第五話・温もりと羞恥心
アクセス数1000突破!という事で、今回の後書きは一味違いますよ!
「ーーという事じゃ。今日は帰って休むがいい」
何がという事じゃ。だ。問題発言してただけじゃねぇか。
そう思いながら部屋を出て行く俺にメルラルドは声をかけてくる。
「お主ら、泊まる所は決まっとるのか?というか、金はあるのか?」
「……野宿?」
「マサヤが良いなら何でも良い」
うん、ライラ。お前は拒否する事を覚えような。……でも、確かに野宿は危ないだろ。特にライラ。
「……にしても、マジでどうしよう」
街に来たあとの事を考えてなかった俺の責任だろう。安全だったのなら少しの間はあの洞窟にいた方が良かったのかも……いや、それだとこの本は貰えなかったかもしれない。……って、そんな事考えてる暇はない!このあとの事を考えろ、俺!!
「妾の知り合いに宿屋をやってる者がおるのじゃが」
まずは短時間で金を稼ぐか……。
「おーい、聞いておるかー?」
いっそ、メルラルドに金を借りるか……。……くそ、それしか今は手段が無いか。
「マサヤー?どうしたのじゃー?」
「メルラルド!」
「は、はいなのじゃ!?」
「金を貸してくれ」
「……お主、落ち着け」
「いや、俺は落ち着いてる。本来はお前からは借りたくはないが今はそんな事を言ってる暇はない。だから金を貸してくれ」
「妾の知り合いに宿屋をやってる者がおるのじゃが、それでも借りたいと?」
……知り合いに宿屋?もしかしてそれって……。
「それって……、交渉は出来るか?」
「あと払いでしっかりと払えば問題はないはずじゃ」
……ってことは?
「……今日の泊まる所ある?」
「うむ、じゃからこれから一緒にその宿屋に行くぞ」
「マサヤよ、やどやとやらは美味しいものは食べられるのか?」
「ふむ、テルサム1とは言えぬが、それなりに美味い飯は食えるぞ」
「それは、期待していいのか!?」
「あぁ、良いんじゃないか」
この1日でかなり情報を集められたな。……無駄なのも多いがな。
小声で「ステータス」と呟き、改めて見てみる。そしてLUKの場所に目が止まる。……やはりこれのお陰なのだろうか。そうだとしても、百パーセント運が良いわけじゃない。これからは自分でやりくりをしていかないといけないのだ。
「マサヤ、どうしたのだ?もう行くぞ」
「あぁ、考え事してた」
「今日の夜の事でもか?」
「何言ってんだテメェ!?」
メルラルドの一言に顔を赤くする俺。ライラは「?」という顔をしている。……そして、こんなやりとりをしている間に目的の宿屋に着いていた。
「ここが、妾も昔泊まっていた宿屋じゃ」
「うーん、今更なんだけど本当に良いのか?」
「何を遠慮しているのじゃ。その分明日から働いてもらえればそれでよい」
「……そうか、ありがとな」
メルラルドは馬鹿だ。けど、優しい馬鹿だ。これからは認識を変えてやるか……。
そんなことを考えていると、宿屋から若干年を取っている女性が出てきた。そして、
「久し振りだねぇ、メルラルド!」
「うむ、元気にしておるぞ!メルティ」
メルラルドとこの人は知り合いなのか、お互い抱き合って背中をポンポンと叩き合っている。……もはや親子にしか見えない。てか、両方メルから始まるんだな。偶然の一致ってやつか。
「……あれ?この子たちは誰だい?」
すると、メルティさんは俺に気付いたのかこちらを向いて声をかけてくる。
「俺は『マサヤ・ミズノ』こっちはーー」
「『ライラ』だ!これから世話になる!」
「マサヤにライラか……よろしくね!うちは『メルティ・ラクエーネ』ってゆうんだ、メルティで良いよ!」
「じゃあ、メルティさん、よろしくお願いします」
「うむ、よろしく頼む、メルティよ」
そう言ってから、メルラルドがメルティへと俺たちの事を説明してくれる。
「……マサヤだったか。あんたも苦労してんだね……」
「はは、まぁ、そうですね……」
何か凄い可哀想な子を見る目で見られたのだが、メルラルドはどんな説明をしたんだろうか……。
「さて、こんな所で立ってるのもあれだ!早く中に入りな!」
