呼声
「よっ、久しぶりだな隆之」
数年ぶりに合う友人は、俺の顔を見て驚いたような顔をしていて、フハッと笑いが零れる。
学生時代から仲が良く、高校を卒業するまでの間ずっとつるんでいた彼、神尾隆之は肝が据わっていて滅多なことでは表情を崩すことはなかったが、流石に今の俺の姿には動揺を隠しきれなかったらしい。
「颯太・・・お前・・・」
「んな顔すんなって。
ほら、とりあえず座れよ。
あ、飯食った?なんか食うか?」
「いや、飯はいい・・・コーヒーだけで」
「んじゃ、コーヒー二つな。」
眉を顰め、仏頂面を更に厳めしくさせながら何かを言おうとする隆之の言葉を遮り席に着かせると、注文を決め席に備え付けられているタブレットからオーダーを送る。
向かいで訝し気にこちらを見つめてくる隆之に苦笑いしつつ、さっそく本題に入ろうかと言えば、渋々と言った様子で隆之は頷いた。
始まりは去年の夏。
高校を卒業して就職で地元を出た俺と祐介もやっと仕事にも慣れて生活も落ち着いてきたころ、久しぶりに高校の時の仲間内で集まろうって事になって、溜まってた有休を使って地元に帰った時だ。
お前はどうしても都合がつかなくて来られなかった時のやつだよ。
夕方に祐介と地元の駅で合流して、久しぶりに商店街とかうろついてから、仕事終わりの政弘と三人で居酒屋に行ったんだ。
飯食って酒飲んで、地元を離れていた間のそれぞれの事や、懐かしい思い出話で盛り上がって、良い感じに酒が回ってきた頃合いで、祐介が高校のころよく行った肝試しの話題を出して来てさ。
心霊スポットとして有名だったトンネルに行った時、俺が盛大に屁をこいて、その音にビビった祐介が悲鳴上げて逃げ出したのにつられて全員パニックになって大騒ぎした事とか、山ん中にある廃墟探しに行って危うく遭難しかけて、結局廃墟は見つからなかった上に探しに来てくれたお前の親父さんにこっぴどく叱られてゲンコツ貰った事とかを話してたのよ。
そしたらよ、誰ともなく肝試しに行くかって話になったんだよ。
でも俺ら全員飲んでてあんまり遠くまで行くのもなって話して、スマホの地図アプリで近場に廃墟がないか調べたんだ。
結構酔ってたし、別に幽霊が見たいとかって訳でもなく、単純に学生時代にバカやってたノリでさ。
本当に軽い気持ちだったんだ。
運よく廃墟も見つけたし、そのまま居酒屋を出て行ってみたんだ。
夜とは言え蒸し暑い中を歩いて、大体三十分くらいか、繁華街を抜けて人通りも車通りもない場所にあったその廃墟は元々は何かの会社か何かの建物だったらしい。
看板は外されてて何だったのかは分からない。
落書きも多かったし、窓が割られたりしていて大分荒らされてたから地元のヤンキーとかと鉢合わせる可能性はあったけど、建物の前の駐車場らしいスペースには車もバイクも停まってなかったし、特に人の声や物音も聞こえなかったから大丈夫だろうって政弘が言って、俺らはガラスが割られていた正面の入り口から中に入った。
入り口の前にはカウンターがあって、そこから左側に伸びている廊下の所々にいくつかの部屋があったから、一か所ずつスマホのライトで周りを照らしながら中を覗いたんだけどさ、どこも落書きだらけで中にあった棚やらテーブルやらが壊されているくらいのもんで何もないんだよな。
それでも、あの頃の俺らなら廃墟の暗さとか静かさとか、自分たちの足音が響いてるだけでもちょっとビビッて騒いでたのにさ、大人になったからなのか、まぁこんなもんだよなって思っちまって若干白けた空気になったんだ。
酒が抜けてきてたのもあったと思う。
けど、折角来たんだし、一通りは見て帰ろうとそのまま奥まで進む事にして、建物の一番奥にある二階へ上がる階段の前まで来た時、人の声みたいな声が聞こえた気がして立ち止まった。
