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無口のルタ

はじめましての方は初めまして!


見つけてくれてありがとうございます!


ようやく外の世界まで出てこられました。

「鳥の声。」


 目を覚ますと桜の木の下にいた。


 (まぶ)しい。


 時間は午前十時頃だろうか。


 体内時計が頼りにならないから自信がない。


 俺はここを知っている。


「外だ。」


 外だ。


 ダンジョンから出られたんだ。


 気絶(きぜつ)という名の睡眠を一度(はさ)んだからか、気持ちはやけに落ち着いている。


 我ながら良いメンタルだ。


「起きた?」


 頭上から女性の声が聞こえた。


 頭の真上では無く、視界の上だ。


「……だれ……?」


 首に力を入れて頭だけで声のする方を見ると、黒髪に日焼けした肌の少女が座っていた。


「あんたが……」


 アンタが白い光の声の主かと(たず)ねようと思ったが、声が違う。


「行くよ。」


 タイトな黒いスキニーで胡坐(あぐら)をかいていた彼女は持っていた剣を支えに立ち上がろうとする。


 黒い髪に茶色い肌、何よりその特徴的な黒い剣を俺は知っていた。


「もしかして、ルタ・オーダー!?」


 最年少にして王国の騎士に属する神童(しんどう)


 いつだったか父が読んでいた新聞に載っていた記憶がある。


「うん」


 いかにも無口そうな少女だった。


 目つきからも生気(せいき)を感じられない。


 これが天才肌ってやつなのか。


 彼女は俺の反応を無視して近くにいた馬へまたがる。


「後ろ、乗って」


 そう言いながら馬のお尻を()でる少女。


「わ、わかった。」


 俺は指示に(したが)って、ルタの後ろへ乗る。


 ルタは俺が乗ったのを見計らって、馬の腹部に軽く蹴りを入れて合図(あいず)をした。


 そのまま街の方角へと進む俺たち。


「なぁなぁ!ルタさんって何歳なんだ?」


「十四」


「ほえー、それじゃあ、俺と一個しか変わらないんだ!ルタは盾とかも持っていないようだけど、アタッカー?」


「盾は重い。」


「ほうほう。筋力的な問題ねー。俺も盾は無理だなーガタイが良い奴じゃないと出来ないよな~」


「……。」


 気まずい。


 当たり前か。彼女は仕事でこちらに来ているのだから。


 こういう相手には喋らないのが一番。


 そう思ってあたりを観察すると、もう一馬にも誰かがまたがってついてきていることに気が付いた。


 青い髪の青年で、端正(たんせい)な顔立ちをしている。


 そしてどことなくルタに雰囲気が似ている気がした。


 だから気が付かないふりをしといた。






 街に到着したのは夕方だった。


 外壁の扉を一つ明けると、わらわらと街の住人が押し寄せてくる。


「他のパーティはみませんでしたか!?」


「うちの子は!?」


「ダンジョンは攻略されたのですか!?」


 一気に質問が彼女へと向く。


「まだ攻略してない。」


 彼女はその一言だけ言うと、馬から降りることもせずに自身の宿屋(しゅくや)へと向かおうとした。


「ルタ。おろしてくれよ。」


「……?」


「みんな家族が心配なんだ。何も知らないなんてあんまりじゃないか。答えられる質問には答えてやりたい。」


 俺がルタにそう言うと、


「知らない。勝手に降りて」


 と一言だけ返事をする。


「おう!ここまで、ありがとな!」


 そう伝えると、彼女は馬に乗ったままどこかへと行ってしまった。


 外壁を抜けてすぐにある広間に人を集めて、俺は皆からの質問に答えた。


「他のパーティは!?」


「俺は見てない。パーティどころか遺体も見てない。」


「同じパーティメンバーは?」


「俺以外は死んだ。一度触れられるだけで終わりのモンスターがいたんだ。」


「それじゃあ、なんでお前は生きてるんだ!」


「兄が庇ってくれた。あとはモンスターのリスポーンに巻き込まれた時に運よくモンスターと距離があった。嗚呼、鉱石の教えてくれる時間が少しずつずれていたんだ。」


 まるで俺の事を()め立てるように質問をしてくる街の人たち。


 運よく生き残った俺がまるで卑怯者の様だった。


 俺は段々腹が立ってきたが、きっと彼らはそれ以上に腹が立っているのだろう。


 家族が死んで、知らない子供が一人で帰ってきた。


 仲間を犠牲にして生き延びたか、ほかのパーティを見殺しにしたかのどちらかだと思われているのだろう。


 そんな気持ちに至る理由もわかる。


 だから俺は(こぶし)を強く(にぎ)って、気持ちを押しとどめた。


「来て」


 姿を遠巻きに見ていたらしいルタが、俺へと近寄って来る。


「お、おい!ルタ!何するんだよ!」


 ルタは俺の襟首(えりくび)をつかんでその場から離れようとした。


 そしてその時彼女がこんなことをする理由が分かった。


 俺が気持ちをぶつけたのがあの鳥のモンスターであったように、街の人たちは帰らないとわかっている家族への心配や不安を俺にぶつけているんだ。


「ルタ。ありがとう。大丈夫」


 俺の声音を聞いて本当に大丈夫だと確信したのか、彼女は手を放して俺を自由にした。


「皆!俺は五層まで行った。一から五層はダンジョンの構造が変わってから、全部回った。俺が信用できないなら自分で行け!子供に八つ当たりすんなバ―――カ!!!」


 俺は全力で舌を出して中指を突き立てる。


 どうせ同じ町だとはいっても知らない奴らばっかだ。


 仮に知っている奴ならこんな行動する俺の事を笑ってくれるだろう。


 街の人たちは皆、唖然とした様子で腑抜けた顔をして口を開いている。


「ルタ!行こう……!阿呆(あほう)たちの気が戻る前に逃げようぜ!」


 そういって俺はルタの手を取って一緒に逃げだした。


 春のまだ始まってすぐの夕方。夕日に照らされる俺たち二人は、沢山の住民に追いかけられながら笑って逃げていた。


 もちろん彼女も、小さく笑っていた。


 無口のルタは無愛想(ぶあいそう)のルタではないようだ。

体調不良で投稿一日飛ばしてしまいました。


今後は内容にも凝れるよう投稿頻度を変えようと思います。

木曜、日曜、調子が良いときは金曜も投稿します。


ようやく主人公が外に出られて、

ここからが物語の始まりなわけなんですけれども、楽しくなれるように頑張ります!

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