目指せ第五層。
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こんにちはの人はこんにちは!
「「うわぁぁぁぁあ!?」」
バタン!
2人は一緒に開いた扉を勢いよく閉めた。
走った訳では無いのに息が荒れてしまい、ヘンリと俺はその場で座り込んでしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ、ライトがあんなこと言うからだよ!?」
「なんでだよ……!」
「ライトは死亡フラグ知らないの!?」
俺が悪いのか……?
ヘンリは立ち上がるとわざとらしく足音を立てて二層へと降りる。
「おい!ヘンリ!どこ行くんだよ!」
彼女は振り返ると
「五層よ!」
と言って再び階段を降りていく。
確かにダンジョンには五層毎にテレポーターがあるが、五層は転送装置があるのと同時にエリアボスがいる場所でもある。
だけど驚いた。ヘンリなら諦めてしまい、ここで死を選ぶかと思っていた。
「五層まで行くのか……?」
すると彼女はもう一度足を止め、今度は俺の肩に片手をかけて言った。
「一緒に旅に出るの!」
その瞳は潤んでいた。
まるでおもちゃを買って貰えなかった子供のように、うまくいかない現実を憎むような目つきをしていた。
何が何でもうまくいかせる。といった意地の籠った瞳をしていた。
俺はこのヘンリの顔を何度も見てきた。
成功しない魔術に挑んでいる時の顔だ。
いつも彼女はこんな顔をしては魔術に挑み、ひとつずつ成功し、いつしか神童魔術師とまで言われるようになった。
「よし!行こう!次は五層だ!」
俺がそう意気込んだその瞬間、鉱石の色が青黒く変化する。
「……夜になったからまた明日にしよっか。」
「…………?体内時計だとまだ大丈夫なはずなんだけどな……。」
俺がそう言うと、彼女は
「昨日と今日と忙しかったもんね……。」
と言った。
「そういうもんか?……そういうもんか」
夜はモンスターが活性化するため危険だと言われている。
それに加えてもう一つ特別危険な理由がある。
それはモンスターがリスポーンする瞬間が夜な事だ。
つまり夜になれば、いくら鉱石の明かりを頼りに進むことが出来るからと言って層間から出てはいけないのだ。
「食料も今日で最後だっけか?」
「うん。その予定だったけど、そんなお腹空いてないし私は少なめにして明日また食べることにするわ」
「そうだな。俺もそうすることにした。」
階段を一段挟んで俺たちは二人で並んで横になる。
どっちが見張りをするなんて話し合いは無かった。
モンスターが侵入出来て、殺されるなら、それもまた一つのエンディングかな。なんて思っていた。
地面に寝っ転がって上を見れば、天井にはまるで星空のように鉱石が瞬いている。
そのせいか、空気すらも澄んでいて少し冷えているように感じた。
「明日中に五層まで行こう。そしてダンジョン出たら、とりあえず飯な。」
「うん。……ライト、」
彼女が俺の名前を呼ぶ。
でもその呼び方は、真剣な話をするときの声音だった。
「な、なんだよ、急に怒ったりすんなよな?ごめんなさい」
「違う。条件反射で謝らないの。ただ、言っときたいことがあったの」
「……?怒ってるんじゃないなら改まるなよ。さっさと……」
「ライト好きだよ」
「…………」
それはもうちょっと改まってよ。とは思った。
「なんか言ってよ」
「……なんか…………。」
「……ばっかみたい。」
彼女の声は少し呆れたようだった。
今回ばかりは俺も俺自身に呆れてしまう。
そういえば兄ちゃんは「素直は美徳だ。」と口酸っぱく言っていた。
彼は少し素直すぎる性格でもあったわけだが。
上の段に彼女がいると思うとなんだか気まずい。
俺は寝返りを打ってヘンリに背中を向けた。
「……俺もだよ。」
わざと聞こえるように、けれどまるで独り言のようにそうつぶやいた。