それまでべらべらと話しながら歩いていた俺が、突然黙って立ち止まった事に祐介も政弘も不思議そうにしながらどうした?って声を掛けて来たんだけどさ、俺は二人の呼びかけに応える事が出来なかった。
本当に微かにだったけど、うっ、とか、うぅって唸っているような、呻いているような女の声が聞こえてたのに、祐介も政弘もまるで気にした様子もなかったから、俺はその声は俺にしか聞こえてないってわかって、途端に全身から冷汗が噴出して止まらなくなった。
俺の様子に心配した声で祐介が声を掛けて来ていたのは聞こえてたし、政弘が俺の肩を揺すってるのも分かってて俺は女の声が聞こえるんだってことを伝えたかったけど、口から出るのはハッハッていう感じの短い息だけで、なんとか震える手を持ち上げて二階を指さして見ても、声が聞こえるだけで指さした先には誰も居ないから二階を見上げる二人は首を傾げて困惑した表情で俺を見るだけだった。
どれくらいそうしていたのか、きっと一分とか、それくらいだったと思う。
急に女の呻き声が聞こえなくなってホッと息を吐いた瞬間、俺の耳元で、はっきりと女の声が聞こえた。
「助けて」
今にも消えそうな、か細い女の声が聞こえて、俺は絶叫してその場から逃げ出した。
それにつられて祐介と政弘もパニックになって叫び声を上げながら俺の後ろを走り、建物から飛び出してからも息が切れるまで走った所でその場に蹲る様にして倒れこんだ。
全員で荒くなった息を整える様に深呼吸して、しばらく経った頃ようやく冷静さを取り戻した頃にはすっかり酔いも冷めて、まずは祐介が開口一番に一体何だったんだよって俺に向かって文句を言い、政弘も体を起こして地面に胡坐をかいて座りながらちゃんと説明しろよと俺を睨んでいた。
だから俺は、階段の前で女の呻き声みたいなものが聞こえて冷汗が止まらない上に体も硬直してしまってあの場では説明したくとも声が出なかったこと、そして呻き声が止んだ途端に今度は耳元ではっきりと助けてと囁く女の声が聞こえ、堪らず叫び声を上げて逃げ出したことを説明し、二人に頭を下げた。
二人とも気のせいだったんじゃないかとは言うものの、廃墟での俺の様子が普通じゃなかったからかからかう様な事はせず寧ろ「颯太は多少脅かすような事はしても、悪ふざけであんな風に取り乱した振りはしないから」と一応は俺の事を信じてくれた。
結局、俺が聞いた声はなんだったのか。
気にならなかった訳じゃないけど、もう一度あの廃墟に戻って確かめる気にはなれず、その日は解散してそれぞれの家へと帰宅することにした。
翌日。
仕事がある政弘と入れ替わりで前日は予定があって来れなかった健二の家で祐介と二人、昨夜の出来事を話せば健二は大笑いして俺のビビりっぷりをバカにしてきた。
アイツ、学生時代から変わってなかったよ。
お調子者で、見栄っ張り。俺や祐介がビビってるのをからかってくるような奴だったけど、健二自身も相当なビビりでこっちをからかっておきながら本人が一番ビビってるのがバレバレなもんだからさ、なんか、憎めない奴だったよな。
健二、俺たちの話きいてビビり上がって声上ずらせながらからかってくるもんだから、なんか微笑ましさすら感じたんだけどさ、流石に前日の出来事はこれまでとは比べ物にならないくらい怖かったからそんなに俺らをからかうんなら今からお前も一緒に行こうぜって祐介の車で廃墟に向かった。
時刻は夕暮れ時。
夜中の廃墟も気味悪かったけど、夕日に照らされてる廃墟も違った不気味さを漂わせてた。
またしてもスマホのライト片手に同じ正面玄関から中に入って、同じ順路を辿ったよ。
相変わらず廃墟の中は静かで、遠くから聞こえる鳥や蝉の鳴き声と三人分の足跡だけが響いてるのが昨夜と同じ状況のはずなのにやたらと怖くて、全員が無言で、さして長くもない廊下を進めばすぐに二階に上がる階段の前に到着した。
けど、昨日とは打って変わって、女の呻き声は聞こえなかった。
やっぱり、気のせいだったのか?
