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炎抱いて試練越えし時

15話:ミノタウロスの太陽


 俺もかつて愛した人がいた。

 彼女は俺にとっての太陽で、明るく、強く、そして美しかった。

 ミノタウロスは闘技場を勝ち進み、天にて身分違いの自分と彼女の関係を祝福して貰おうと決意していた。

 だが、彼は門に阻まれた。

「お前に天への導きは無い」

 そして彼女だけが天に召し上げられた。

「ごめんなさい、ミノタウロス」

 何故、太陽は俺を見捨てた。

 それでも彼の頭から太陽が離れる事はなかった。

 彼はそれから門番になる。

 風の噂で想い人が太陽神と結ばれたと知った。

 それでも彼は、五十年もの間、戦いから離れなかった。

 そして彼は耳にする。巫女を天に召し上げられ尚、それを追う一人の男が居ると。

 ミノタウロスは過去の自分と同じ境遇に置かれながらも違う道を歩むその姿に苛立ちを募らせていった。


 主人公と出会った頃、ミノタウロスは思った。

「火に振り回され、武も未熟」

「この程度の男が、大切なものを取り戻すつもりか」

 だが、戦士の心が囁いた。

「見逃してやれ。育つかもしれん」

 再び現れた主人公。早すぎる再戦に、"馬鹿か"と呆れつつも、

彼の動きは拙いなりに工夫されていた。


___


16話:君が太陽を背負ったならば


 シリウスはかつてミノタウロスに挑んだ時、未熟な炎だよりになっていた。


 今、彼は剣で出足を抑え、火を弾く。


「火柱」

 中距離から来る正面突破を牽制して間合いを稼ぐ。

「火の玉落とし」

 二路択一に嵌まったミノタウロスに大打撃。

「爆炎連打」

 飛ばされたらミノタウロスに放ち、追撃を抑える。

 障害物としても使っていく。

「炎の槍」

 出が速く、高火力だ。


「戦う者の眼をしている」

 彼の動きは拙いなりに工夫されていた。火で追い、剣で繋ぐ。

 だが、それだけでは全く足りない。

「もっとだ、もっとお前を見せて見ろ」

 ミノタウロスの戦士の心は望んでいる。

 主人公の心には炎が宿る。回転率を増す炎と剣のコンビネーション。

「ヒトの力を見せて見ろ」

 イフリートは発破をかけた。

 シリウスの身体は次第に炎と同調していく。火神化の準備が整った。


「かつて俺はユズリハの力になれなかった」

「今度は俺が君の勇気となりたい」

「だから、君が太陽を背負ったならば、俺も火の神を背負って見せる」


「炎は語り、心が燃える。鎖が外れ、唸りを上げる。我、炎を抱いて歩む者。進むぞ、イフリート」

 シリウスの身体は、激しく、熱く、そして輝く様に燃え盛る。


__


17話:俺は敗北を得た


 炎と、火霊王と一体化したシリウス。

 彼を見て、ミノタウロスは少年が先に進むことを悟る。

 ふと、敗北が過ぎるミノタウロスに少年は言った。

「お前は諦めたのか?」

「確かに強いよ、お前は。でもお前はそこで何を得た。そこでお前は終わるのか」

 ミノタウロスは自らに問いかける。

「太陽は俺を見捨てた?」

「違う、俺が太陽を追いかけ無かっただけか……」

 ミノタウロスは深く決意する。

「なら、俺がお前を越えてやる。そして俺が太陽を目指す」

「それはこっちのセリフだッ!」


 シリウスは一歩、押し込まれた。

 シリウスは一歩、乗り越える。


 シリウスは火神化により炎の扱いを上達させて制限を外していく。上昇する火力で押していく主人公に対して速さと固さを増していくミノタウロスは主人公と競り合う。

 炎の勢いと主人公の熱量に押されて行くミノタウロス、それでも彼は進む。

 そして転機が訪れる。

「修練の途上。今、ここに剣の一撃、奥義に至る」

 ミノタウロスはさせじと大剣を叩き込む。

 しかし、それは陽炎だった。

「何ッ」

 驚くミノタウロスにシリウスが間合いを詰める。

「鬼狩流抜剣術・焔の刃」

 一閃。ミノタウロスの身体を熱き刃が走る。

 それでもミノタウロスは。

「まだ立つのか!」

 シリウスに緊張が走る。

「いいや、これで終わりだ」

 ミノタウロスは力尽きて、静かに燃えていく。

 彼は静かに言う。

「俺は敗北を得た。これで進み直せる」

 彼はシリウスを見た。

「今度はお前の……勝ちだ……」

「進め……この先へ……」

 

 シリウスは刃を鞘に収めて、霧の門の先へ行く。

 ミノタウロスもまた、五十年越しに歩み始める。


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