これが今の精一杯の素直さだ。
寝てしまったのだろうか。彼女の返事はない。
伝わっていると良いな。
翌朝がやって来た。
白く輝く鉱石によって俺たちは起こされた。
朝食は軽めに済ませて、荷支度を整える。
寝るために緩めたベルトや、靴紐をキュっと締め上げて気合を入れる。
俺たちは昨日の事が無かったかのように準備を進めて、二層への扉の前までやって来た。
「よし、行くぞ!」
重たい扉を開けて、前回同様にヘンリを背負い、走って三層まで向かう。
三層は二層同様にモンスターが一体しかいなかった。
俺たちはそれを見て四層でも同じだと良いと思ったが、現実はそんなに甘くなかった。
四層。
五層へと続く層間の前。
例の筋肉のモンスターが五体。
俺たちは四層と三層の層間へと引き換えした。
「なんでそもそも一発食らえばアウトなモンスターがモブ感覚で出現してんだよ!」
今更過ぎる怒りである。
けれど今更過ぎるのも仕方がない。
だって俺たちは生き残るために、奴との戦いを避けてきたから。
得体の知れないモンスターを恐れて、戦おうとしなかったから。
当たり前と言ってしまえば当たり前なことだ。
人間誰だって知らないものは怖い。
「逆かもしれない……。……そうだ!知らないから怖いなら、知ればいいんだ!」
「うわ、でた。ライトの不思議発言……。たまに何言ってんのかわからないことあるよね」
彼女は呆れたように溜め息をつき、階段に座っている。
「いや、簡単な話だって!俺たちはあのモンスターについて知らなすぎる!もっと調べてから怖がるべきなんだ!」
「実際そうかもしれないけど、お兄さんが殺されるとこ見たでしょ?一発食らえば即退場よ?」
その反応は想定済みだ。俺はフフンと鼻を鳴らして答えてやった。
「なら一発も食らわなければいい!アイツの動きは比較的ゆっくりだ!一体ずつならヒット&アウェイで逃げられるはず!」
「どうせ、助けを待つか五層へ進むかの二択しかないんだ!やってやろうぜ!」
実験をするべく三層へと戻り、一体のモンスターを見つけて調査を始める。
ヘンリはなんだかんだ来てくれるから良い奴だ。
まずは兄が剣を振るったように、頭のない人型モンスターの脳天を割るように剣を振り下ろす。
ペシッと、床に肉を落としたような音がする。
「やべー、手がめっちゃしびれる。」
まるで鉄で壁を叩いたみたいな感触だ。
やったことないけど。
モンスターはこちらに気が付くと、すぐに拳を振り上げる。
動きの遅いこのモンスターの腕を振り上げる動作で、俺は十分距離を取ることが出来た。
空振りをする筋肉の塊。
奇麗に見える筋肉の筋を見て、俺はあることを思いつき実践する。
振り下ろされた腕の筋に合うように、俺も剣を振り下ろす。
するとさっきまでの壁のような硬さとは違い、豆腐のように剣がすり抜ける。
やはり筋と平行に剣を入れると、よく切れるのだろう。
裂かれた腕に驚いたようにモンスターの動きが荒ぶる。
過剰に大きな動きをして出来た隙を狙い、俺は何度も剣を入れた。
四肢をすべて胴体から引き剥がす時には、モンスターはもう動きを止めていた。
「やった……」
俺がつぶやくと、彼女は飛び跳ねて俺に引っ付く。
「やった!やった!やった……!」
一撃で死んで死に追いやる特性を持っていて、かつ素早いモンスターであれば恐ろしかった。
兄と一緒に戦った時のことを何となく覚えていたが、それでも実際どうなのかは賭けだった。
「これで、五層には行けそうだな……。」
俺は気が抜けてその場で抱き着かれたまま座り込んでしまう。
「一層から出たかったけど、あの量はさすがに無理だもんね。」
そうやって耳元で残念そうにつぶやく彼女の頭をわしゃわしゃと撫でて、俺たちは四層への層間に戻ることにした。
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