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skill world  作者: 松佐
第零章 メイドさんの過去
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第3話 旅立ち

6年前の思い出を振り返っていた。私は随分とやんちゃだったと思う。

特にノービス平原の魔物達にはいらないトラウマを植え付けちゃって、遊びに行っても近寄ってくれない。比較的には人懐っこい魔物たちなのに。私は8歳になった時、換金所のお爺さんに引き取られた。孫のように可愛がってくれて、私自身としても異存はなかった。お爺さんは優秀な鑑定士で、同時に優秀な戦士(バトラー)だ。そして、真の執事(バトラー)でもあった。私がそんなお爺さんに教えを乞ったのは自明の理だ。

ちなみに戦士と執事の掛け合わせは大真面目であり、寒い親父ギャグの類ではないとここにはっきりと記させてもらう。大事なので2度言うが、大真面目である。

戦闘技術、紅茶の入れ方、銀食器及びその他の茶器の洗い方及び拭き方、主に使える時に必要な最低限の礼儀作法と知識、それを活用する思考力、あとダンス。

私はその全てを、全ての技術をお爺さんから継承した。

王都にも幾度が連れて行って貰い、学んだ。魔物と幾多の戦闘経験を積んだ。

もちろん、対人戦も。今では10本に1本、お爺さんから取れる。

聞けば、お爺さんは英雄にカテゴリーする部類の人間だと言う。

それも頷ける年不相応(今年で90を超える)の反応速度に運動神経及び戦闘能力を兼ね備えている。


齢90を数える老人が大木を片手で軽く持ち上げたり、地面を殴るだけで地割れが起こせるだろうか?私は思う。お爺さんを敵に回すことだけはしちゃならないと。

閑話休題。私は12歳になった。なので、独り立ちすることにした。

お爺さんに頼り切りなのは我慢できない、そういう性分なのだ。

案外、やんちゃは抜け切ってないのかもしれない。でも、十分に独り立ちできるだけの技術も経験もしてきたつもりだ。いざとなれば、相手がお爺さんでも押し通る所存である。

しかし、お爺さんは独り立ちをあっさりと許可してくれた。

曰く、もう教えることはないとのことだ。旅の準備は前々からコツコツ進めていたし、出発はすぐにできる。


「ところで。どこに行けばいいのでしょう?」


「自分で決めるもんだと思うんじゃがの。やはり、王都が無難じゃな。魔王の復活と実しやかに噂されているご時世じゃ、王都周辺には大規模な迷宮(地下迷宮型ダンジョンの総称)や名高い竜の巣等のダンジョンもあることじゃし、シェアラが暇を持て余すこともなかろうて」


「王都には学園もありますし、確かに無難ですね」


学園に通えるのは、15歳からなので、残り3年は全て修行に費やせる。

私自身、今の強さでは話にならない。

6年前と比べれば、歴然とした差が生じる程度には実力を身につけたが、未だに中級以上の魔物相手には不覚を取ることが多く、実戦と通して生徒を指導していく元時代の学園が誇る教育体制について行けるか不安が残る。

そもそも、自分自身のレベルの上昇値は100が限界であり、ステータス強化はひたすらに装備及び職業による補正しかなく、職業にも段階があって段階を踏む毎に補正値も上昇していくが、次のステップに進むのは並大抵の努力じゃ不可能だ。

例えば、私が最初に得た職業のメイドはメイド系の上位、派生系職業の初歩の段階である一次職と呼ばれる最下級職。二次職にクラスアップさせるにはメイドの職業レベルを規定値まで引き上げた上でクラスアップを受け持つギルドの専用施設へ赴き、代金を払って漸くクラスアップなのだ。三次職は二次職の条件+特定スキルの習得が必要となってくる。

職業が何次職まであるかは未だに定かではなく、今の最高は六次職で基となった職業は剣士。剣士の職業は最もポピュラーで魔法を剣で斬り裂くスキルやかなりド派手なものが多くて子供の羨望を浴び、確認されている職業中人気ナンバーワンの座を獲得している。

腕力に補正が高く、職業剣士持ちは怪力である。


正直な所、私には腕力が不足している。種族上の特徴でもあるが、ダークエルフは腕力の上昇値が少ない。自身のレベルアップ時に生じるステータス上昇値及び職業の補正値も明確な値が決まっており、ダークエルフは極端に上昇値が少なく、剣士の職業を得ても腕力の補正値は減少する。エルフは普通なのに神様の明らかな差別であると確信している今日この頃は毎日欠かさずに腕立て伏せをする毎日だ。

