第5話:攻略対象が現れました
「では、まず【聖女】様には御身体を清めていただきます。私共が隅々までピカピカに磨き上げますので【聖女】様は御身をお預け下さい」
「あ…はい」
神殿に着いてまず神官に言われたことは、”風呂に入れ”ということだった。
まあしょうがないよね。私平民だから結構汚れてるし。一応生活魔法の一種に体を浄化する魔法があるけどそれでも限界があるし。
「……広…」
服を脱いでお風呂場に入ると、それはもう、めちゃくちゃ広かった。
なんかすごい綺麗だし、装飾も高そうだし、模様も神聖さが滲み出てるというか…
うわ待って、あれ、シャワー?!浴槽もなんか現代風だし、なろう系によくあるナーロッパというやつでは?ゲームの中では描かれてなかったから気にならなかったけど、この世界、案外テキトーなのかな?
…それとも、私以外に転生者、もしくは転移者がいた…とか?ありそうではあるけど…
「聖女様、とても素敵なお姿です!神々しさが溢れ出ています!」
「あの方が聖女様…」
「なんてお美しい…」
「後光が…」
「あ、ありがとうございます…」
ピカピカに磨かれたあと、色々着せられて神殿の皆さんの前に連れてこられたのだが、私の姿を見た途端地に倒れ伏す人や拝み倒す人がいて落ち着かない。
確かにさっき姿見を見た私もやっぱ主人公なだけあって私ってすごい美少女だなって見惚れていましたけど!私まだ何もしてない!魔物を倒しもしていないし、世界を救ってもいないのに!どうしてこんなに崇められてるわけ?!
「皆さん、聖女様がお困りですよ」
「…!」
「おお、グシオン司祭!戻られましたか!」
グシオン?どこかで聞いたような…あの人、この間の司祭様だよね?なんで王都に?
「聖女様、数日ぶりにございます。少しお時間を頂いてよろしいでしょうか?」
「は、はい。どうされました?」
恐る恐る聞いてみると司祭様は衝撃の言葉を放ってきた。
「聖女様は王都に来られたばかりなので色々と大変だと思います。しかし私は王宮に頻繁に行かなければならないので、貴女をあまりお支えすることができません。つきましては、我が不肖の息子に貴女のサポートを任せたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」
「サポートして頂けるのはありがたいですが、司祭様に御子息が?…その」
そう、ミュルズラシル教では聖職者は基本結婚はできても子供を作ることは禁止されている。上の地位の、例えば枢機卿とか総司教、大司教あたりだったら例外的に許されているけれど、下の方の司祭は駄目だったはず…
特に今の教皇陛下は伝統を重んじるタイプで教義には人一倍厳しいのだ。異端者として裁かれないのだろうか…
そう心配していると司祭様は笑って言った。
「ああ、ご心配なく。養子です。私は司祭以外にもそこそこの位を持っているので、かなり優秀な子を息子にしても教皇陛下には怒られませんでしたとも」
「…教皇陛下…?!」
おかしいな。教皇陛下って司祭様が軽々しく会えるような人じゃないと思うんだけど…もしかしてこの人、すごい偉い人…?
「疑いが晴れたところで紹介しましょう。入ってきなさい」
「失礼します」
「……?!」
目を見開いた。
扉を開いて入ってきたその人物を私は知っている。何故なら、何度も何度もゲームで見たからだ。ボス戦ではいつもお世話になったし、ちょくちょくストーリーでもバトルでも役立つアイテムをくれた感謝してもしきれないキャラ。どうりでグシオンという名前に聞き覚えがあるわけだ。
それもそのはず彼は、彼こそが
「そういえば、名乗っていませんでした。私は司祭のアンドラス=グシオンと申します。以後、お見知り置き下さい。そしてこちらが息子の」
「聖女様をサポートさせて頂きます。ラファイル=グシオンと申します」
攻略対象なのだから!