そう言いながら俺とライラを宿屋の中に入れようとしてくる。当然、ドアがあるからそこに当たるーーはずだったのだが、タイミング良くドアが開かれ、中に入る。しかも、それだけではなく、ドアを開けた人物とぶつかりそうになる……が、
「おっと……。あ、すいません」
「大丈夫ですよ。……にしても、母さん。またやったの?」
鎧を着込んだ女性?に上手くキャッチされる。
そこから体制を立て直してお礼を言ったのだが……、迫力が凄い。全身フルの甲冑というのは初めて見た。
しかも、メルティさんをお母さんって言ってるという事は、親子なのかな?なんで親が宿屋で娘がフル甲冑なんだろうね。……異世界ってこんなものなのかな。
「これから見回りかい?」
「えぇ、すぐ終わるわよ」
その会話を聞きながら、俺は隣にいるメルラルドに話しかける。
「なぁ、あの甲冑は誰なの?」
「メルティの娘じゃ。確か、衛兵として働いてるんじゃ」
「へぇー」
女性で衛兵か……、よっぽど腕に自信がないと出来ないだろうな。
そう思って甲冑さんをまじまじと見ていると、
「申し遅れました。私は『ユリアーネ・ラクエーネ』です。困った事があれば城壁の門で私の名前を出してください。ある程度の事は聞いてくれるはずです」
「『マサヤ・ミズノ』です。そうですね、何かあったら頼りにさせていただきます」
「『ライラ』という!これからよろしくな、ユリアーネ!」
そう言いながら頭の部分の甲冑を外すユリアーネさん。
……ぶっちゃけて言うと、メルティさんの娘とは思えないぐらい綺麗だ。
メルティさんは後ろで短く束ねてた赤髪に赤目で、少しシワが多いが、優しい感じの顔つきだ。
ユリアーネさんも髪の色、目の色共に一緒なのだが、やはり若さなのか、シワなども一切なく、整った顔立ちと、衛兵という職業柄からなのか、凛々しい顔つきをしている。
「おや、前より綺麗になったんじゃないかの?」
「そうなのよ。……なのに男の雰囲気がないからこの先が心配で心配で……」
メルメルコンビは年寄り臭いな……。
「「何か言ったかい(かの)?」」
「いえ、何も」
思ってただけです。……てか、
「そろそろ中入れない?」
先ほどからライラが暇そうにしてるのが堪えられなくなった俺の一言に、思い出したように会話を止めるメルメルコンビ。そして、それに苦笑するユリアーネと「待ってました!」と言わんばかりの顔をしたライラがいたのだった……。
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「焦らなくても逃げないぞー」
「逆にマサヤは何でそんなにゆっくりなのだ!」
俺とライラは今、宿屋の一階にある大きな食堂で食事を取っていた。
ライラはこれまで木の実や魚等しか食べていなかったらしく、初めて食べた肉とパンに驚いている。しかも、レストランを経営できるくらいの料理ばかりなので、さらにライラはがっついている。
……にしても、さっきから周りの客の目が嫌だな。ライラに見とれてるやつもいるのだが、値踏みするような目線もある。しかもそいつらの周りには目に生気のない奴らが立っている。奴隷というやつだろう……。首輪が付いてるからな。メルラルドが帰る前に、そういうのが側にいる奴はあまり関わるなって言ってたし。
「あとは、この本か……」
そう言ってメルラルドから貰った本をパラパラと捲る。なぜメルラルドが持っていたのか、日本語で書いているのかなどの事が最初に説明されていて、次のページには目次がある。……後で読む事にしよう。
そう思い、本を閉じ、食事を再開しようとしたところで、メルティさんが近づいてくる。
「どうだい、美味いだろう?」
「うむ、とても美味だ!メルティはこんな料理を作れるのか!?」
「違うよ、うちの旦那が作ってんだ。『ガイル・ラクエーネ』っていってね、昔はレストランを経営してたんだよ」
なるほど、だからこんなに美味しいのか……。確かにメルラルドの言ってた事にも納得できる。
そのあともメルティさんはなぜガイルさんと出会ったのかなどを話していた。ライラはそれを熱心に聞き、俺は聞き流しながら食事を続けた。その時に周りの奴らが「またか……」という顔をしてるのを見逃しはしなかった。
