたいことがあってな」


「なら、俺は少し単独行動してきますね」


「場所は?」


「とあるご老人にお話を聞きたいと思いまして、安心してください、コーゴーの利益にはなります、ご老人の口が軽ければ」


「頼むぞマラク」


「特等様に頼まれたら、やり遂げるしかありませんね~、では」


 マラクは長官室を出てから早馬を走らせてルブラーンを発ち、ベイル達が向かっていった道のりとほとんど同じ道を走っていった。

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