第十八章:白き扉 ――“つなぐもの”の真実
王都。
白い石畳の道を抜け、神殿の大門が開かれる。
「……ようこそ、神の御座へ」神殿の侍従長が、深く頭を下げた。
ティナは緊張した面持ちで、ミヒャエルの袖を握る。その手を、ミヒャエルがそっと包み込んだ。
「大丈夫。 俺が守るから。」
ミヒャエルの言葉にティナは頷いた。
「……ありがとう、ミヒャエル。」
一行は案内されるままに神殿の中に入った。
神殿の中は、まるで別世界だった。
高い天井、光を受けて輝くステンドグラス、静かに響く聖歌のような風の音。
「……ここが、神殿……」ユリウスが思わず息を呑む。
「空気が違うな……」ミヒャエルが小声で呟く。
アレクは周囲を警戒しながら、レイに目を向けた。
「……何か、感じますか?」
「ええ。 懐かしいような、嫌なような…… まるで、過去に足を踏み入れているような感覚だな。」
レイの背筋がぞわぞわとむずがゆい感じがして落ち着かない。
神殿の奥、重厚な扉の前で一行は立ち止まる。
「ここが、“聖女の間”です。」侍従長が静かに告げる。
「ティナ・エルフェリア様、 あなたはここで、聖女としての適性を測る“儀式”を受けていただきます。 他の方々は、別室にてお待ちください」
ティナは不安げにミヒャエルを見上げた。
「……ミヒャエルさん」
「俺も一緒に行く。」
二人の様子に侍従長が否を唱えた。
「ここから先は、男性の方はご遠慮ください。」
”聖女の間”から女性の神官が出てくるとミヒャエルに毅然と言い放った。
少々まずいな。
レイはティナとミヒャエルの様子を見て、一歩前に出るち、女性の神官に提案した。
「私が同行しよう。彼女は辺境伯軍の一員だ。“聖女の間”がどんな場所かわからないが、女性である私なら同行しても何も問題はないだろう?」
女性の神官は一瞬だけ迷い、やがて頷いた。
「……特例として、許可いたします。 ただし、儀式の間は、干渉なさらぬようお願いします。」
レイは静かに頷いた。
二人は三人とはそこで別れ、女性の神官の後に続いて、扉をくぐった。
扉が開くと、そこには静謐な空間が広がっていた。
白い大理石の床。
中央には、花のような形をした魔法陣。
壁には、歴代の“聖女”たちの名が刻まれていた。
ティナが一歩踏み出した瞬間――
「……っ!」
彼女の足元に魔法陣が、淡く金色に輝き始めた。
「これは……」女性神官が目を見開く。
「適性反応……いや、それ以上……?」
ティナは胸を押さえ、膝をつく。
「……なに、これ…… 頭の中に、誰かの声が……」
レイが駆け寄ろうとするが、魔法陣の光がそれを拒む。
「ミヒャエルさん……!」
ティナは思わずここにはいないミヒャエルの名を呟いていた。
「ティナ、落ち着いて。そのままだと危険だ。」
レイはティナを囲む魔法陣に入ろうとして、女性神官に阻まれた。
「どけ。」
「ダメです、今は儀式の最中です。すばらしい光です。」
女性神官は恍惚の表情をうかべながら、渾身の力でレイの進路を阻んだ。
「くそ。あまり手荒な真似はしたくないが、非常時だ。」
レイは、女性の神官に当身を食らわせると、光輝く魔法陣に足を踏み入れた。
その瞬間、彼女の中に――“つなぐもの”の記憶が、ながれ込んできた。