俺がそんな風に考えていたのを察したのか、先ほどまで怯えて俺と祐介の後ろを歩いていた健二が「やっぱりなんもねぇじゃん」と笑い、俺たちを追い抜いて階段を上がって行く。
昨日はこの廃墟の雰囲気に呑まれて聞こえるはずのない女の声を聞いた気になって大騒ぎしたのかと思うと途端に恥ずかしくなって、羞恥心を誤魔化すように足音を響かせながら階段を上りきる。
二階の造りも、一階と殆ど同じようで、奥に伸びる廊下にいくつかの部屋がありそこら中に落書きがあり、窓が割られていて荒れている。
一つ違ったのは、一階では感じなかった鼻を突くような嫌な臭いがして思わず眉間に皺が寄る。
祐介も、「何か臭くね?」と不快そうに顔を顰めているが、健二だけは「また俺をビビらせようとしてんのかよ」と俺たちの言葉に耳を貸す事無く奥へと進んでいく。
仕方なく、健二の後をついて行くが、進むにつれて嫌な臭いは増していき、流石の健二もその臭いに気付いたらしく腕で鼻と口を覆って一つ一つの部屋を覗きながら先へと進む。
臭いのせいか、足取りは先ほどよりも随分と遅くなっていた。
原因不明の悪臭に文句を言いながら廊下を半分過ぎたところにある部屋へと差し掛かり、そこからする強烈な臭いに原因は此処かと三人でその部屋を覗いた。
部屋の中には横倒しにされた棚が転がり、周囲には雑誌や空き缶、お菓子の袋やコンビニ弁当の空き容器なんかが散乱していてその中央に、ソレはあった。
俺たち三人は、ソレが何なのか理解できずに立ち尽くしていた。
いや、理解出来ない、じゃなくて、理解したくなかったんだ。
もう原型が分からない程にズタズタに引き裂かれた、布切れと化した服。
力なく投げ出された手足。
ザンバラに切られた、元は長くちゃんと手入れされてたであろう茶色い髪。
あられもない女の体に刻まれた、無数の切り傷と、ソレにたかる虫。
恨めしそうに俺を見つめる、濁った眼。
「助けてって、言ったのに。」
昨日の女の声が、また、耳元で聞こえた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
誰が最初だったのかなんて分からない。
全員が半狂乱になり、我先にと部屋を飛び出して足を縺れさせながら一心不乱に出口を目指す。
車まで走り、恐怖でロックを解除出来ないでいる祐介を怒鳴りつけながら、漸く空いた車のドアを乱暴に開けて三人で車に乗り込むと、俺は頭を抱えた。
先ほどの光景が、瞼に焼き付いて離れない。
それに何より、彼女と目が合った瞬間に聞こえた非難がましい声。
俺が昨日聞いた呻き声が、彼女のものだったのだとしたら。
そんな事を考え震えていると、一番最初に冷静さを取り戻した祐介が「警察に、通報しないと」と呟き、俺も健二も小さく頷いて電話を掛ける祐介の様子を伺った。
電話は五分程度で終わり、警察が来るまでここで待ってろってさと力のない声で言う祐介に分かったと返してから深くため息を吐く。
正直、今すぐにでもそこから離れたくて仕方なかったけど、そう言う訳にもいかず、無言のまま警察が来るのを待ち、しばらくしてやってきた警察官とともに再び廃墟に入り、彼女の元へと向かった。
その頃には健二も嫌そうにはしているものの震えは治まっていて、俺だけが一番後ろで親指の爪を噛み、必死に震えそうになるのを抑えながら歩いていた。
時々後ろを振り返る警察官が怪訝そうな顔をしているのを視界の隅で捉えてはいたが、その時の俺にはそんな事を気にしている余裕なんかなかったんだ。
