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skill world  作者: 松佐
第壱章 魔法学園
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第6話 決着とひとつ屋根の下での生活

真っ向勝負すると決めてからの行動は迅速に行った。空間魔法で演習場に空間を繋ぎ、姫様とミリエを観客席に座らせ、にっこりと微笑み演習場の中央に佇む生徒会長に視線を向けます。さして疲れた様子も無く平然としてるのが幾分かムカつくものの、規格外なのだから当然だと納得し、私自身もステージに下りる。生徒会長を相手にするなら、リミッターを幾つか外す必要がありそうだ。今までは一応だが力を制限した上で行動していた。しかし、目の前の化け物は制限した状態で渡り合えるほど低レベルの相手ではない。寧ろ本気で掛っても軽くあしらわれそうな半端でない実力者だ。最強とも言える。戦ってみて実力差をひしひしと感じた。目の前の人物なら普通に魔王を殺せそうだ。それでも私は姫様の護衛であり、同時に賞金を狙っている者だから簡単にやられるわけにもいかない。生徒会役員達が転がっている講堂の入口に突き刺さっている槍を呼び寄せ、大鎌に形状を変化させる。それが合図だった。轟音が演習場に響き、生徒会長が蹴った地面が抉り取れ、当の本人は容易く音速域のスピードに達して驚異的過ぎる速さで間合いを詰めてきた。固有スキル首狩りを躊躇なく、生徒会長の首元に振り下ろす。しかし、即座にしゃがみ躱した生徒会長は右足を軸、両手を支えにくるりと回転し、腹部を狙い突き上げる様な回し蹴りを放って来る。バックステップでも回避不能、半ば本能で右膝を跳ね上げた。強烈な衝撃に身体が浮き上がり、後方へ弾き飛ばされるが腹部への直撃は防げた。あれを喰らっていれば、完璧に一発KOだった。しかし無傷なんて都合良くいかず、膝の骨に皹が入った。膝への負荷を最小限にして着地し、唐突に襲ってきた悪寒に直感のみで反応して背後に鎌を振り抜く。直感は正しく鎌は振り切れず、途中で生徒会長の拳とぶつかり火花を散らしている。金属と生身が擦れて火花が散るなんて非常識だ。バックステップで均衡を破り、やや驚いた風の体勢を崩した生徒会長に闘気を凝縮した球体を掬い上げる様にアンダースロー気味で投げつける。確かに直撃した闘気の凝縮球は爆砕し、ステージと観客席の間に自動展開されている防御シールドを震わせる。けれど、生徒会長は恐らく無傷だ。巻き上がる砂煙を突き破り、涼しい笑顔の生徒会長が現れる。その手に1本の剣を携えて。この音速域での戦闘は着実にステージ内を破壊の傷跡を量産していく。弁償金を要求されても生徒会長に全額払って貰おうと思いつつ、新入生相手に放っていい様なレベルを遥かに超過した高速の斬撃が衝撃波とかまいたちを伴って襲い来た。大鎌は接近され過ぎると使い辛い、即断して長剣に変化させて魔力と闘気を纏わせ、同時に身体強化で筋力等を底上げして、闘気で関節に補助を掛ける。私を真っ二つに両断する軌道で迫る剣に長剣を水平に構え、受けに徹する。