表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

熱の在り処

『第10話:彼は温められることなく』


 イフリートは夜中、甘露を嗜んでいる。

 そこにシリウスを気にしてやって来たヒバナの姿もあった。

 イフリートはヒバナに声を掛ける。


「焔の者よ、語らえぬか」

 誘われたヒバナは可憐に微笑み断った。

「ごめんなさい。私には好きな人がいます、……彼を温めたいの。だからお誘いには応えられません」

 強い意志を持つヒバナにイフリートは気付く。

「そうか、なるほど、想い人を灯す、温かい火だ……」

「悪かったな、引き止めて……」


 甘露を傾け、イフリートは一人口遊む。

「人は自分の熱だけでは生きてはいけぬ。炎も誰かに熱を貰わねば燃えられぬ」

「俺は誰に熱を貰えば良い?」

 

 夜中、イフリートは一人、震える。

「寒い、誰か温もりをくれ。炎が、足りないんだ……」

 シリウスが告げる。

「俺の熱を見せてやる」

「なら、この火を持っていけ」


『11話:ヒバナに温められて』


 朝の息が白くなるほど寒い時。

 焚き火の前で二人の男女がしゃがんでいた。

「戻って来たんだ」

 女が言う。

 男はシリウス。今までイフリートに身体を乗っ取られていた。

 女は顔を火に照らされて、微笑みながら、シリウスに告げる。

「村を助けてくれて、ありがとう」

「俺じゃない。俺は何も出来なかったしな」

「君が来てくれたから、村は昨日を越せたんだよ」


 二人して焚き火をじっと見詰める。

 焚き火で勇気を、そして想いを灯すように火花が弾けた。

「私ね、君が好きなんだ」

「イフリートじゃなくて、俺なんだ」

「うん、君の頑張っている姿が好き」

「例え、それが私じゃない。誰かの為だとしても」

「ずるいな、そんな懸命な顔を見せる」

「君を好きになっちゃったんだ」


 俺はヒバナの姿を眼に映す。

 人一人を照らす程に輝く小さな火。ヒバナは俺の傍に寄り添ってくれる。

――それでも、ユズリハの笑顔と悲しい背中が忘れられない。

「俺には会いたい人がいる。彼女に追いつきたい」

「だから、ごめん。君の想いには応えられない」

 ヒバナは寂しそうに微笑んだ。

 シリウスに想い、届かない。

 だけど、ヒバナは静かに焚き木を入れる。

「――それでも」

「それでも、何か君に残したかったんだ」

「君が私と出会えて、良かったと思えるように」

「私を忘れないように」

――火は熱い。

 彼女の祈りと想いに心が動く。


『12話:君に会うまで、死ねないんだよ』


 ヒバナが小さな子供を逃がす為、鬼に連れ去られた。

 俺はヒバナとこんな形で別れたくないと、丘を駆け上がる。

「お前は巫女を追うのではなかったのか」

「分かっている。でも助けたいんだ」

 だが、俺の剣だけでは足りない。

 ここにヒバナの命が掛かっている。

 攻める為に、影の刃を押し込む為に。

 後、一手が必要だ。

「イフリート、お願いだ!」

「手助けしてやる。前に進め!」

 影の刃を炎の爪が迎え撃つ。

 鬼はヒバナを人質に取ろうとする。

 俺は止められないが、イフリートが炎の壁で遮った。

 鬼が敵意を見せる間、俺は進む。

 俺が一歩踏み込むと鬼が襲い掛かって来る。

 凄まじい速さだ、だが動きは荒い。

 流れる動作で、機先を制す、足を運ぶ、鬼を断つ。

 最後、鬼が影の刃で穿って来た。

 走馬灯が流れ、不意に、ユズリハの笑顔を思い出す。

「こんな所で、死ねないんだよ!」

 炎の嵐が影を掻き消した。俺の意志が炎となった。

「ヒバナ、無事か!」

 今度は間に合った。

 震えるヒバナを包み込み、ヒバナを連れて村に戻る。

 ヒバナが落ち着いてから、翁に告げる。

「翁、俺はまた、旅に出ます」

 翁は穏やかに告げる。

「貴方に確かな火が灯ったご様子」

「もはやお止めする事は出来ませんな」

 翁に礼を言い、ヒバナに向かう。

「私、思ったんだ。君に何か残せる物は無いかな」

「俺は君とは居られない、それでもか」

「君は確かに、私を救ってくれたよ。――最後に私を見て」

 ヒバナを見て、はっと気づく。

 俺が守りたいと願ったのはヒバナやユズリハのような人だ。

 心が動かされる、この村でヒバナと過ごしたいと心が囁く。

 でも君はもう俺が居なくとも――

 自分の道を歩むと決めた顔だった。

「君が傷ついたのなら、私はそれを癒せるようになる。いつか、きっとまた会う日が来る」

「私も旅立つよ、君が足してくれた火で。自分の意志で」

 ヒバナに成長した所を見せつけられちゃったか……

「ああ、俺も君に負けない様に強くなる」

 ヒバナとシリウスは握手を交わした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