だって、俺の耳にはずっと、聞こえていたんだ。
「どうして、助けてくれなかったの」
そう囁く、彼女の声が。
「その後も、事情聴取とかがあったりしたんだけどさ、マジであん時はヤバかったよ。」
参った参ったと笑いながら、冷めきったコーヒーを飲む俺を、隆之は眉を寄せ、訝しむように見つめている。
「結局、お前が聞いた声って言うのは・・・」
「呻き声の方は、多分、実際に彼女が上げていた声だと思う。
あとから警察に聞いた話じゃ、日中の暑さで腐敗が始まるのが早かったから正確な事は分からんらしいけど、俺たちが最初にあの廃墟に行った時間が死亡推定時刻だったらしいし」
もしもあの時、俺たちが二階に上がっていれば、彼女は助かったんだろうか。
それとも、俺たちも彼女を殺した犯人に殺されていたんだろうか。
そんな事を、今でも考える。
「それで、何で今になって俺にそんな話をした?」
理由なんか、分かってるだろ?
言葉にせず笑って返せば、隆之の眉間の皺が更に深くなる。
あの日から一年。
その間に、祐介も、政弘も、健二も死んだ。
祐介は、一人暮らしをしていたアパートで首を吊って。
政弘は、仕事用のトラックで自ら電柱に突っ込んで。
健二は、線路に飛び込んで。
あの廃墟での出来事に関わった三人が、全員。
「首を吊った祐介の足元には、遺書があった。
『彼女が来る。もう逃げられない。』って書いてた。
政弘は日記に『次は俺だ。あの日、彼女を助けなかったから。俺たちは彼女の元に行かなきゃいけない。』そう書いて。
健二は、飛び込む直前、俺にメッセージを送ってきたよ。『俺はあの日、あそこには行ってない。でもそんなこと、彼女には関係なかったらしい。いや、俺はお前らと違って、お前らを揶揄うためにあそこに行ったんだ。それが、彼女を怒らせたらしい。
悪いな、颯太。
先に、祐介と政弘の所へ。彼女の所に行くわ。
そしたら次は、お前の番だ。』ってな。」
隆之の顔から、血の気が引いていく。
でも俺は、話さなきゃならない。
俺たちに、何があったのか。
どうして俺たちは、死ななきゃならないのか。
先に死んだ三人の為にも。
誰かに、俺たちの死が、ただの自殺じゃないってことを知っていて欲しいから。
これがエゴだって分かってはいても、それでも、知っていて欲しかったから。
「あの時、呻き声を聞いたのは俺だけだった。
でもな、〝助けて″って声も、〝助けてって言ったのに″って声も、全員聞いてたんだ。」
それは、後になって分かった事だった。
休みが終わって家に帰ってからも、時折彼女の声が聞こえることがあって、でもそれは、俺が彼女の死体を見て罪悪感を抱いているから聞こえる様に思っているだけだと思っているだけだ。
そう、思っていた。
声が聞こえる頻度が増えても、気のせいだと思い込んだ。
それでも幻聴が続いて、心療内科にも行った。
人の死に直面した、それも凄惨な殺人現場を見たトラウマによる精神的なストレスによるものだろうって診断されて、薬も飲むようになったけど、一向に幻聴は止まなかった。
そうして幻聴に悩まされるようになって三カ月くらい経った頃、祐介から連絡が来たんだよ。
『話したいことがあるから、あの時のメンバーで集まろう』って。
あの事があってから、俺自身自分の事で精一杯で連絡を取ってなかったんだけど、今思えば、あいつらも同じだったんだろうな。
とにかく、俺は仕事を休んで地元に帰ったよ。
