第2話 ~三人目の犠牲者~
次の日学園に向かうとすでに美菜と秋斗が教室にいた、珍しく二人が話し合っていた、そんな二人を見ながら俺は自分の席に座った
「おはよう…美菜が早いなんて珍しいな」
「おはよう、私だって早く来るわよ?」
自慢げな顔をして挨拶を返してきた、まぁ、美菜が早く来るのは必ず何かがある訳なんだが
「んで、一体なにを話し合っていたんだ?」
「いや…美菜のやついきなり襲われた二人の見た目を聞いてきたんだよ」
「だって関連性が分からないから見た目で襲う変態かと思って……」
まぁ、確かに関連性が分からない以上見た目で襲われた可能性もありえる
「それで?結局どうだった?」
「残念ながら二人の容姿はそこまで似ている所は無いんだよ、身長もまったく違うし、顔も違うからな、事件と関係ないと思うぜ?」
「そうなんだよね~……はぁ…」
美菜がため息をついて窓の外を見ていた
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ー昼休みー
「英樹、食堂行こうぜ」
昼休みになり秋斗が近付いてきた、まぁ、今日は用意してないから食堂に行くけど
「はいはい、どうせ奢れだろ?」
「分かってるじゃないか、物分かりのいい英樹は大好きだぜ」
「お前に好かれても嬉しくないな」
ため息をついて席を立つ、しっかりと財布も持ったな
「あっ、私も~」
すると美菜も奢れと言い始めた、なんだコイツら…こういうときは協力関係だな
「そうだ、紗月も来ない?」
「えっ…いいんですか?」
「いいよいいよ、転校祝いに奢ってあげるから」
「…俺の金なんだがな」
ということで四人で食堂に向かった
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「そう言えば、紗月ってどこから来たんだっけ?」
頼んだものを受け取りテーブルに向かうと、美菜と水無さんが話していた、俺は美菜の隣に座り秋斗が水無さんの隣に座った
「えっと…私元々学校に通って無かったんです」
「へぇ~……?どゆこと?」
「いや、分かってないんかい!?」
美菜の頭に?マークが浮かんでいる、それに秋斗はすかさずツッコんだ、まぁこの二人はいつも通りだな
「孤児院に居たんだったよな?」
「うん、そんな感じの所かな?」
「えっ!?なんで英樹知ってるの!?」
「いや…席隣だからイヤでも聞こえてくるんだよ……」
昨日水無さんがクラスメイトに質問攻めされていたときに聞こえてきた情報だ、他にもいろいろと聞こえてきたが……あんまり人に関心を持たないから興味ないんだけどね
「孤児院かぁ……じゃあどうやって勉強してたの?」
「一応勉強を教えてくれる人はいたので、ある程度は大丈夫…です」
「そっかそっか…まぁ、分からない所があったら私達に聞いてね」
「えっ!?美菜お前が勉強教えられるのか!?」
「秋斗君?後で話し合いをしましょうか?」
ほんとにコイツらは……水無さんも苦笑いだし
食べ終えるとお盆を返却口に戻して教室に戻った、ちなみに美菜と秋斗はちゃんと話し合いをしたみたいだ
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ー放課後ー
いつの間にか時間は放課後になっていた、授業中ずっと事件のことを考えていた、俺一人が考えたところで何かが変わるわけじゃ無いけど
「英樹、どうしたの?」
帰る準備を終えた美菜が隣にいた
「いや、なんでも…」
俺は鞄を持ち上げると席を立った、とりあえず今日は帰ろう
「あれ?部活は?」
「ちょっと用事があるから帰る」
「そ…そう?…じゃあ、先輩には私が言っておくね?」
「ありがとう、また明日な」
「うん、じゃあね」
美菜は頷くと部室に向かって歩き出した
俺は学園を出ると、襲われた女子生徒がいる病院に向かった