衝撃波とかまいたちは私の優秀なメイド服が防ぎ、十二分に防御へ集中できた。けれど、剣と長剣が交わった瞬間に集中してもしなくても結果は同じだったと悟る。生徒会長の振るう剣につぎ込まれた膂力、振るわれる過程で生じたエネルギー、長剣との衝突時に与える威力・ダメージ。その全てが私の身体を駆け巡り、突き抜ける。筋力の乏しいダークエルフの少女に放っていい斬撃などでは断じてなかった。喉奥からせり上がって来る灼熱を無理矢理に嚥下後、亀裂の入った腕の骨を叱咤して弾き返す。気付けば、足が地面にめり込んで窪みを作っていた。防御に徹すれば、私の方がタイムリミットより速く潰される。追撃を仕掛けようと構える生徒会長の前へ逆に疾走し、眼前で長剣をレイピアに変化、固有スキル百連突きを自身の最高速度で突き付ける。百突き終わっても連続して百連突きを放つ。同時にスキル衝撃波を風刃と併用し、衝撃波と巻き起こる風を刃とし生徒会長へ全てを差し向ける。連続しての百連突きに腕の筋線維が悲鳴を上げ、皹だらけの骨が軋みを上げた。それでも止まらない。止まれない。相変わらずの涼しい笑顔を張り付けた表情で突きも衝撃波も風刃も捌く生徒会長が酷く憎らしく、一撃も入れられない自分が悔しい。かつて、ここまで歴然とした差を見せつけられる戦いがあっただろうか?あるわけがなかった。例えリミッターを外しても勝てない。目の前の男は大きく圧倒的な存在だ。私の予想を大きく上回る実力の底が知れない異端、一般と一線を画している。だが、リミッターを外す。少しでも善戦したいから。レイピアから再び長剣に変化、百連斬に切り替え、同時にダッシュで間合いを限界まで詰める。弾かれ跳ね上がる剣先を薙ぎ払いで強引に戻す。それを躱す生徒会長に肉薄し、返す刃に風刃と闘気を纏わせ一閃する。今度は揺るがすに留まらず、防御シールドを貫通して攻撃が通った。観客席が損傷するが、気に留めず、固有スキル闘剣で背中から闘気を凝縮して形作られた剣を幾本も生やす。少量の血が地面に滴り落ちた。生徒会長は一閃を素早く躱し視認できない速さで私の背後をとっていた。そこを闘剣で意表を突く様に攻撃したが、正解だったようだ。さらに生やした闘剣を解除し、今度は周囲に作り出す。それをスキル念動力で操り生徒会長に殺到させる。ほんの数秒、稼げた間に姫様とミリエを捕獲せんとする不届き者に闘気凝縮球を投擲して意識を狩るが、乗り込んで来た人数が多くて対処しきれず、その間に闘剣は全て粉々に粉砕された。しかも姫様とミリエを捕獲した残りの在校生もステージに下り、壁際より全方位から魔法を放つ準備をして待機している。降参しろと言いたいらしいがここまで来ておいて、その選択はない。念動力で男子の在校生(会長除く)の足と腕の骨を圧し折った。有り得ない方向に四肢が曲がったことによる絶叫が響き渡る。痛みに呻き苦しむ在校生を見て、あの症状が出る。固有スキルサディストの発動だ。やり過ぎではないかって?いいえ、愚かにも現在のた打ち回っている在校生は姫様とミリエを好色な目で見たのだから当然の罰と言える。本当は死んで貰ってもよかった。可愛い2人を・・ほんと万死に値する。


