集団暴行24時
俺は今、至極激しく後悔中だ。頬は痛いし腹も痛いし腕も腰もひどい事になっている。まあ骨までイッてないのは有り難いのだろうか。
こんな思考は決してノンキだからではない。絶体絶命過ぎて俺の頭が自然に現実逃避を始めちまっただけだ。いやぁ、困っちゃうなぁもう。
「オラ、舐めてんのかテメェ」
「何とか言え、バーカ!」
うわ、腹蹴るなバカ吐きそうになるだろ。
えっと現在フリョーな皆さんに囲まれて足蹴にされております私、当然のようにぶっ倒れて体を抱えて辛抱中。つーかちったぁ加減しろよぶっ飛ばすぞオイ。
なんて、それができたら苦労しないっちゅーの。
とその時、一人突っ込みするなどして現実逃避絶好調な俺に救いの手が!
「お前達! そこの弱いくせに集りの現場に乱入したまあ正義感は認めてやらなくも無いけどちょっとは後のこと考えようよ、ってモノスゴーク言いたくなる善良な少年を放しなさい!」
うっわぁ、ボロクソ言われたよママン!
そしていかにも重要人物っぽく逆光で顔が見えない状態で現われて、本来ならば正義感溢れる台詞に彩られるはずが被害者……つまり俺のココロをさらにボロボロに傷つける台詞を吐きながやってきたのは、
「俺のクラスメイトである三森加奈?! 何でこの状況で学校どころか町内最高の不思議ちゃんという呼び声高い三森が現われんの?! おい、みも……ぶへっ!?」
変な声を上げてしまったのは他でもなく三森が俺を蹴ったから。って言うかお前この状況では俺の味方なんじゃないの?!
「不思議ちゃん言うなこの浅慮蛮勇! あと台詞が説明臭いわッ」
えええッ!? そんな理由で俺は暴行を受けたの?! しかもフリョーの皆さんが彼女に便乗して笑いながら俺を蹴りつける。俺は仕方なくまた体を縮めて無抵抗のポーズをとった。
ていうかそうでないとメッチャ痛ぇし。
と、彼女は自分の現われた理由を思い出したらしくフリョーの皆さんに勇ましく睨みを飛ばす。
「コラアンタ達、寄ってたかってこんな貧弱浅慮蛮勇をいじめてみっともないと思わないわけ?」
俺の仮名に貧弱が増えた。みっともないのは完璧に俺じゃん。
彼女の正義感がほのかに感じられる台詞に反応して総勢十余名のフリョー全員が彼女に向かって眼を飛ばした。
「思わないね。つーかお前オレらとやるわけ?」
「まさか、とんでもない。どうぞ、ご存分に痛め付けてください」
そう言って三森は退いた。って言うか何?!
「なにを言って何事もなかったかのように立ち去ろうとしているんでせうか三森サン?!」
「だ、だってこんなに居るなんて普通思わないし……。ていうかよくこの人数相手にケンカ売ったね」
「売ってない! 集りの現場にフミ込んだだけだし! しかもカミングアウトしちゃうとあれ別に正義感に駆られての行動じゃなくて空き缶踏んで滑ってつんのめって気が付いたら集りの渦中だったってオチだし!」
野次馬の俺を見る目の温度がすっ、と下がった。三森は汚いものでも見るような目で俺を睥睨し、野次馬の皆もばらばらと去っていく。
あれ、なに? 不良に襲われてるのは正義感に溢れるヒトじゃないと誰も助けないわけ? 俺だって巻き込まれるのヤだなーと思う超野次馬気質だけどそれってそんなに軽蔑されるコト?
最後に残ったのは三森と不良一同と俺。紅一点の三森が俺に吐き捨てるように言った。
「……サイテー」
そして俺に背を向けて去っていく。
未だ何が起こったのか解らない俺に、不良の一人が解説してくれた。
「被害者を見る野次馬連中の存在が被害者にとって一番辛いからな、野次馬なのはいけねぇコトだよ。次はちゃんと被害者を庇える人間になろうな」
「ああ、なるほど。って言うか、え? なんかフリョーの皆さんがスゲェ優しい目つきで俺を労るように眺めてるんですけど? え、『なあボウズ、ここで会ったのも何かの縁だ。一杯やらねえか』だって? いや俺未成年ですからっちゅうか、うわぁ何だこの優しさ! なんか身に染みてきちゃったよ」
ああなんだろう、目尻からなんだか温かい液体が出てきた。ボク病気かなぁ。
斯くしてまた一人非行少年グループに少年が一人加わった。
ごめんなさい。勧善懲悪少女ってネタを思いついてから深く考えないで書いてたら、ネタを欠片も使ってない意味不明な作品になっちゃったんです。なんだそりゃ。