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学園から結構な距離があったがようやく病院に着いた、面会時間もまだ余裕がある
「っと、確か…」
1枚のメモ帳を取り出す、そのメモには女子生徒がいる部屋番号が書かれてる、秋斗からの情報だけど信用はあるのか分からない、とりあえず向かってみることにした
「あった…」
そこまで探すこと無く部屋を見つけた、ありがたいことに部屋が一緒っていうのはよかった、いや、こんな時にありがたいなんて不謹慎か
部屋の中に入ってベッドの上にいる女子生徒二人を見てみた、息は若干しているが起きる様子は無い
「…………?」
少し違和感というか、生徒名簿を見た写真と二人の髪型が違う、いやまぁそりゃそうなんだけど、一つだけ関連性を見つけたとしたら彼女達は同じ髪型をしてる、サイドテールだ、一人は右でもう一人は左だが確かにサイドテールだ、いや、こんなことが事件と関係しているのか分からないが、彼女達の容姿はどこも似てはいない、身長も全く違うし、性格も違う、二人が知り合いというわけでもない、無差別と言われたら否定できないレベルで彼女達は関係がないのだ
とりあえず関係がないがサイドテールだけ似ているとだけメモに書いておこう、そうして病院を後にした
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病院からの帰りにコンビニに寄って弁当を買った、意外と混雑していたため辺りはすでに暗くなっていた、こんな時に限ってレジに新人しか居ないっていうのもね…
「まだまだかかりそうだな……」
家と真逆の方角のためまだ歩かないといけなかった、そういえばこっちは美奈や朝倉先輩、秋斗達の家がある方角だ、あまり来ることはないから少し新鮮ではある
しかし、それなら秋斗の家に泊めてもらえばよかった気もするが、まぁ、明日も学校だし大人しく帰ろう
「ん?……あれは」
しばらく歩いていると、見慣れた人を見つけた、あの姿は朝倉先輩だ、学園からの帰りなのか鞄を持ち歩いていた、こんな時間まで残るなんて珍しい
「先…?」
先輩と言いかけたところで何やら妙な気配を感じた、俺の視界には先輩しかいない、空は暗く星が光っていた、気のせいだろうか
「ん?…おや、手島君じゃないか、こんな所でどうしたんだい?」
先輩の方もこっちに気付き、不思議そうにしながら話しかけてきた
「いえ、ちょっと用事を片付けてただけですよ」
「ふむ?そうか、まぁ、変なことをしてないのならいいんだが、手島君に限ってそんなことは無いだろうけどな」
「あはは…」
「夜も遅くなるんだ、早く帰るんだぞ?」
「分かってますよ、先輩も夜道には気をつけてくださいよ」
「分かっているさ、じゃあ、また明日」
「はい、また明日」
すれ違いざまにいつものやりとりをして、お互い歩き出した
数歩歩くと再び妙な気配を感じた、今度は気のせいじゃない、空を見上げると確かにそこにあった…いや、そこにいた
「……まさか」
違和感、確かに空が見える、一部を除いて
違和感、確かに星が見える、一部を除いて
そして、違和感は確信へと変わった月明かりに照らさせて
確信は疑問へと変わった、なぜここにいると
疑問はすぐに答えを出した、聖女学生とサイドテールの二つで
答えは焦りを生んだ、先輩が襲われると
焦りは声を出した
「先輩!!」
黒い影は俺の声と同時に先輩に向かって襲いかかっていた
瞬間だった、先輩はこちらを振り返り、そして黒い影が先輩を前に立つ、先輩は声を上げることも無く倒れた、何が起きたか分からない俺にも全く
「っ…クソ…」
俺は先輩の方へ駆け寄っていた、ここで捕まえないといけない、ヤツを逃がしてはいけない、そう思った
「…」
しかし、あと少しのところでヤツは飛んだ
空に、文字通り飛んだ、空高く
「…」
そして夜空に消えていった
「…先輩……」
残されたのは力無く倒れている先輩と何も出来なかった俺だけだった