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……大変な事態だ。
いや、時間が飛びまくってるのは申し訳ない。更に言うなら今は部屋にいるのだが、それを一旦置いといて、緊急事態だ。なぜならーー、
「やだ!一緒に寝るぞ!!」
ライラが駄々をこねはじめたからだ……。
「だから、俺は本を読んでおかないといけないんだ」
「だったら、ベッドで読めばいいだろう!」
「いや、そうするとライラが一緒にいるわけで……」
「だからなぜ私とが嫌なのだ!!」
「嫌ってわけじゃないんだけど……」
「じゃあ一緒に寝るぞ!」
「いや、だからーー」
といった感じでいたちごっこ。ライラが折れてくれるか、俺の心が無心になれれば話は済むのだが、そういうわけにもいかない。
するとそこへ、
「さっきからうるさいよ、あんたたち!」
「メルティ!聞いてくれ!!」
うん、マジグットタイミング。
扉を豪快に開けて出てきたメルティさんにライラは「聞いてくれ!」と言って話し始める。……でも、なんでメルラルドが扉の後ろに隠れてるのかな?
そう思って、じっと扉を見つめているとーー、
「「……っ!?」」
こちらをそーっと覗いてくるメルラルドの姿が見えた。しかも、メルラルドだけではなく、ユリアーネさんも見えたし……。
そのままずっと扉を眺めていると、メルティさんが「なるほど……」と言って俺を無理やりベッドに倒す。そして、
「ライラちゃん、好きにしていいよ」
「鬼かあんたは!?」
……お父さん、お母さん。僕は今日、異世界に行って女の子と仲良くなりました。そのままGo to bedしそうなんですが、そういうのはまだ早いと思います。ただ一緒に寝るだけならセーフですよね?なので、その一線を越えないように善処します。…………なにかあったら僕は死にたいと思います。
そうして俺は仏の様な顔にーー、
……はっ!?今なんか危ない感じがした!!って、そんなことより今この状況を打開する策はーー、これしかない!!
「お花を摘みに行ってきます!」
「おっと、逃げさせはせんぞ?」
「お前らがいるんだった!!」
メルティさんの隙をついて逃げるのには成功した。しかし、扉の向こうにいたメルラルドとユリアーネさんの事を忘れていたため、ユリアーネさんに通路を塞がれ、メルラルドに羽交い締めにされる。
……もう今日は諦めよう。明日から頑張るから大丈夫さ……。
「マサヤ!早く寝るぞ!!」
「俺は横なって本読んでるから好きなだけ寝ろ」
「そうだマサヤ、別にしてもいいけど周りに聞こえるからほどほどにね」
「そうじゃぞ。
まぁ、もしヤッたとしても妾達はそれを酒の肴にするぐらいじゃがな」
「ヤんねぇし会話がゲスいんだよ!!それにユリアーネさんもそんなに恥ずかしいんなら聞かなくていいんですよ!?」
「い、いや、その……な、何だ。マサヤは私の様な女もいいと思うのか?」
「あんたの頭の中どうなってんの!?」
とりあえずメルラルド達を追い出し、ライラの方を向く。
「さっきからマサヤ達は何の話をしてるのだ?」
「なんでもないよ。さ、早く寝よう」
「むぅ……。まぁ良いか……」
ライラの前では、今後、そういう発言は控えるようにしよう。
そう考えながら、俺はベッドに横になる。すると、俺の体の横にライラの温もりが伝わってきて、先ほどのメルラルド達の発言のせいで変に意識してしまう。それを振り払うように本を開いて意識を逸らそうとするとーー、
「ーーなぁ、マサヤは私と寝るのが嫌か?」
「……いきなりどうした?」
ライラが背中越しに聞いてくる。
「……嫌だったら、その、無理して一緒に寝なくてもいいんだぞ……?」
「……嫌ではない」
「だったら何故嫌がってるのだ」
「それは、あれだ……羞恥心の問題だ」
「しゅうちしん?」
「…………ようするに恥ずかしいって事だ」
「……私と寝るのは嫌では無いのだな?」
「あぁ」
「……そうか。じゃあーー」
そう言うと、背中越しに柔らかいものを感じる……ってこれは!!