「少し、やり過ぎだよ」


「そうでしょうか?友人と護衛対象を変態的な目線で舐め回す様に凝視していた集団に相応の罰を与えたと思うのですが。それに折り直せば元通りになるよう気遣って折りましたし、やはり問題ないでしょう。寧ろ新入生に対して生徒会長、貴方の攻撃は過剰ではないですか。致命傷になる攻撃を幾度繰り出しましたか?しかも、筋力が他種族より遥かに劣るダークエルフ相手にあの様な斬撃は危険過ぎますし、迷わず乙女の鳩尾に回し蹴りを蹴り込むのも少々、正気を疑わして頂く所です。さらにストーカーの如く付け回して、殿方はもう少しデリカシーを持つべきかと」


「ストーカー呼ばわりは頂けないな。それにストーカーと面と向かって言われたのも初めてだよ。君、他の子と違うね」


低く笑って、生徒会長は剣を収めた。はて、と首を傾げる私に生徒会長は近づいて来る。近くで見れば見るほど、超絶人外美形だ。漆黒の髪に灰氷色《アイスグレー》の瞳、確実にドSな気がする。180cm半ばと言った感じの高身長に整い過ぎた容姿、引き締まった無駄のない肉体、そして比類なき強さ。人気があって当然だ。


「おめでとう、10年間の沈黙を破って君だけ最後まで逃げ切った。10,000,000ダラスの賞金を贈呈する」


そう言って、10,000,000ダラスを差しだしてきたので、亜空間に収納する。しかし、商品の授与は普通に考えて参加者全員の前でするものだと思う。いや、もしかすると新入生は現在昏倒中で集まれない状況下なのかもしれない。見た限りだとほとんどの新入生が在校生に抵抗していたから、在校生側も当然制圧する形を取ったに違いない。そう考えると至極納得がいく。入学式に新入生を昏倒させる行事があっていいのか激しく疑問に思うけれど、賞金は取得できたので、私的に無問題だ。私の趣味には結構お金が掛るから、日給じゃ不足し過ぎる。定期的に休みを貰って冒険者稼業にも精を出したいものだ。いつか生徒会長を打倒したいので、ステータスの向上も必要不可欠、あとは基礎をひたすら練習する。基礎を怠れば、発展系の技術は習得できないし、上手く使えないのだ。とりあえず、今日はもう用事はないので割り当てられた女子寮の部屋に行こう。途中で姫様とミリエを回収することも忘れない。さっさと場を去ろうとするが、そうは問屋が卸さなかった。


「ところで。シェアラ」


「馴れ馴れしくしないで貰いたいのですが・・何か御用件でも?私は友人と護衛対象を速く回収して寮に行きたいので、面倒事は遠慮したいのです。もしあるとしても手短にお願いできますか?」


「大丈夫、手間は取らせないよ。ただ、演習場の修繕費を賞金から差し引きたいだけだからね。ほんと、すぐ済むよ」


「そうですか。残念ながら賞金の使い道は既に決定済みなので、修繕費は会長のポケットマネーから出費してください。修繕費を払えないのは大変心苦しいのですが、やはり会長は男性でいらっしゃる。ついては甲斐性を見せて頂きたく思うのです。けれど、どうしてもと仰るなら会長に甲斐性無しの烙印を押す代償として出費してあげましょう。さらに申し上げると演習場の破損状況を造り出した要因は会長にもありますし、寧ろ割合から言うと破壊率は会長の方が高いかと・・。よもや新入生に修繕費を払わせる殿方には見えませんでしたが、人は外観では判断できないものですね」


「何の感情も込めずに無機質な声音で言われても、心には響かないかな。まあ、いいよ。甲斐性無しの烙印は押されたくないし、貸し1つってことで」


「貴方に貸しをつくるなんて死刑宣告に等しい行為ですが、それも一興ですね。楽しそうです。学園最強にコネをつくるのも悪くありません」


よし!出費を回避できた。生徒会長に貸しをつくるのは本当に死刑宣告に等しいと思う。でも人生は楽しんだもの勝ちだし、贖罪になんてならないけど、みんなの分も人生を満喫してお土産話をたくさん持っていかないといけない。生徒会長を分かれた後、捕獲及び昏倒状態の生徒が収容中の講堂で姫様とミリエを回収し(この際、2人に何か行動を起こそうとした者は根こそぎ粛清された)、女子寮へと向かった。部屋割は寮の入口の所にある掲示板に提示されている。何の偶然か姫様とミリエは同室で入口からも近く、自分の探すより先に部屋までお送りしてから自分の部屋を探した。結果、なかった。正確には私の部屋が女子寮にはなかったのだ。提示用紙の外枠に表記されていた。男子寮の屋上に用意された特別な部屋・・通常会長室。名の通り生徒会長の住まう部屋であり、一般生徒の寮部屋の10倍の面積を誇っていて、住人は当然のこと現生徒会長様だけである。しかも、下部に小さく「これで貸しは清算して上げるよ。感謝してね」と記されている。私には白旗を振って、降参する以外に手立てはあるはずもなかったと明記したい。