2年間で腕力を底上げすると誓い、私はスタート地点に、街道へ出る門に立った。

王都までは歩いて1カ月の距離があり、道中の村や街を経由しての旅路になる。

この街から次の街まで延々と続く街道は一応整備されているが、サイドは双方ともに深い森に覆われ、魔物の気配が濃密に漂っている状態だ。それでなくとも、お爺さんの言ってた通り、魔王が復活した可能性があると専らの噂で、その最もたる理由は魔物の異常な繁殖速度と戦闘能力の上昇である。そこはかとなく、地力が底上げされている感が否めない。

この国は位置的にも一番魔王領に近く、危険も相応のものになるはず。

魔王領は名の通り古代より魔族の王が住まい、統治している魔族の国の名称である。

魔王領は人間及び他種族の国々がひしめき合う中にぽつりと存在する円状の土地で世界を構成する魔法的エネルギーが汚染されて発生する魔素が大気を覆い尽くしている。広さは大陸の面積の1割を占め、魔王領内部の魔物は上級にカテゴリーされる魔物ばかりだ。しかも、数十年に数回の割合で魔物の大群が無差別に溢れ出し、甚大な被害をもたらす大侵攻が幾度か起きる。地力の底上げされた魔物が押し寄せてくれば、一溜まりもない。


周辺諸国にも適応される課題だ。私自身に自分がどうにかして英雄になろうなんて野望はないが、孤児院のみんなを守れる強さだけは欲しい。他の人を助けられなくても、私を元気付けてくれたみんなだけは守りたい。そう決意して一歩踏み出した矢先に突如として私の行く手を塞ぐように街道へ20体のボブゴブリンソルジャーが姿を現す。

待ち伏せをする程度の知能を持つボブゴブリンソルジャ―はゴブリン系の魔物とはいえ、実力は一線を画す。初級者がまず最初に討伐を試みる魔物の筆頭に位置する存在。

通常のボブゴブリンは丸腰だが、ソルジャーはショートソードと木製の盾を装備し、中には鎧も装備してる個体もいる剣と盾を扱うことに比較的長けた魔物である。

魔力物質化でフォークをつくり、瞬時に投擲しつつ走りに特化したタメ要らずのスキル、ダッシュで接近する。投擲したフォークは前列のやつらが持つ盾に突き刺さった。

私のダッシュを開戦の合図に勇んで飛び出すやつらに対し、盾に突き立ったフォークを一瞬で魔力に還元後、簡易的な爆発を起こす魔法を発動する燃料にして消費する。

簡易的な致死には至らない程度の爆発でやつらはたたらを踏み、至近で受けたやつに手傷を負わせ、低い体勢で突貫しつつ再び魔力物質化でつくった薙刀という東洋の島国伝統の武器を最小動作で振り上げ、振り下ろす過程で水平に軌道を変化させた。

スキル薙ぎ払い、その一閃をやつらの脚に斬り入れる。

身体を支える重要部位を切り裂かれた前列はそのまま、転倒。返す刃で近場3体の首を一息に切断、振り切り柄の持ち部分を刃方向にズラし、刃の無い方の柄の先にある石突き

の鋭い突きで突貫してくる数体の頭蓋を破壊する。

後方にジャンプするスキルバックステップで距離を取り、薙刀を投擲。

やつらの中心で魔力に還元、魔法ディスチャージ(放電)を全方位に。

致死量の電流ではないが、硬直し動きを停止するやつらの脳天に魔力製のフォークを突き刺し、戦闘終了。ドロップは1600ダラス、魔石(中)20個。


私の歩く街道は綺麗に整備され、馬車を引く馬の蹄の跡はあるものの概ね平らと言った風で、すれ違う人間もそうはいない。本当に最初の戦闘以外、今日は長閑で日和だ。

大空に漂う雲は不思議な形を呈して、ゆっくりとそよ風の様に優しく流れていく。

差し込む日差しは春の初め特有の陽気さを纏い、地上の私達にふり注いでいる。

途中、ゴブリンに追いかけ回されるホーンラビットを見かけて、自然と笑みを誘われた。

可哀想なので、軽く殺気をゴブリンにぶつけて場を去らせた。ホーンラビットの円らな瞳に何か癒されつつ、ゆったりとした速度で歩みを進める。

ひたすらに穏やかな気分で歩き旅を満喫(?)していた私の幸せな気分を害するように、やがて横槍が入った。太陽が天辺に昇り、そろそろお昼時かなという時間に街道の先に街の大通りが人で埋め尽くされて酷い喧騒を湛えていた時によく似ている騒がしい音と鋼を打ち合わせる音、喚き叫び悲鳴など慌ただしい雰囲気が露骨に表れた空間が待っていた。

