悪あがき
面白いと感じて頂けましたら「いいね」「ブックマーク」「評価」の程、よろしくお願いします(>人<;)
受けた衝撃で全身がバラバラになったかのような感覚。
目に映る視界も揺れ、入る光がチカチカする。
「マスター、起きてください。追撃がきます」
起き上がろうと上体を起こそうとするが、背中の強烈な痛みから立ち上がる事すら出来ない。
「今の汝では我に勝つのは不可能。立場を弁え発言せよ、この痴れ者が」
ハニエルが這いつくばる俺の横腹を蹴りあげる。
「っがぁ!!!」
自分の口から悲鳴にならない悲鳴があがる。
その衝撃で地面を転がるように吹き飛ぶ。
肋骨が数本折れた感覚だ。
「くそっ、ここまで力の差があるのか、ゴブォッ」
内蔵への致命的なダメージなのか大量に吐血する。
「マスターの身体機能が著しく低下しています。これ以上ダメージを受けると生命維持が不可能です」
「涼太君!」
ルルが倒れた俺の元へ駆け寄ろうとする。
「やめろ、来るな・・・ルル」
ボロボロの身体から声を絞り出す。
「汝も我の邪魔をするか。失せよ」
ハニエルがルルに向け十字槍を構えると最初の一撃同様に辺りの大気が震えた。
「やめろぉおお!」
かろうじて動かした左手から8本のホーミングアローをハニエルに向かい放つ。
8つのアローがそれぞれ複雑な軌道を描きハニエルに直撃する。
大気の揺れは治まったが、ハニエルには傷一つ付いていない。
ハニエルは鬱陶しそうに再度俺に槍を向ける。
「まて、ルルやめろ・・・」
次の一撃で死を覚悟したが、突如俺とハニエルの間にルルが両手を広げ立ち塞がる。
「逃げろ・・・頼む、逃げてくれ!」
「ううん。今までずっと助けて貰ったもの。私からのお返しに一緒に死んであげるよ、涼太君」
怯えながらも作る笑顔で振り向くルル。
彼女の元へ行きたいが体が全く言うことをきかない。
ハニエルはルルへ十字槍を向ける。
「だめだルル。頼むから逃げてくれ。夏川、長谷川、ルル達を連れてここから・・・」
2人へ視線を向けるが夏川の姿はあるが長谷川の姿が無い。
「アイツ、逃げたか・・・。夏川、頼む!俺以外全員連れて逃げてくれ」
夏川がルルの元へ駆け寄ろうとすると
「千里ちゃんごめん!私を置いて逃げて」
ルルは近づこうとする夏川を制止する。
そのやりとりを見たハニエルは
「良い、美しいぞ。愛に殉教せよ人の子らよ。さすれば死後、汝らに降りかかる業は逃れられるであろう。我から最大級の祝福を授けよう」
再び俺達の周りの大気が大きく揺れる。
「やめろおおおおおお!!!」
その時である。俺以外のこの世の全てが静止した。
「え、あれ。これは・・・?」
周辺を見渡すと、やはり全ての生き物、雲、風の流れ全てが静止している。
ルル、夏川、ハニエルすらも動かない。
まるで時間が止まっているかのような感覚。
それどころか満身創痍で動かなかった身体が動く様になっている。
ルルに近づき肩に触れようとするが俺の手がすり抜けた。
「なんだこれ!?」
「ここはあなたの精神世界ですよ。りょーた」
声のする方角を振り向くと、そこには以前夢の中で会ったことのある人物。
きめ細かく綺麗な金髪に、透き通る青い目の少女。
夢の中限定の生身のルシアだった。
「ルシア・・・。俺は死んだのか?」
「いいえ、ハニエルが空間爆発を起こす直前です。このまま現実に戻ればりょーたの周りは大爆発に飲み込まれます。間違いなくハニエル以外は全員即死でしょうね」
「なんだよそれ・・・その局面でなんで俺はここに?!」
「私はあなたにここへ呼ばれたのですよ。あの瞬間、あなたは無意識に私との完全融合を望みました。今ここで私を受け入れ、完全融合することであなたは主ルーシェの力を100%手に入れる事が出来ます」
「それって、今真田がやっている侵食ってやつか?」
「はい。恐らくハニエルにも勝てるでしょう。
但し、あなたの肉体からあなたの意思は消え、主ルーシェに今後肉体を譲渡する事になります」
「侵食すればルルは、ルルは助けられるのか?」
「救出は可能です。但し、他の人達は無理です。いくら主ルーシェとはいえ、あの状況からはせいぜい1人抱えて脱出するのが限界でしょう」
「シーナは!?夏川は!」
「救出不可能です」
「くそっ!俺にもっと力があれば。ルシア、この状況を侵食以外で切り抜ける方法は無いのか?」
