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人造のアーダム  作者: 猫一世
ロンズデーライト
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幕間閑話 ~用語集~

『人造のアーダム』用語集


・アラドカルガ

 アラドカルガは、かつてはデザインドの情報統制機関として成立した。国際政府がデザインドの生成の解禁を発表してから数十年間は、デザインドであることが社会的な地位において、不利に働くことが多かったため、それを統制する組織であった。しかしデザインド人口の増加に伴い、そうした差別はある程度薄れたが(無くなったわけではなく、未だに根強く差別は残っている)、しかしメレトネテルの存在が確認されたために、より情報統制を厳格にする必要性が出てきた。この時にアラドカルガは正式に誕生した。

 メレトネテルの存在が確認された当時、アラドカルガで勤務していたエンジニアが、人間の全身義体化に成功させ、以降、アラドカルガ職員は、必ず全身の義体化が義務付けられた。ただし下部組織の会所(ロッジ)、及びアラドカルガを少数で運営している高位階(チャプター)は、その責任を負っていない。義体には大きく分けて三種ある。電子演算能力に特化したソロモン型。戦闘能力に特化したサムソン型、そして二つのバランスの良いベルテシャツァル型である。

 またその業務故にデザインドの生成に携わるドゥアザルルとは協力関係にある。しかしアラドカルガの技術力、及び職員の能力の高さも相まって、力関係は現在、アラドカルガが圧倒的に優勢となっている。



・イルルヤンカシュ

 きっかけはデザインドの可能性に気付き、人間の身体を過剰に改造しようとした研究者が、アラドカルガとドゥアザルルによって処断され、追放。以降彼らは自分達で資本を築きあげ、自身の研究所を組織。この結成時の最初の十人は、ナルサムと呼ばれているが、彼らは自分達の肉体の遺伝子改良を施し、通常の寿命を遥かに超えて存命している。

 しかしその研究に限界を感じた彼らは、アラドカルガの機密であるメレトネテルの存在に気づき、研究推進のために彼らを追うようになった。以前はイルルヤンカシュとアラドカルガが、相争ってメレトネテルの捜索をしていたが、しかしミカエラによって組織の八割が壊滅状態に陥ったために、形勢が傾く。

 だが、彼らはメレトネテルを発見することができるメレトネテルを獲得したことにより、わずかではあるがイルルヤンカシュはかつての勢いを取り戻した。また彼らは表向き、デザインドの技術を流用して、身体の改造を行い、資金を稼いでいる。



・デザインド

 人工的に生成された、人工生命体。クローン技術と遺伝子操作を掛け合わせたデザイナーベビー。特に要望が無ければ、両親の遺伝子を利用して、「仮にこの二人の間に子供が生まれたら」という想定のもとで生成される。そのため例えば同性のパートナー間でも問題なくデザインドは生成できる。しかし遺伝子操作の技術が進歩するにつれ、身体能力や容姿などを随意に変化させることが可能になったため、現在はかなりの割合で美男美女の健康体になるようにするものが多い。

 かつては社会的弾圧が強く、デザインドであることが知られてしまうと、学校教育の場や、就職の際に艱難辛苦を強いられることが多かった。特に、一時は保守派からの当たりが強く、デザインドは病気にかかりやすい、肉体的に貧弱、もしくは精神上の欠陥が生まれやすいなどの、差別的言説が横行していた。

 こうした差別は、デザインドが身体的にも、容姿としても優れている点が強調されるにつれて薄まっていくが、その一方で「母胎信仰」のような通念が生まれ、やはり未だにデザインドに対するいわれなき批難は続いている。またデザインドを生成した者たちには、両親という立場を利用して虐待を行う者、売春などを行わせて資金を稼ぐ者など、未だに彼らにまつわる社会問題は多い。



・ドゥアザルル

 デザインド生成を独占して請け負っている企業。かつて三人の資本家が、国際問題であった少子化を改善すべく、結束することで生まれた。しかし一方で、彼らはデザインドの社会参画に対しては無関心であり、国際政府の推進を受けてなお、初期はデザインドの受注は思った以上に来なかった。

 結果としてデザインドの情報秘匿を司るアラドカルガが、国際政府によって組織されてから、依頼は倍増した。しかしドゥアザルルの企業が資本を拡大するにつれて、一部の職員が人身売買目的で、デザインドの生成に携わるなどの事例が数多く存在した。結果性奴隷、労働力、彼らを殺し合わせる地下競技などに従事する、通称「親無し」と呼ばれるデザインドが大量に誕生した。アラドカルガによる監視もあってか、かなり数は減ったものの、未だに裏取引は根強く存在している。

