第1話 ~転校生との出会い~
「よー英樹、今日はビッグニュースを仕入れてきたぜ!!」
席に座るなり一人の男子学生が俺の背中を叩きながら話しかけてきた。
振り返ると、親友の吉田秋斗がいた。
こいつとは小学生からの友人で小中高と同じ学校で過ごしてきた、いわば腐れ縁みたいな感じだ、もう一人同じような腐れ縁の親友がいるがまだ来ていないので紹介は後でしよう
「いっ!?……なんだよ…いきなり」
背中をさすりながら秋斗を軽く睨み、ビッグニュースというのを聞いた
「なんと、今日は転校生がやってくるんだぜ!!しかも美少女だ!!」
「へぇー…で、どこ情報?」
「信じてないみたいだな…だが、今回は信憑性アリだぜ、担任のコバッチから聞いたからな」
うちらの担任、小林先生…クラスの皆はコバッチと呼んでいる、ノリのいい人で面白い冗談などをよく言う、授業も分かりやすくこの学園では人気な教師だ
「そうか…コバさんか……」
そしてよく秋斗に情報を与えるのも小林先生だ、と言っても与える情報はテストの山場とかだけど、しかも、聞いた場所は1回も出たこと無いし
「まぁ、どんな容姿から期待して待ってみようぜ」
「なになにー?二人して楽しそうじゃん?」
「げっ……美菜……」
「げっ…ってなによ?秋斗?」
今話しかけてきた少女がもう一人の腐れ縁、白井美菜、明るく男女共に人気な友人だ、ちなみに分かるとおり秋斗の天敵でもある
「おはよう美菜、今日もチャイム5分前だな」
「おはよう英樹、仕方ないでしょ?女の子には色々準備があるんだから」
「…美菜みたいなやつでも女の子って言うのかよ……」
「秋斗君?もう一度おっしゃっていただけますか?」
いつも通りのやり取りを見ていると担任の小林先生が入っていた
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「さて、皆に嬉しいニュースがあります、特に男子は喜ぶニュースです」
先生がそう言うと秋斗がこっちを見てドヤ顔を見せてきた、少しイラッとしたので消しゴムを少しちぎって投げてやった
「ーー!?」
どうやら目に当たったのか秋斗は一人で悶絶していた
「水無さん、入ってきなさい」
ーガラッー
『……おぉー!!』
先生が呼びかけて扉が開き、一人の少女が入ってくると教室内は男子学生の歓声で盛り上がった
「…うるさ」
「英樹、あんたは興味ないの?」
あまりにうるさいため外を見て気分を変えていると、後ろの席にいる美菜が話しかけてきた
「正直どうでもいい……それよりも今日のニュース見たか?」
「見た見た、またうちの学園の人が襲われたんだよね」
「…もしかしたら、うちの学園の生徒を狙っているのかもしれないな」
「…うわぁ……計画犯ってやつ?……まじ変態な上に気持ち悪い……」
美菜とそんなやり取りをしていると、今さっきまで教卓の横にいた転校生が隣に立っていた
「よろしくお願いしますね…えっと…」
「よろしくね、私は白井美菜、コイツは手島英樹、えっと…水無紗月さん?」
「白井さんに手島くんだね、よろしく」
美菜が勝手に人の名前を教え、話が進んでいた。
転校生…水無紗月はよろしくと言ってにっこりと微笑んで席に座った、どうやら隣の席らしい、せっかく隣がいなくて楽だったのに……
そしてなにやら周りからの視線が地味に痛かった
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ーー放課後ーー
ようやくうるさい一日が終わり、部活動の時間…もとい放課後になった
俺はいつも通り所属している部室、パソコン室へと向かっていた
「おーい……置いていかないでよ、っと……」
後ろから美菜がやってきた、なぜかコイツも同じパソコン部に入っている
「知るかよ……というか、場所一緒だろ……」
「場所が一緒だから二人で行こうとしてるんでしょ?」
「………意味が分からん…」
「…バカ」
そしてなぜか拗ねてしまった、そんな美菜を気にせずに部室に入った
「おっ……ようやく来たか」
そこには部長の朝倉佳織先輩がいた、この人は色々な事件や情報を調べている
「いつもながら早いですね、朝倉先輩」
そんな先輩を横目で見ながら俺はいつものパソコンの前に座った
「……あっ、朝倉先輩って転校生にそっくりですね」
「ん?転校生……ふむ、今日クラスの男子がやけに二年生のクラスを気にしていたのはそういうわけか」
そんなやり取りを聞きながら俺は今日ニュースで見た事件を調べた
