プロローグ:なんかよくわからないけど死にました
「舞依、明日買い物行くから付き合って~」
「えぇ…なんで?」
「来週奏汰君とデートするから服買いたくて…」
そう言って顔を赤らめる莉那を見て、とても疲れた気分になった。これだからリア充は…仕方ない、手伝ってあげよう。人を惹きつける不思議な魅力があるからか、何をしてもなんだかんだ莉那は許されるのだ。まあ、そうやって甘やかされても馬鹿なことは言わないからいい子ではあるのだが。奏汰もそういうところに惹かれたのだろう。ちなみに、奏汰は私の幼馴染だ。小さい頃からよく一緒に遊んでいた。別に恋愛感情はないが、莉那と付き合うと聞いた時はずっと二人と友達のままでいると思っていたので置いて行かれた気がして少しショックだった。でも、二人共大事な友達なので幸せそうなのは嬉しい。
…そう言えば、明日はイベントの日じゃなかったか?ヤバい、急いで時間指定しておかないと。
「…ログインの時間に間に合う程度なら構わないけど」
「ありがとう~!!舞依の見立てなら自信を持ってデートに行けるよ!」
…本当にログイン間に合うかな。なんか一日中振り回されそうな気がする。それだけは勘弁してもらいたい。明日は18:00時からイベントなのだ。一刻も早く用事を済ませて帰らなければ…
何を隠そう、私は生粋のゲーマーなのだ。これまでハマってクリアしてきたゲームは数知れず、課金はほぼせずにキャラクターを地道に育てて最強にしてきたゲーム中毒者である私にとって、イベントに誰よりも早く参加し良い記録を取るのは当然のことだ。それに支障がでるのは困る。なので、今のうちに寄る店をピックアップして行程を決めておかなければ…
「莉那、明日はこういう行程で…「舞依っ!危ない!!!」え?」
ドンッ
突然、背中を誰かに押されてバランスを崩した。目の前は車道。そして歩行者用信号機は赤。あ、これ死ぬかも。妙に冷静に考えながら、“誰がこんな事をしたのか”と後ろを振り向く。そこには、泣きそうな顔をした莉那と、ニタァと不気味に嗤っているクラスメイトの姿があった。
…それが、私の死ぬ前の最後の記憶。