思春期
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今のところは二日に一話のペースであげる予定です!
「セイレイ……ツカイ……?」
午前一時。夜空には一切、太陽の登る気配は無い。
春の風が吹き、俺のいる図書室のカーテンをなびかせる。
今度は驚いて俺が目を丸くする番だった。
辺りを見回すと誰もいないため、きっと精霊使いとは俺の事なのだろう。
「そうだ。俺が見えているということはお前は精霊使いなのだろう?」
「ああ!そう言うことか!ようやく理解できたぞ!」
俺にカノンが見えるようになったみたく、今シリウスの事が見えているから、シリウスは俺の事を精霊使いだと考えているのか。
つまり俺が後天的にカノンが見えるようになったことを知らないシリウスは、先天的に精霊が見える精霊使いと俺を勘違いしていたのか。
青髪ことシリウスは頭上にハテナを浮かべていたが、俺は話がややこしくなるのが嫌でカノンの事を隠すことにした。
「そうだ!俺は偉大な精霊使い!ライトさんだ!」
「そうか、お前と言って悪かった。ライト・サンダー」
「違う!?ライトだ!ただのライト!」
なんというかこの青髪イケメンは、アレだ。なんちゃってイケメンだ。
顔は良いのに、なぜかモテないアレだ。
「んで?精霊使いの俺に何の用だ。」
「ああ……、宿屋の場所を教える。だから俺をルタのもとまで連れて行って欲しい」
なんて情けないイケメンなのだろうか。
俺は適当に一冊本を見繕い、シリウスの本体である剣を担いだ。
「シリウス。面倒だから方角だけ教えてくれ」
「……?わ、わかった。」
そうするとシリウスはゆっくりと宿屋のある方角を指さした。
「わかった!なら超速攻でかっ飛ばしてやるよ!」
走り出した俺は屋根の上を伝って、目的地まで向かう。
「おいおいおいおい!こんな高いところから落ちたら大変だぞ!?」
「大丈夫!大丈夫!大丈夫ったら大丈夫だ!」
ポーカーフェイスが得意なイケメンも今はただ驚いている。
「うぉぉぉぉお!?」
「ううぇーーーーい!!!」
そうして徒歩ならぬ、走り歩むで走歩とでもいうのだろうか、約走歩二分で目的地までたどり着いた。
「お?ここか?時間巻いたな~!深夜にこんなに走ることなんてそうそうなかったが、気持ちが良いもんだ……!な!シリウス!」
「……君はきっと長生きできないんだろうね。」
「そら、長生きを望んでいる奴は冒険者にならないさ!」
「……というか、なんでそんなにテンションが高いんだ?」
「走ったから……!」
「……そうか」
約深夜二時ごろ。
宿屋の前までたどり着いたは良いのだが、これからどうするべきなのだろう。
ってか宿屋広いな……。
流石は王国騎士。と言ったくらいには高貴な建物に泊まっている。
寝て起きるためだけの場所に何を拘る必要があるのか。
ってかお前はダンジョンにいけ!それが仕事だろう!
いや!やっぱ行くな!俺の集める宝が無くなる!
そんな悶々とした思考回路を巡らせていたため、一度大きく深呼吸をして俺は邪念を振り払う。
「それじゃ部屋番教えてくれ。乗り込むぞ?」
「窓からじゃなくってドアからにしてくれよライト」
「わーってるよ!当たり前だろ!んで?部屋番は?」
「一〇一だ。」
目の前だった。
エントランスを通って部屋に向かう分時間ロスだ。
窓から行けばよかった。
「チェ……ッ!」
「今舌打ちしたな!?」
流石に女の子の部屋に窓から忍び込むなんて出来ない為、俺はエントランスホールを通って目的の部屋まで向かう。
特に臆することも躊躇うこともせず、部屋をノックする俺。
「誰。」
ルタの声がする。
「シリウスを連れてきた」
名前は言わなかった。
単純に覚えられている気もしないため、言っても無駄だと思ったからだ。
「ありがとう。そこに置いといて」
ルタがそう言ったから、指示に従ってシリウスをドアの横へ立てかけた。
いや、なんか腹が立つしドアに立てかけてやろうか。
そんなこと思ったがさすがに可哀想だ。
「ん、それじゃ」
ルタは返事をしない。
実際名前を尋ねられて答えないような奴へ、律義に対応するほど不用心ではないか。
「まって」
扉からガチャと音がした。
俺はさっさと本を読みたいし、話は長そうだから聞こえないふりをした。
あとなんだかそっちの方がかっこいい気がする。
「今、シリウスって……」
俺は最期に彼女がそうつぶやくのが聞こえた。
俺はまるで当たり前のように自室へ窓から戻る。
去り際の俺は相変わらずかっこよかった気がする。
今後もう彼女に会う予定はないが、まぁ知らない奴にほどかっこよく見せたがるのが男の性ってやつでしょう。
そうやって自分の世界に入っていると、頭に強い痛みが走った。
「痛って……!?……ってカノン!?」
「ライト、お前ってやつわぁ……お前ってやつわァ!」
彼女は両手で大きなハリセンを持っていた。
「夜はちゃんと寝ろ……!この育ち盛りがァ!」
「悪かった!カノン!っていってぇ!?」
逆に目が冴えてその日は結局寝られそうになかったのだった。
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