寮は男子・女子ともに四階建てとなっており、屋上へ行くには当然階段を利用するのだが、私の場合は性別が女子であるが故に男子寮内部を闊歩するのは遠慮したい所である。なので、屋上へは女子寮の屋上から空間を繋げると言う手法を取ることにした。会長室は外観だけでも寮部屋十倍所ではない気がしたが(というか屋上の4分の3を占めている)、気にせずに中へ入る。とりあえず、普通の玄関だった。靴を揃えてから、奥に進むとドアがあり、左右に続く通路があった。ドアの先はダイニングキッチンだ。気配からして右側通路の方にある部屋は生徒会長の部屋だから、私の部屋は左側通路の先にある部屋だ。そう見当を付けて、左側通路を進み、部屋に入る。どうやらトイレは部屋に備え付けで、この会長室は生活スペースが2つにダイニングキッチンが共有らしい。部屋は広く、50畳ほど。50畳と説明しても想像し難いので、とくかく広いと認識してほしい。ベットはツインで家具は最低限でクッションが2つ、部屋の中央にソファーが机を囲む様に3つあり、あとはクローゼットなど。本当に最低限しかない。けれど、私には好都合だ。王宮で私が借りている部屋の内装を空間繋げて一気に移す。ベットは不要なため、亜空間に仕舞う。部屋の内部は直方体で高さ約2m50cmに奥行き7m、横が11.2m。横を6mの区切って魔力物質化で仕切りと言うか壁をつくり、1か所にドアを付ける。ドアの向こうが王宮の部屋の内装でこっちが客間的な役割にしようと思う。当然のこと入口のドアも作り直し、ドアを開ければ客間直行に変えた。ソファーと机の位置をやや入口よりに修正し、窓際に高さ2m、横幅2m、奥行き1mの棚を2つ設置する。ドアの向こうの内装及び棚の中身は私のささやかな趣味である。肝心のお風呂だが、設置した棚の横にある1mちょっとのスペースがお風呂への通路になってる様で確認のため、通路の先に行った。ダイニングキッチンとは壁を挟んでくっついてる形になっており、入口が脱衣所で浴場に直行のようだ。そこはかとなく嫌な予感がした。不安を紛らわせるようにクローゼットに制服等を詰め込んで、メイド服を脱ぎ浄化した後、亜空間に収める。

そう言えば、幾つの亜空間を創っただろう?犯罪者用、衣服用、金銭用、ドロップ品用と他にも創った気がするけれど、何の目的だったかは定かではない。ともかく、衣服用の亜空間から楽にしてる時のラフな服装である白の半袖Tシャツを出して着る。下はTシャツの丈が長くて膝上くらいまで隠れるので気にしない。ブラは外す。形が崩れるとか以前に肩凝りが半端でないので楽にしたいのだ。髪の染料も落として、銀髪に戻し短く見せるための編み込みも解く。膝まである豊かな銀糸が舞った。ダイニングキッチンに行くと先客こと生徒会長がいた。何故か眼鏡である。しかし、超絶人外美形には黒縁の眼鏡がよく似合っていた。家庭的なお兄さん風の印象を受ける。黒の半袖Tシャツに黒の短パンと言う出で立ちで黒髪も合わせてみると黒一色と私同様のラフな格好だが、魅力がより際立って見える気がする。も、もちろん世間一般的な意見であって私が魅力的に感じたというわけでは神に誓ってない。

・・・・生徒会長さんside

煽られてると解釈していいのか判断に非常に迷う所ではあるよ。でも、可能性はかなり低いね。多分、楽にできるラフな格好なんだろうけど、男の前でその格好は危険だ。恐らくブラをしてないであろう胸元には無意識に手のひらが吸い寄せられそうな立派過ぎる双丘が鎮座してるし、女性らしい身体のライン、キュッと細い腰の括れは女子の羨望と嫉妬の的だろうね。ヒップ及び大腿部以降は細い割にむっちりとした柔らかさが容易に見て取れ、その脚線美は正直眩しいよ。でも目を惹くのは美しい顔《かんばせ》と流れる銀糸だ。エルフとダークエルフは一様に人間離れした容貌だけど、彼女のそれは同族の水準をも大きく上回るものだろう。鋭い印象を受ける純金の瞳、スッと通る鼻梁、大き過ぎず小さすぎずの形良い唇は奪い去りたいという衝動を駆り立てる。鼻梁は少し小ぶりだが、全てのパーツ1つ1つとの調和は崩れず、寧ろ黄金比率だと思わせた。闇に舞う銀糸はキラキラと光を反射し、彼女の褐色の肌(と言っても薄めだが)と対照的だ。その容姿は全体的に大人びて見えるはずなのに、あどけなさを感じさせる。

何より今の格好は凶悪だね。生徒会長さんこと俺は外面いいけど、普段は普通に男なんだよね。いや何時も常に普通な男だよ。送り狼さんになれるくらいにはね。誰か、教えてほしい。面白がってやったのに、超悩ましいことになっちゃったよ。褐色美少女な巨乳ダークエルフBTVを前にして俺は何をすればいい?

(注,BTVとは理科で使う溶液ではなく、ブラ無しTシャツバージョンの略である)


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