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ミステリアスボード  作者: 京理義高
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◆三章 基板解析の旅(9)

 加奈がFPGAを壊してくれたおかげで作業は真っ直ぐに進むようになった。真奈美は英文で書かれたFPGAのデータシート翻訳を担当してもらい、ネットの翻訳よりも精度が高かった。


「技術用語が多いみたいだけど、勉強になるね」


「わかるようになれば、どこにでも就職できるよ」

 直人がいないと確認した後の会話だった。


「二人共見つめ合っちゃってラブラブ~」


 起きた時には姿を消していた加奈が戻ってきた。ダボダボのスゥエットに前髪を頭のてっぺんで結んでいる。午後四時は友達と遊んで帰ってくるには早い。


「加奈、どこ行ってたの?」


「市内のホームセンターとドラッグストア」 


「えっ、歩いたら何時間かかると思ってたの?」


「友達ネットワークがあるから、はい、買って来たよ」


 作業用軍手に風邪薬、睡眠導入剤まであった。直人には火傷の手当て付きだった。


「私もちょっと出てくるね」


「姉ちゃんはどこ行くの?」


「内緒」


 舌を出し、出て行った。 


 真奈美の夢を見るようになった。特に短い睡眠には顕著に現れ、悪夢を凌駕してくる効力があった。僕は設計データのエラー検出と回路構築の役割をするコンパイルをパソコンにやってもらっている間、寝入っていた。僕の設計データだとコンパイルは十分から三十分程度はかかる。


 夢の中では真奈美と一緒に暮らしていて、彼女が料理を作っていた。


「あつっ」


 真奈美の声で起きた。天婦羅の香が倉庫に漂っていた。ガスコンロを使用し、蕎麦を茹でているようだった。


「もう少しで出来ると思うから」


「姉ちゃんの料理は旨いんだから」


「めっちゃ楽しみ。加奈も習えよ」


 そう言うと直人は頭を叩かれていた。


 木机に盛り蕎麦が並べられた。麺つゆの甘辛い匂いが食欲をそそり、昨日の昼からなにも口にしていないと気が付いた。仕上げに油をふき取ったかき揚げと海老天が乗り完成となる。


「頂きます」


 程良い硬さの麺に汁が絡まっている。天婦羅粉にも汁が含まれていて絶品だった。飢餓状態だった身体が成分を吸収していくようでもあり、広がっていく暖かさは幸福をもたらしてくれる。


「バイトしていた店へ買いに行ったんだけど、サービスしてもらっちゃったの」


「旨いな~」


 僕は黙々と食べ、最後の汁まで飲みほした。海老の尾を齧るのは初めてだった。反応を見て得意となった真奈美は、それから料理のバリエーションが増えていった。近くて取れる山菜のお浸しであったり、椎茸を網焼きにして醤油をたらすといった食べ方まであると披露してきた。


 僕が日常で食していた物達は、独断でジャンクフード程度に扱われていて、食事のありがたみであるとか、美味しんでいなかったがために蔑になっていた。紛れもなく生きて行く手段であって、楽しんで食事をする手段としては捉えてはいなかった。そう思うと、つまらなそうな顔をして食してきた素材に罪悪感を覚えた。都会の食物が悪くて福島の食物が良いのではなく、僕自身の感性が問題なのだ。


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