表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/18

第14話:民衆の祈り、エルシアがもたらす『黄金の雨』

中央帝国の帝都ガレンベルク。

 その中心にそびえ立つ「太陽の広場」には、数万の民衆がひしめき合っていた。


 帝国の悩みは、深刻な魔力の枯渇と、それに伴う慢性的的な大地の乾燥だ。

 ひび割れた石畳、埃っぽい風、そして何より、希望を失いかけていた人々の虚ろな瞳。

 そこへ、ギルバート陛下が「新たな聖女を披露する」と宣言されたのだ。


「……陛下、本当に、私にできるのでしょうか」


 広場を見下ろす大バルコニーの影で、私は震える指先を組んだ。

 隣に立つギルバート様は、私の肩を力強く、けれどこの上なく優しく抱き寄せる。


「案ずるな、エルシア。お前はただ、この国を『愛しい』と願えばいい。……お前のその清らかな想いが、そのまま世界のことわりになるのだから」


 彼の合図で、バルコニーの重厚なカーテンが開かれた。

 溢れ出す陽光。

 そして、私の姿が民衆の前に晒された瞬間――広場は、水を打ったような静寂に包まれた。


 月の光を溶かしたような銀糸の髪が風になびき、ルネが仕立てた白銀のドレスが、一歩ごとに虹色の光を放つ。

 民衆は、あまりの美しさに息を呑んだ。

 それは、暴力的なまでの神々しさ。


「……ああ、なんという……」

「あれが、陛下が見つけ出されたという、伝説の……」


 私はゆっくりと、広場に向けて両手を広げた。

 かつて、王国の冷たい地下室で一人、ただ祈り続けていた時と同じように。

 けれど今、私の隣には、私を世界で一番価値ある存在だと断言してくれる男がいる。


(……この国の人々を、救いたい。この乾いた心を、潤してあげたい)


 その瞬間、私の瞳の奥で銀河が爆ぜた。

 「虚無のヴォイド・アイ」が発動し、大気中に漂う淀んだ魔力を一瞬で「純粋な力」へと書き換えていく。


 快晴の空から、不意に光の粒が降り注いだ。

 それは雨ではなかった。

 透き通るような黄金色の雫。

 一滴一滴が濃厚な魔力を孕んだ、伝説の『黄金の雨』。


 雫が地に触れた瞬間、ひび割れた大地から瑞々しい緑が芽吹き、瞬く間に美しい花々が広場を埋め尽くしていく。

 人々の肌に触れた雫は、長年の疲労や病を癒し、彼らの瞳に輝きを取り戻させた。


「雨だ……! 魔力の雨だ!」

「大地が、大地が蘇るぞ! 万歳! ギルバート陛下万歳! エルシア聖女様万歳!!」


 怒濤のような歓声が、地響きとなってバルコニーを揺らす。

 数万の民が、まるで神を仰ぐように一斉にその場に跪き、私に向けて祈りを捧げ始めた。


 私は、自分の力でもたらされた光景に涙をこぼした。

 「無能」だと、あれほど蔑まれていた力が、ここではこんなにも多くの人を笑顔にする。


「見たか、エルシア。これがお前の真価だ。……そして、お前を讃えるこの全ての民が、お前の信徒となる」


 ギルバート様は、跪く群衆の目の前で、私の腰を抱き寄せ、その唇に熱い口づけを落とした。

 民衆からは更なる熱狂的な歓声が上がる。


 彼は私の耳元で、独占欲を孕んだ低い声で囁いた。


「お前はもう、誰にも渡さない。この国すべてが、お前のために剣を振るうだろう。……お前を捨てたあの愚かな王国が、後悔に震えながら滅びゆくのを、この高みから共に見届けようではないか」


 黄金の雨に打たれながら、私は確信した。

 私はもう、二度と泥を啜ることはない。

 私を愛し、崇めるこの世界こそが、私の居場所なのだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