MEMORY いつかまた逢う日まで
重い、あまりにも重い代償を払った。
戦争の無い日常が欲しくて、大好きな人とずっと一緒にいたくて、この手で星の数ほどの人の命を絶ってきた。
誰に称えられても、嬉しくなかった。
いくら後悔して謝っても、手についた血と罪は拭えなかった。
繰り返した回数も覚えていない。
3億回目辺りから記憶があやふやで、よく思い出せない。
なのに私にとっての最善最良の選択肢は存在せず、神をこの世の何よりも憎んだ私は苦渋の決断を強いられた。
愛する人との決別することで、私は新時代の王になった。
空虚なモノだった。
会いたい、もう一度だけでいい。
会って、話して、触れて、笑い合って。
ささやかでいい、世界だとか人類だとか大それたモノはどうだっていい。
私はあなたのそばにいたい、望みはただそれだけ。
それだけなのに、私以外の全てがその幸せを許さない。
今日も私は、あなたを思い焦がれるだけ。
2度と会えない、あなたを。
※ ※ ※ ※ ※
「おはようございます」
「……うん、おはよう」
彼女はいつも通り、起床後は支度を済ませて仕事を始める。
必要な書類へサインを書く以外の仕事は、もう何年やっていないだろうか。
表舞台に出られない身のため、活発に動くことも禁じられている。
作業となったサインを書く中で、1枚気になる内容の書類が目に入った。
「これは……」
それは、2ヶ月半前に陽ノ國で起こった内戦に関する報告書。
守護神ウーヴォリンが片方に加担し、加護を分け与えたという文章に目を疑った。
神が己の力を人に与えることなど到底信じがたいが、あのウーヴォリンならあらゆる常識を破壊しうると切り替える。
この戦いはそもそも〝神証〟争奪戦にあまり影響しないが、何のためにここを訪れたのか。
(神の器がいた? 必要な〝聖器〟を集めるため? だとしても力を与える必要なんて……まさか)
ある推測が、彼女に過る。
ウーヴォリンが近い内に本格的に動き始めた時のための、予行演習なのだとしたら。
攻撃行為ができないウーヴォリンは、争奪戦勝利のために人を利用するのは確定している。
火ノ國を利用して、来たる本番に備えているのだとしたら。
「午後の予定を変更します」
「変更ですか?」
「陽ノ國に行きます」
「陽ノ國って、ちょっ、〝霊王〟様!?」
妖術で山のように積まれた書類へのサインを一瞬で書き終え、出掛ける準備も同時に終える。
世は少しずつ、しかし確実に変革していく。
その波に呑まれぬように、〝霊王〟ノエル・シルバーハートも動き始めた。
第15.5章 Struggle これにて完結!
次回、第16章 雲を翔け空を舞う
そして、選ばれし者達が集結する──




