神都編 届かぬ文、届く声
18.俺はどうすれば。
石造りの建物があり、鐘の音が鳴り響く。行き交う人々は白い服に身を包みながら、太陽の祝福に照らされていた。
シリウスは太陽の聖堂に入る。
「太陽の巫女。彼女と面会のお約束をすることは可能ですか」
「恐れながら、巫女様にお会いになることは出来ません。どうかお引取りを」
彼女に文は届くのか?
俺は本当に彼女に届くかすら分からない文を書く。
「拝啓、ユズリハ様へ。君が太陽となってから、君と過ごした日々が君の笑顔が忘れられません。届かぬと知りながら、それでも君に会いに来ずにはいられなかった。気付き始めたんだ。君の存在の大きさと君が背負っている物の重さに。俺は君の隣に立ちたい。今度こそは。君に会いたいよ」
涙が零れ落ちた。
俺はどうすれば彼女に会える?
「太陽の巫女に会いたいのか?」
聖堂にいる貴族の男が話し掛けて来た。
「天へは神に認められた者しか入れない」
「神に認められた者とは、貴族だ」
「君、私の養子にならないか?」
貴族は言った。
「神に仕える者の位階は聖堂騎士、天上騎士、至天席次と続いていてね。貴族に迎えられた者しかなれない。君は門を越えて来たのだから、自身を磨けば高みを目指せるだろう」
「君がこの話を受けてくれるなら、巫女に会わせるのも吝かでないよ」
「断ります」
彼はきっとユズリハを尊重してくれるだろう。
それでも彼にとってユズリハは太陽の巫女でしかなかった。
「俺は俺の意志で彼女に会いに行きます。誰かの為じゃない」
「そうかね。それは残念だ」
「では君が是非と言ってくれる事を待つとしよう」
「シリウス、逃げろ」
イフリートが警告した。
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19.神都編、空を駆る者。
シリウスは聖堂から逃げ出した。
流れ込む様に騎士や兵士が追って来る。
「足が早くなっている」
「ミノタウロスと競い合ったからな」
シリウスは疾走する。
分厚い障壁、形成されゆく包囲網。
だが、逃げ場などない。捕縛されるのも時間の問題だ。
「貴族のプライドって、そんなに高いのかよ!」
「言ってる場合か。誘い込まれているぞ!」
「どうにかならないのか」
イフリートは一瞬黙って、告げる。
「高台に登れ、指笛を吹け、そして祈るんだ」
シリウスが祈りを捧げると一人の女性が現われた。
格好良く、そして美しい後ろ姿。
守り刀を腰に携え、翡翠のペンダントを胸に帯びた女性が言う。
「お前という風を待っていた」
「私がお前をここから運ぼう」
彼女は駆け出した。
「竜は空を駆る者である」
そして空を駆る翼と人を運ぶ身体を宿した飛龍の姿に変身した。
飛龍は空を旋回して、シリウスはその背に飛び乗った。
そして飛龍は大空を飛んでいく。
「ありがとう。でも、何で俺の求めに応じてくれたんだ?」
「風が君の声を運んでくれたんだ」
飛龍は空を渡り、神都の手の届かぬ地まで駆けていく。