『聖学女子生徒、空を飛ぶ何者かに襲われる』
『事件再び、聖学女子生徒二人目が襲われる』
やはり様々な事が言われている、宇宙人やら悪魔的な何かなど、さらには空飛ぶ人間【フライヒューマン】などと書かれている
「やはり手島君も気になるか?」
「先輩……まぁ、うちの生徒が二人も襲われたら、さすがに」
「そうかそうか、ならば私の推理を披露しよう」
「………お願いします」
先輩は嬉しそうに考えた推理を話し始めた
先輩は空飛ぶ人間は実際に存在しており、何らかの方法で被害者の魂を手に入れた、だから、証拠も残らず、さらに目撃者は人が空を飛んでいると言う、と話していた
「……はぁ……さすが先輩ですね…」
「いや……あり得ないでしょ?朝倉先輩…無理がありますよ」
「そうか?我ながら素晴らしい推理力だと思ったんだが……それにしても吉田は来ないのか?」
「アレなら転校生の方に行ってますよ」
パソコンの画面に集中すると、目撃者の一人がどうやらカメラで写真を撮っている画像が出て来た、確かにネット上で騒がれるのも分かるような状況だ。
黒い人型の何かが空を飛んでいる写真だ、時間は最初の事件の晩らしい
「……先輩の推理が正しいとして、残る謎は犯行動機と二人の生徒の関連性、あと、一ヶ月も犯行期間があいたこと、この三つが分からないんですが」
「三個目はきっとニュースで騒がれたからじゃ無いの?落ち着くまで待ったとか?」
「まぁ、そうだとして、後は二つだけど……」
「関連性か……最初の事件は三年生、次は一年生……あるとしたら、学園の生徒としか分からんな」
それぞれ謎を解く手がかりを探したが、全くもって犯行動機と関連性が分からなかった、仕方なく家に帰ることになった
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「じゃあね、英樹」
「寄り道せず帰るのだぞ?手島君」
美菜と朝倉先輩は仲良く並んで帰って行った、俺は二人とは反対方向なので一人で帰ることになる
「……空を飛ぶ人間ね……馬鹿げてると言えば馬鹿げてるんだけど……犯人が見つからないのもね……」
帰りながら事件の事が頭から離れなかった、目的も分からない、それに、最初の被害者は未だに意識不明も気になる、目立った外傷も無く、それこそ魂だけすっぽりと抜かれたように意識が戻らない。
あながち先輩が言っていた何らかの方法で魂を手に入れたというのは間違っていないのかもしれない、だが、それならさらに謎を呼ぶ、どうやっているのか、そんなことは可能なのか……考えれば考えるほど分からなくなってくる
「あれ?……手島くん?」
考え事をしていると、後ろから声をかけられた
女の子の知り合いなどあの二人ぐらいなものだけど、そんなことを思いながら振り返ると
「……転校生?」
そこには転校生の水無紗月が立っていた。
そういえば、美菜が言っていたけど、確かに朝倉先輩に似た容姿だ、茶髪のサイドテール、身長は先輩を方が少し低いぐらい、顔も同じような美少女系だ
「はい、転校生です」
にっこりと微笑んだ顔は可愛らしい、まぁ、今はそんなことはどうでもいいけど
「なんだ、今帰りなのか?」
「はい、少し学園を見回っていましたから」
「ふーん…そうか」
「もしかして、興味ない感じですか?」
「まぁ、あんまりな」
基本人が何をしようとあまり興味ないし、それは人の自由だ
「そういえば、転校生の家はこの……」
「水無紗月」
「えっ?」
「私の名前ですよ、転校生ではなくちゃんと名前でお願いします」
「あ…あぁ……水無さん」
「はい!」
「水無さんの家もこっち側なのか?」
「えぇ、そうですよ」
どうやら彼女も同じ帰り道らしく途中一緒に帰ることにした
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「それじゃ、私の家はここなので」
「え?……目の前?」
なんと、彼女の家は俺の家の目の前だった、予想外だったが、まぁ、そこまで気にすることは無かった
「うわぁ……席は隣で家は目の前なんて…まるで運命みたいですね」
「あはは……」
あまり冗談とも思えない事だけど、そんな運命は無いと信じたい
「じゃあ、また明日」
「あ…あぁ、またな」
まさか、これが仕組まれていたことだとこの時の俺と彼女は知るよしも無かった、そして、彼女との出会いがこの事件の真相を知るきっかけになるとは思っていなかった