それで、政弘の家に全員で集まった。
全員、げっそりやつれてたよ。
そりゃあそうだ。
俺たち皆、あの日からずっと彼女の声を聞き続けてたんだからな。
健二なんかずっと黙ったまんまで、貧乏ゆすりしてた。
それで、最初に肝試しに行った日、俺と祐介と政弘は『助けて』って声が聞こえていた事、でも気のせいだと思いたくて黙っていた事、翌日の『助けてって言ったのに』って声は祐介も健二にも聞こえていた事が分かって、その後もずっと、彼女の声が聞こえてたって事が分かって、全員でお祓いに行こうって事になったんだ。
でも、結局無駄だった。
祐介が死んだのは、三回目のお祓いに行った次の日だったな。
その後も、別の寺に行ったり、霊媒師に頼ったりもしたけど効果はなくて、寧ろ彼女の声が聞こえる頻度が増えて、仕舞には一日中彼女の声が聞こえ続けるようになった。
『助けて』
『こっちに来て』
『一人は嫌』
『一人で死ぬのは嫌』
『一緒に死んで』
「俺も、もう限界だ。
だから、彼女の元に行くよ。」
「颯太、待てっ」
「ごめんな隆之。
でも、お前、オカルトライター目指してるんだろ?
だったらさ、俺の話、書いてくれよ」
そんで、俺たちの事、憶えといて。
二人分の伝票を持って、隆之の制止も聞かずにファミレスを出た。
『早く。早く来て。皆待ってるの。
一緒に、逝きましょう。』
「あぁ、今から、俺も逝くよ」
颯太の手を掴もうとした手が、中途半端に上がったまま動かない。
引き留めなければと思うのに、まるで体が椅子に鎖で雁字搦めに縛り付けられているかのように微動だにしなかった。
少し肥満体型だったはずの颯太は、その面影が全くと言っていいほどになく、まるでミイラの様にやせ細り、ギョロリとした目だけが爛々と光っていて、俺はその異常な様子に怖気づいてしまったのだ。
祐介も、政弘も、健二もそうだった。
葬儀で見た三人も、颯太と同様にすっかり別人の様になっていた。
その原因がまさか、一年前、俺が行けなかったあの日にあったとは思いもしなかった、と思考したところで、それは違うと気付く。
違和感はあったのだ、ずっと。
祐介は生真面目な男であったから、仕事の事で思い詰めて自殺したのではと考えていたが、政弘も健二も、どちらかと言えば精神的にはタフな方で、何かに追い詰められて自殺するようなタイプの人間ではなかった。
なのに二人ともが、あんな風に変わり果てた姿となり、祐介の後を追うようにして自らの命を絶つなど、一体どれほどの事があったのか。
それも、数カ月という短い期間での三人の自死。
何かがあった事など、明白だったというのに。
俺は颯太に呼び出され今日、話を聞かされるまで何もしなかった。
怖かったのだ。
もしも、彼らに起こった出来事を知ったら、俺も巻き込まれてしまうのではないかと。
俺も、彼らのようになってしまうのではないかと、恐れていた。
なんて薄情な人間か。
友人を見捨てたようなものではないか。
そんな俺の気持ちを、颯太は見抜いていたのではないか、と思う。
だからこそ、颯太は俺に話し、そして、憶えていて欲しいと言ったのではないか。
ならば、俺は、彼らが望む通り、彼らの事を憶えていなければならない。
颯太の言う通り、この話を記事にするのも良いだろう。
それにしても、先ほどからやけに近くで女性の声が聞こえる気がする。
程々に混雑している店内の騒がしさとは別に、俺に直接話しかけてきているような声が。
「アナタも、一緒にイきましょう」