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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

カレーライスの皇子様~転移特典で『無からカレーライスを生み出す能力』を授かった俺の人生~

 気付けば俺は異世界に居た。

 なぜここに居るのかは分からないが、神によって転移させられたという事実だけは記憶に残っていた。


 俺は頭がおかしくなったんじゃないかと思った。だってそうだろ?


 『無からカレーライスを生み出す能力』とかいうチートを授かったのだ。


 なんでよりによってカレー? 普通、異世界来たら戦闘系とか鑑定とかそういうのあるだろ?

 いや、確かに材料要らずで食には困らないよ? 作る手間も無いしな? しかもお皿とスプーン付き! なんとお値段タダ!


 やっぱり俺の頭はどうかしているらしい。だってこのカレー超うまいもん。


 なんで普通に食ってるんだろうな。カレー食ってる場合じゃないでしょ。

 でも腹減ってたんだから仕方ないよな。何をするにもまずは腹ごしらえからだよな。


「いや、待てよ?」


 これは金儲けのチャンスでもあるんじゃないか。やっぱり腹が減った状態だったから頭が上手く回らなかったんだな。

 まずはこれ全部食って落ち着いてから考えよう。



 そして食い終わる俺。消える食器。

 なんと食べ終わった食器は跡形も無く消えるようだ。割と便利な能力かもしれない。

 まぁ使い終わった食器を売ることができないってデメリットはある。それもカレーをどんどん売ればいいだけだし、そこまでデメリットでもない、はずだ。


 今更だが周りの人たちの視線が痛い。なんかさっきからずっと見られてる。

 こういう時はカレーだな。


「はい、カレー食う?」


 俺は行き交う人にカレーを渡そうとした。が、なぜか断られた。

 おかしい。普通食うだろ? カレーだぞ? 超うまいのに。


 俺は歩きながら二杯目のカレーを食う。そして考える。

 この街はそこそこ大きいみたいだ。まずは露店から始めて店を構えよう。



 そう思ってからの行動は早かった。

 純利益率、一〇〇%の商売は成長するのが早い。いや、早すぎる。

 半日で露店を開くだけの資金が得られ、次の日には屋台を構える。

 三日もすれば従業員を雇い、屋台の数も五台にまで増えた。


 そして一週間で構える店舗を探すべく街を練り歩く。

 定期的に屋台に戻り、カレーライスの作り置きをすることも忘れない。


 この能力で生み出したカレーライスは五時間ほどで勝手に消えるらしいが、大したデメリットでもないだろう。どうせ冷めたらおいしくないし。 

 だからまぁ出来立てを食べてほしくはある。

 俺は金があるから異世界グルメを堪能するけどな。カレーはたまにでいいや。




 店舗を探して二日目。貧民街の存在を知る。

 居ても経っても居られなくなった俺は貧民街に屋台を移す。そこでは無料で配布することにした。


 まぁなんだ。ただの自己満足だ。偽善だ。でもやらないよりはいいと思ってる。

 聖人君子になる気は毛頭ない。こっちにデメリットの無い行為だから気分的にやってるだけだ。



 そうしているといつしか俺はカレーライスの皇子様と呼ばれるようになった。

 店舗も見つかり『カレーライスの皇子店』と名付けるくらいには気に入ってしまった。

 なんでだろうな。最初はくっそダサいと思ってたのにな。



 店は大繁盛して二号店を出そうかってことで多忙を極めていた。

 屋台もすぐに品切れになるからあっち行ったりこっち行ったり。

 食器付きは場所を取るっていうデメリットを失念していた。まぁこんなに繁盛するとは思ってなかったけど。

 やっぱりカレーの力は偉大だな。みんな大好きだもんな?




 そしてこの世界に来て三週間が経とうとしていた頃。

 今日は二号店の契約を取り付ける日。のはずだったんだが――。


「これより刑を執行する」


 なぜか俺は処刑台の上に居た。

 どうしてこんな事になったんだろうな。俺、なんか悪い事した?


「この者は貧民街で疫病を流行らせ、街を混乱に陥れた大罪人である。よって、打ち首の刑に処す」


 なんか貧民街で栄養失調から疫病が流行したらしい。

 なんで? みんなカレー食ってたじゃん。もしかして食ってから五時間後に腹の中のカレーも消えて栄養が摂れなかったの?

 こんな不完全なチートとか罠でしょ。だって思わないじゃん。ちゃんと食ってたのに。


 カレーライスは万能食ではなかったことに絶望している。

 やっぱり俺の頭は最初から最後まで狂っていた。死ぬよりもカレーの方が大事みたいだ。さすがカレーライスの皇子様。


 この世界での出来事が夢の中のようで頭がフワフワしている。うまく思考が纏まらないや。

 取り敢えずカレーが食べたい。カレーさえ食えば何とかなる。


 次々とカレーライスが生み出される中、俺の首は跳ね飛ばされた。

 薄れゆく意識の中、カレーライスが食べたいだけの人生だったという言葉だけが頭の中に響いていた。

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