「な、ななな!?」
軽く後ろを振り向くと、抱きついているライラの姿が見えて、背中の感触は『そういう事』だという事に気づく。
「少しだけ……、少しだけこのままでいさせてくれ……」
そういうライラの声は震えていて、かすかに嗚咽の声も聞こえる。
……心細いんだな……。
この世界について2人とも知らないのに、気づいたら人に囲まれてたり、自分が知らないことを話してたり……、まぁ、大半は下世話なのが混じってたけど……。
先ほど聞いてきた嫌なのかと言う質問も、嫌われてるかもしれないと思ったからだろう。……だからこそ俺が守らなくてはいけない。
ライラに護られ、ライラを守る。それが今の関係。……でも、いつかはライラを守れるようになりたいな……。
そんな事を考えてると、規則正しい寝息が聞こえてくる。
「寝たのか……………………。ん?ちょっと待て、この状況はどうするの?」
最初は微笑ましく思ったのだが、よく考えればまだ抱きつかれたままで……その、何というか……、感触があるわけでして……。……要するに、こりゃすぐには寝れねぇな!
……それから暫くの間、本を読んで頑張って意識を逸らそうとしている雅也の姿があった……。
半田「暇つぶしにやってみようのコーナー!」
ライラ「イエーイ!」
雅也「何だこれ……」
半田「これはこういう話を書いてもらいたいな〜。みたいなコメントを読者さんからもらったり、キャラに対する質問をもらってそのキャラが答えるよ。っていうことを宣伝する。俗に言うコメントおねだりコーナーだよ!」
ライラ「イエーイ!」
雅也「ライラのそのテンションはどうした?」
ライラ「む?いや、半田からただイエーイ!と言っておけば菓子が貰えると聞いてな」
雅也「つられてんじゃねぇか!」
半田「良いんだよ別に。どうせ暇潰しのコーナーなんだし」
雅也「まぁ、そうだな……」
半田「さて、今回は特になにもやってないけどこれで終わり!最後にライラ!さっき教えたの言って!!」
ライラ「うむ!……えっと、この作品では、お主らの意見や要望を尊重して話を作っていきたいと思っている。
至らない点があったら、指摘をしてほしいぞ!
また、質問も受け付けているから、よかったら、コメントに、感想などと一緒に送ってくれ!
ちなみに、この作品の更新スピードは、現在『2週に1度の月曜朝0時』を予定している。作者のストック不足、都合があるから、停止してしまう事もあるんだ。
その場合は、後書き、または活動報告に書くから、その時はどうかお主らの広い心で待ってほしい。
……さて、長々と説明してしまったが、今回はこの辺で終わりにさせてもらう。では、また次回、会おう!
……言えたぞ!!」
半田「よし、じゃあ最後に、せ〜の……」
半田・雅也・ライラ「まったね〜!!」