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第二十章:エピローグ:ぬくもりの記憶


 神殿の崩壊から数日後。

 王都の空はようやく穏やかさを取り戻し、春の風が街を包んでいた。


 レイは、神殿跡近くの丘に腰を下ろしていた。

 その隣にはアレク。

 彼は静かに空を見上げながら、レイの様子をうかがっていた。


「ねえ、アレクと一緒って…なんか、落ち着くなぁー。」


 レイがぽつりとつぶやく。

 その声は、どこか年相応で幼さを残した、素直な響きだった。


「そうか?」

 アレクは少し照れたように笑う。


 レイはそのまま、彼の腕にそっと寄りかかる。

 まるで、そこが“帰る場所”だと知っているかのように。


「なんでだろう…初めて会った気がしないの。

 あなたの声、あったかくて…ずっと昔から聞いていた気がする。変かな?」


 アレクは言葉を失った。

 彼女の記憶はまだ戻っていないのか。

 でも、その仕草も、声の震えも、辺境の隊長であった頃のレイと何ひとつ変わってはいなかった。


「そっか。じゃあ、これからもそばにいるよ。ずっと。」


 レイは小さく笑って、彼の腕にぎゅっとしがみついた。

「うん。…アレク、だいすき。」


 その言葉に、アレクはぎょっとした。


レイが素直に言葉を紡いでくれるのがうれしいはずなのに、辺境の頃のツンとした彼女が忘れられない。


気づかないうちに、俺はツンとした彼女が忘れられなくなっていたんだな。


 記憶はなくても、想いは残るか。

 それはきっと、祈りよりも強く、深く、確かなもの。


 ニコニコと笑うレイと苦笑いのアレクを春の風がやさしく撫でていった。


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