商人風の集団とその護衛を襲う如何にも山賊の風体をした男共が争っていた。

殺し合いの争いを展開していた。

護衛らしき冒険者達の実力は中堅より少し低い程度だが、一般人と比較すれば十分以上の十二分の強さを誇っている。職に炙れた一般人がなし崩しに盗みや街道を通る商人を襲い金品を奪い始めたのが盗賊の成り立ちである。故に場数を踏んでも実力で言えば、冒険者と普通なら拮抗する間もなく斬り伏せられて目の前で起っている剣戟はすぐに終焉を迎えたはず。しかし、護衛は予想以上にてこずり追い詰められている風だ。


・・冒険者崩れの盗賊は偶にいる。冒険者として依頼をこなすより盗賊家業の方がぼろい商売だと言い、賞金首になることを厭わずに研鑚を積み培った力を振るうやつらが。

荒事は基本的にそれほど好きではない。むしろ、嫌いな部類に含まれる。

けれど、冒険者が危機に陥っている場面に行き遭った場合、助勢する必要性が生じる。

そんな規定が設けられているわけで、私も例外なく助勢しなければならない。

ナイフを盗賊の人数分つくり、投擲する。この際、スキル投擲は使用しない。

少なくとも、6年前より投擲の鍛錬は怠っておらず、筋力もそれとなく上昇した。

その成果か、ほぼ直線的な鋭い弾道で飛来したナイフは投擲必中の補正もあって、完璧に盗賊だけを捉え、手首に刺さった。

悲鳴を上げる盗賊に驚愕する護衛、驚愕から来る硬直が解ける前に盗賊を臨時で創り出した亜空間に閉じ込め、私自身は何事もなかったかの様に商人及び護衛の集団の隣を通り去ろうとしたが、護衛らしき男に引き留められる。


「待て、貴様。賊どもをどうした」


「何の話でしょう?」


「とぼけるな!!叩っ切るぞ小娘!!」


「・・はぁ、仮に貴方が言う賊を私がどうかしたとしますが、それで貴方に何か言われる筋合いはないのですが」


「ふざけるな!!手柄の横取りは規定違反だぞ!!」


「手柄?護衛対象を危険に晒した低能集団の分際でよもや私を違反者扱いとは、片腹痛いことこの上ありませんね。完璧に追い詰められていたのは貴方達で追い詰めていたのは盗賊の方だったはずですが?それがどうして手柄に繋がるのか想像もつきませんね。しかも、確たる証拠も無しに通り掛かっただけの私を呼び止めて、いきなり激昂するなんて、酷く落ち着きと常識に欠ける冒険者がいたものですね」


「生意気な小娘が!!やってしまえ」


とんだ馬鹿野郎がいたものだ。確たる証拠も罪状もなく冒険者を襲った場合、襲った側は無条件で犯罪者認定・・それが冒険者であっても。

私の収入を増やすだけなのに、無駄なことを頑張るやつらだと思う。

さらに亜空間を創り護衛を幽閉する。


「商人の皆様方、大変失礼しました。彼らは残念ながら冒険者を襲ったので犯罪者として拘束させて頂いたので僭越ながら護衛は私が誠心誠意勤めさせて頂きますから、今後とも冒険者ギルドに依頼をしてもらえないでしょうか?」


営業スマイルを忘れず、ある意味で商人を掌握し、護衛は私が引き受けることになった。

行先は同じため、ちょうど良かった。商人の皆さんは気さくな方が多く、退屈はしなくてすんだ。移動も随分と楽になり、魔物の襲撃もなく無事に目的地に到着できた。冒険者ギルドに幾人かの商人の方にご同行願って元護衛の事について証言をしてもらった。


「冒険者崩れには手を焼いておりまして、感謝します。また、彼らの方も依頼主直々の証言があったので、犯罪者決定です。護衛の報酬も全額シェアラさんに支払われますので、

報酬は合計57,000ダラスになり、シェアラさんはギルドランクCに昇格です」


ギルドランクは実力及びギルドからの信頼度を表したもので、FからF+、F+からEという風に昇格していき、最終的にはSS+までの16段階となっている。


姓名,シェアラ 種族,ダークエルフLv,38

職業,暗殺メイドLv,43、魔法使いLv,24

HP,1453/1621   MP,2123/2435

腕力,70[+243   体力,102[+429

気力,176[+48   精神,54[+400

器用,254[+858  敏捷,192[+615

固有スキル,魔力物質化Lv,Max、投擲必中Lv,Max

スキル,投擲Lv,962、ダッシュLv,543、バックステップLv,343、裁縫Lv,Max、

   ,刺繍Lv,Max、茶葉選眼Lv,Max、茶器使用Lv,Max、紅茶入れLv,Max

   ,家事全般Lv,Max、一撃必倒Lv,843、薙ぎ払いLv,98、


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