 ある事件をきっかけに、アラドカルガのトップに昇進したミカエラによって、ドゥアザルルの抜本的な改革がなされ、現在は既に生成された「親無し」の取引先や、また新たな「親無し」の誕生が厳重に管理されている。



・メレトネテル

 生まれつき、特異な力、特異な体質を得たデザインド達。彼らの力は科学的に解明できないものが多く、加えて彼らの出現条件も全くわかっていない。彼らの能力には異常に発達した身体能力や、不死身に近い再生能力、所謂テレパシーなど、その症状も多種多様である。またごくまれではあるが、後天的にメレトネテルとなる事例も存在する。

 メレトネテルは現代のブラックボックスであり、同時に秘匿されなければならない存在である。彼らの存在を知る組織は国際政府や、ドゥアザルルに所属するごく一部の役員、そしてアラドカルガ、イルルヤンカシュのみであり、彼らの情報は、核ミサイルの発射コードよりも厳重に管理されている。場合によっては彼らの存在が明らかになると、デザインドの依頼が減少する恐れがあり、それが新たな人口危機に繋がりかねないためである。たとえ一国の主であろうとも、メレトネテルの存在が明らかにされることはない。

 なお、これはアラドカルガでさえ一件しか確認できていない事例であるが、特殊な能力を失ったメレトネテルが存在している。条件は全く不明、しかしメレトネテルの精神上の変化が、何らかの影響を及ぼしたと推測されている。以降アラドカルガは、頻繁にメレトネテルの定期検診を行うようになった。



・アペプケデッド

 最初はドゥアザルルの直属部隊であったが、イルルヤンカシュとの抗争によりチームが一名を除いて全滅をした事件をきっかけに事実上の解散をしていた。しばらくして、唯一の生き残りであったアリア・ゴネイムを隊長にして、メレトネテルだけで編成された少数精鋭ユニットとして新生した。

 新生アペプケデッドは僅か五人という少数ながら、全員が戦闘、及び諜報に長じた異能を持ったメレトネテルであり、その戦力はアラドカルガに匹敵するとさえ言われている。なお彼らの活動を快く思わないアラドカルガ、特に高位階(チャプター)の人々はこれに反発し続けているが、アラドカルガの最高位にいるミカエラの鶴の一声で結局結成されることになった。

 アラドカルガの任務はメレトネテルの保護、情報統制、イルルヤンカシュとの対峙の三つであるが、彼らアペプケデッドは主にイルルヤンカシュの殲滅に携わる実働任務を請け負っている。

 


・デッドライン・オブ・シディム

 度重なる少子化が数世代繰り返されたことによって、とうとう新生児から二十歳までの人口が、二十代から三十代の総人口の半分にまで落ちてしまった時期のこと。これをきっかけとして国際政府はアラドカルガ及び、ドゥアザルルの運営を開始する。

 極端な少子化の原因として挙げられているのは、二十一世紀後半ごろから、性交渉の役割が、子どもを作ることから、快楽の享受と、パートナーとの愛情確認へと発展していったことだと考えられている。また他にも性産業の発展や、同性婚の増加、及び、完全な避妊薬などの発明が、こうした傾向を促進させていったとも指摘されている。確かに今現在、性行為が受精の手段として用いられることは殆どなくなっており、どれほど裕福で、時間的な余裕のある家庭でも、男性、女性共に受胎に対して抵抗感が強い人が多い。



・ネオ・アンドロギュノシズム

 同性愛は本来数多くいるはずだが、しかし社会的な抑圧によって異性愛を強いられている人が多いのではないか、という思想のもと、自分が同性愛者であることをカミングアウトできていない人たちを、仲間に取り込み、自分たちが少数派ではないことを主張しようとした思想潮流。最初は同性愛のみが対象であったが、後にその教義が異性愛者たちにも共感され、「運命の相手とパートナーに」という主張へと変わっていった。

 「愛する者同士が愛し合う世界」を目標に掲げた彼らの思想は、またたくまに全世界に広まり、特に若年層からの強い支持を受けた。結果としてこれが受胎を望まない性交渉や、同性婚の増加につながったと考えられており、一般的に歴史研究者の共通見解として「ネオ・アンドロギュノシズムが、デッドライン・オブ・シディムの一因であった」と考えられている。

 


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