2021年2月1日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#21 森林
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
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②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。
文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。
言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。
サイト投稿回数 第20回目の今回は………
2022年2月1日放送。
妄想【愛の劇場】#21 森林
一人で過ごす時間が増えたせいだろうか。以前は気にも止めなかった住み慣れた街の喧騒が、八巻は少し煩わしいと感じた。
少し気分転換をしたいと青い空の気持ち良さに誘われ、仕事の隙間時間を利用して、愛車で外へ出掛ける事をした。
目的地は特に指定せず、赴くままに八巻は車を進走らせる。
以前であれば、元恋人の笑顔を求めて仕事場の近くにあった喫茶店で癒やしの時間を過ごしていたものだが、彼女と別れた今ではあの喫茶店へ足を運ぶことが躊躇われた。
もうその喫茶店には、彼女の笑顔が無い事も彼女が新しい幸せを手にしている事も分かっているのだが、彼女への想いはまだ八巻の心の整理ができていない。
カーステレオからクラシックの曲が流れてくる。
アクセルを踏み込む。タイヤがアスファルトを擦る。ガタガタとしたアスファルトに車が振動した。
幾つもの車を走らせてきたのだろう。気温や湿度、もしかしたら月日をかけてアスファルトの上を走らせてきたタイヤの影響もあるのかもしれない。しかし、八巻には少しだけ傷んでガタガタするアスファルトからの振動と体を包み込むクラシックの音楽が心地好かった。
八巻はひたすら車を走らせた。時間を気にもせず、ひたすらに車を走らせた。
車窓から見える風景が青い空と灰色の都会の景色から、少しづつ緑や茶色の色味の強さが増した景色に変わってきた。
木々が密生している風景に八巻の車が吸い込まれていく。
そして、その気持ちの良い風景に溶け込むため、八巻は車を止めて外へ出た。
大地を踏みしめた途端に、運動靴を持ってくれば良かったと少し後悔した。
八巻は、革靴のままで枯れ草を踏みしめて樹林の中へと進んで行く。
踏みしめると足の裏がフワフワする感覚を覚える。枯れ草がジュウタンの様に地面を覆っている。
足を滑らさないように、慎重に森林の中へと進んで行く。
高木林が、青い空へと高く高く枝葉を伸ばしている。八巻を見下ろすようにしてはいるが、その姿は優しい。
頬に触れる空気も健やかで、八巻の心を落ち着かせた。
今まで何人もの人間がこの森林を進んで行ったのだろう。枯れ草のジュウタンが道の様になっている。
八巻もそれに倣って足を進めて行った。
しかし、日頃の運動不足が祟っているのか、息が上がるのは時間の問題だった。
「ハァ……、ハァ……、ハァ……、ハァ」
少し歩いただけで八巻の息は上がる。しかし、足は上がらなくなってきた。
自然と八巻の視線も下を向き出す。
涼やかな風が吹いてきた。
高木林だけでなく、低木林までも、風は優しく揺らしだす。
八巻を責めるような風ではなく、むしろ元気づけるように樹木を揺らし、上を向かせるように青い空を垣間見せた。
八巻は一度立ち止まった。ひとつ深い深呼吸をして、体の中の空気を入れ替えた。
心が洗われるように思えた。
再び足を上げて前に進み出す。
八巻は森林の中を歩き続けた。
八巻は森林の中を無心で歩き続けた。
風の声と鳥の声と木々の声しか聞こえない静かな場所で、八巻の頭はクリアになっていく。
そして、今までうまく回らなかった事柄の自問自答をする。
自分が求めていたものを手にするには、どうするべきだったのか……。
自分は彼女との幸せを手にしたかった。
しかし、それは本当に彼女の幸せを望んでいたのだろうか。
自分は相手の幸せを考えていただろうか。
八巻は森林の中を歩きながら、静かに考えていた。
彼女を手放した理由は、自分の不甲斐なさが原因である事が多かった。
では、自分が彼女と同じ立場だったら?
急な仕事なのだから、約束が守れなくても仕方がない?
一緒に居る事以外に何が重要なのか。
彼女はいつも笑顔でいた。
彼女は何があっても優先順位は八巻だった。
八巻はそんな彼女に甘えていたのだ。
今の結果は自分の不甲斐なさの末路だ。
八巻は前だけを見つめる。
足を上げて一心不乱に進んで行く。
いつの間にか額にうっすらと汗が滲んでいる事にも気が付かないほど、前に進む事に集中していた。
道のような枯れ草のジュウタンが、行き止まりになった。
八巻は我に返った。
来た道を振り返ると、かなりの道を進んできたようだった。
八巻は額に滲む汗に気が付いた。
長袖シャツの右の袖でグイと額の汗を拭うと、ひとつ軽く深呼吸をした。
心が軽い。
八巻は心が本当に洗われた感覚になっていた。
空を見上げる。
しかし目線の先は、高木林の枝葉で覆われて空は見えなかった。
だが今の八巻には、青く高い空がしっかりと見えていた。
八巻は踵を返し、自分の愛車の待つ駐車スペースに戻ることにした。
今までの自分なら、来た道を戻る事にげんなりとしただろう。
しかし今の八巻は、軽快に足を上げ歩く事を苦にしないで歩む事ができる。
森林の道を戻りながら八巻は考えていた。
これから自分が新しい道をつくっていく時には、どのような出会いがあるのだろうか。
明るい未来へと歩を進める八巻の足取りは、踊るような軽やかだった。
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
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妄想【愛の劇場】#22「駄菓子屋」




