ダンジョンの一層へ!
どうも皆さん初めまして!
登校時間に悩める子羊です!
良ければ最後まで読んでください!
「ヘンリはどうする?層間に居ればモンスターは来ないはずだから、俺が助けを呼んでくるまでここで待ってるか?」
正直に言えば、天才らしい彼女にはついてきてくれる方が嬉しいが、強要はできない。
けれど彼女がどういう人間なのかを俺は知っている。
どんなことがあっても俺たちについてきてくれていた。
一人でいれば一見保守的な人間だが、俺たちといる時の彼女は
「ううん。いったよね、私も行くよ。だってそっちの方が楽しそう!」
彼女はこういう人間なのだ。
だから幼馴染としてずっと俺たちは同じパーティにいた。
俺たちはリトルブレイブを結成できたのだ。
脱出すると決まれば改めて作戦会議だ。
「まずは二層目だな……。」
「モンスターに遭遇したのは確か、プランちゃんとお兄さんを殺した一体だけだったよね。」
いわれてみれば、彼女を背負いながら走り回っていた間、あの筋肉のモンスターはもちろん他のモンスターにだって一匹足りとも出会わなかった。
「モンスターが一匹しかいない層。ってことはいつの間にか俺たちは五層にいて、実はあれがボスだったとか?」
「ああ、ダンジョンは五層ごとにエリアボスがいるもんね……。でも違うと思う。だってボスを倒せていないのに下の階への層間へ入れちゃってるからさ。」
確かに。さすがは頭がいいヘンリだ。考える係はやっぱり彼女が適任だな。
「今回考えた作戦は、ちょっとライトにはつらいかもしれないけど大丈夫?」
「ああ、まかせろって!体を動かすのが俺の仕事さ!」
ダンジョンの二層への扉の前までやってくる。
「今回ライトにお願いするのは二つ。私がいいよって言うまで走り続けること、そして私を身体強化無しでおんぶし続けること」
「任せろ!女の子一人担いで走るくらいなんて事ない!」
俺は自分の胸を強く叩いて見せた。
十分後……。
「お……おい……!い、かい……も……止まってない……!」
「……。絶対立ち止まらないでね……さっきまでのかっこいいのはどこへ行ったのやら」
俺が音を上げても彼女は目を細めて、引いているようなジト目でコチラを見ている。
俺を待っていたのは変形して、道のあっているのかも分からないダンジョンの中をひたすらに走り続ける現状だったのだ。
「ライト、ほんとに止まったらだめだからね!?あのモンスターは気配無く唐突に現れたんだよ!だから止まったら死だよ!死!」
足の遅かったあのモンスターが突如出現しても構わないように、無理やり俺をこき使っているわけだが、
「そういう……理由な、ら……もっと……もっと早く言えよ……!」
全力で走り続ける理由なんて無かったではないか。
「ライト……、止まって。……見える?」
「はぁ、はぁ、はぁ、うぇ……?」
膝に手をついて全力で肩を上下させる俺が顔を上げると、目の前の曲がり角から昨日ぶりに見た筋肉の塊が出現する。
「は、は、はぁぁぁぁ……!?に、逃げるぞヘンリ!」
俺は踵を軸に体の向きを折り返して、来た道を一目散に走って帰ろうとする。
「あっはっはっはっは!ライト!ココ右行って!」
背負われたままの彼女は、楽しそうにケラケラと笑いながら指示をだした。
「ははは!速い速い!馬車よりもずっと速い!」
「なにそんな笑ってんだよ!?」
俺もダンジョン内をかけ走っているうちに、次第に笑いが込み上げてしまっていた。
そうやって笑っているうちに俺たちふたりは上の層への層間の扉までやってきていた。
「着いてしまった……」
俺が言うと彼女は当たり前かのように「そうだね。」と言っていた。
「もしかしてヘンリは道わかってたのか?」
「そんな訳ないよ、ただ手当たり次第に走り回らせていただけ。ほら、撤退する時以外は全部右に曲がらせていたでしょ?」
「すげぇ怖いことするじゃん。」
知らないうちに命が二、三個消えていそうな作戦だ……。ダンジョントラップとかなくって良かった。
「トラップなんてひっかかれば良いのよ。ほら、死ぬ時は前のめりなんでしょ?」
「心読まれた!?」
ぜったい変に格好つけたこと根に持ってる。
層の間である層間へと入ると、いよいよ次が第一層だ。
運が良ければ今日で家に帰られるかもしれない。
そしたらまた……、
「またみんなで遊んだり、星を見たりはできないのか……。」
俺は13歳だ。
死は寂しいものなんだ。
俺にとって死ぬってそのくらいの認識だ。
「そうだよ。もうお兄さんはいないからね。プランちゃんも。」
独り言になっていたようで、俺の前で次の層へのらせん階段を上るヘンリがそう返事をした。
「そうなんだよな……。まぁ、死んだからって大きく何か生活が変わるわけじゃないしな」
ただ食卓の席が一つ空席になり、ご飯の作る量が少なくなる。
口減らしに子供を殺すやつがいるくらいだ。
これといって大きく生活が変化する訳じゃない。
いや、嘘だ。全然変わる。
今一緒に住んでいる両親は、俺の父の冒険者友達らしい。
つまるところ実の子を亡くして俺だけが帰還したら、今の家に居場所が無くなる……。
「やべーじゃん。俺」
まぁでも生活費はこれまで貯めてきたお金があるし、冒険者として色んな国を放浪するのもありかもな……。
相変わらず話が逸れて、兄の死に感情的になることも出来ず一層への扉に着いてしまう。
「な、なぁヘンリ……」
扉を開ける前に一言言ってやろう。
足元を見ていた彼女は呼ばれてこちらを見る。
なに?と返事をする代わりに釣り上げられた眉毛が可愛い。
「街に戻れたら一緒に旅に出ようぜ。俺たちならどこまでも楽しくやって行けると思うんだ……」
ヘンリは胸へたくさんの空気をしまって、杖の先端で俺の溝内を突く。
「そう言うのは帰ってから言うもんだから……!」
怒っているのかと思ったが、少し俯いた顔髪で隠れて見えない。
でも嬉しそうな声をしていたから良かった。
俺たちは2人で扉を開く。
ここからが第一層だ。
そして僕らが目の前にしたのは数十体ものモンスターだった、兄を殺したモンスター達だ。
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