「限りなく不可能に近いと思われます。今りょーたの身体は身体機能が著しく低下しています。恐らく腕1本動かすのは無理かと。仮にあの場にいるお仲間達が抵抗しても、ハニエルに傷一つ付けることは難しいでしょう」
「動くのは頭と口だけってか。ハニエルと交渉は可能か?」
「ハニエルは熾天使ですからね。人間の話を聞く相手では無いかと」
ルシアは伏し目がちにそう答えるが、ふと思い付いたかの様に顔を上げる。
「あ!一つだけ可能性があるかもしれません!」
「なんだ!?教えてくれ!」
「ガブリエル、夏川千里です。彼女の持つ機転の矢は撃たれた者の状況を暗転または好転へと変える力があります」
「どういうことだ?」
「えっと、彼女に機転の矢を撃たれた者はその身に何かが起こる。有り得ない程の幸運がもたらされる者もいれば、すぐさま死に至る者もいます。何が起きるか分からない、ハプニング効果と言えば分かりやすいでしょうか」
「すぐさま死に至るとか、ハプニング効果なんて可愛いものじゃないな・・・」
「ガブリエルの機転の矢は、何が起きるかが分からないのが難点ですが、運が良ければハニエルを即死させる事も出来るかもしれません。ただ、失敗した場合は全滅です」
「他の案があればいいが、今はもうそれしか無さそうだな。ルシア、もし俺が死んだらルーシェに文句言っておいてくれ。お前のせいだってな」
「アハハ、分かりました。でもりょーたが死ぬのは正直悲しいです。私も全力で結界展開で最後まで悪あがきしますから、どうか死なないでくださいね」
少し寂しそうに語るルシアは、俺の手をとり
「では現世に戻ります。りょーた、私は最後まであなたを守ります」
そう言って霧となり消えていった。
途端、時が流れ出す。
目の前のルルの周りの大気が大きく揺れ空間爆発が迫る。
「夏川!!機転の矢をハニエルに打て!」
シーナと少女の2人を身を呈して庇っている夏川は
「え、あれは何が起きるか分からないよ!それにアイツに効くかどうかも」
「いいから打ってくれ、頼む!」
夏川は一瞬躊躇したが、諦めた様な表情で
「も、もう。分かったわよ!どうなっても知らないからね!」
夏川が大弓を構え、右手から光の矢を発現させる。彼女は弓を構え、ハニエルに狙いを定めその手を引く。
気付いたハニエルが夏川の方を見るが、機転の矢は既にハニエルめがけて射られていた。
「ほう、ガブリエルの矢か。今の汝らの力では我には効かぬ」
機転の矢がハニエルに当たる寸前、ハニエルが睨んだだけで力無くポトっと地面に落ちる。
「無駄だ。汝らにはもう何も出来ん。あと10カウント程でこの辺りは全て塵と化す。では数えよう、10」
くそ、万事休すか。
動けない俺に出来ることはもう無いのか。何かここから出来ること・・・。
そして最後の悪あがきを閃く。
「夏川ぁ、もう一度頼みがある!」
「9」
「何!?私にはコイツの相手は無理だよ!ごめんだけど、この子達だけでも連れてこの場を離れるわよ!」
「8」
「今から逃げても間に合わない!それより」
「7」
「俺達全員にさっきの機転の矢を放て!!もうこれしかない!」
「6」
「は!?何言ってんのそんなの何の意味が」
ルルも驚き俺を振り返り問う。
「涼太君!?どういうこと?」
「5」
「どうせ全員死ぬなら一か八かだ、頼む!」
「4」
「ああああもう、意味わかんないし!今度こそ本当にどうなっても知らないからね!!」
「3」
そう言って夏川は左手から6本の光の矢を出す。
「みんなごめんね!」
夏川はまずシーナ、ジレン、謎の少女の順に機転の矢を撃つ。
「2」
「あとはあんた達2人と私!死んじゃっても絶対私のせいにしないこと!いいわね?!」
夏川が上空に矢を放つ。
「1」
「ああ、約束するよ。生きるか死ぬかの大博打に文句なんて付ける気はないから安心しろ」
そう返した直後、俺の胸に機転の矢が刺さった。直後、俺の身体が指先から順に消えていく。
視界にいるルル、夏川も頭から足にかけて順に消えていく。
「0」
直後、辺り一面に空間大爆発が起こり、王城前広場全てが爆発に巻き込まれ、おさまった跡には瓦礫とホコリの山だけが残った。
ハニエルは直前に起きた涼太達の消失が不可解で、もしやと瓦礫の中を念入りに確認するが、誰1人として死んだ形跡が見つからなかった。
そして俺達6人はというと、機転の矢に撃たれた直後、何故か見知らぬ部屋の中へ転移していたのであった。
面白いと感じて頂けましたら「いいね」「ブックマーク」「評価」の程、よろしくお願いします(>人<;)




