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脱獄

面白いと思って頂けましたら「いいね」「ブックマーク」「評価」の程、何卒よろしくお願いします●┓

「おい、起きろ。来てやったぞ」


聞きなれない男の声が聞こえる。気付けば疲れ果てていつの間に寝てしまったのか。この数日の疲れから今は無性に眠い。まだもう少し目を閉じておこう。


「おい!!早く起きろ!早くしないと人が来るんだよ!」


なんだこいつ、うるさい看守だな。こちとら度重なるシリアス展開で疲れてんだよ!静かに寝させろよ。

ルルとかシーナに起こされるならまだしも、こんな看守のおっさんに・・・


ルルとシーナ!?そういえばあれからどうなった!?


ガバッ!と音がする勢いで起き上がる。


「あれ?俺今何で眠ってたんだ!?ルルとシーナから連絡は!?」


起き上がり猿ぐつわが解かれていることに気付く。拘束されていた手足も自由になっている。

傍らに人の気配を感じて振り向くと、そこには謎の少女を背負ったジレンさんとシーナが立っていた。


「やっと目覚めたか。随分景気よく眠らされてたな、ガハハ」


「涼太さん、約束通り助けにきました」


二人は笑顔だが、ここに来るまで相当大変だったのだろう。かなり疲れた様子だ。


「お、おお、シーナ、ジレンさん本当にありがとう。お陰で助かったよ。ところでルルは?どうしてここにいない?」


「はい、ルルさんはまだお城の中に残っています。救出は出来たのですが、やり残した事があると言って1人でお城に残りました。それで私とジレンさんで涼太さんの救出に」


やり残した事?嫌な予感はするが今はまずここから脱出することが先決だ。その後ルルの救出に向かおう。


「分かった。まずはここを出よう。それからルルの奪還に向かう。何故ここにいるかは後にしてジレンさんも手伝って欲しい」


「おうよ。ちょっと訳あって嬢ちゃんを手伝ってる。乗りかかった船だ、最後まで付き合ってやらぁ!」


それから俺達は地下牢を出て地上に続く階段を駆け登る。地上口へ出ると眩しい日差しと共に、二人の影が映り、どうやら鉢合わせしてしまった。


「囚人が脱獄したぞ!誰か、増援を読んでくれ!」


影の1人が声を張り上げ増援を呼ぶ。


「ちぃ、このままじゃ囲まれるぞ!とにかくここから逃げるぞ!」


叫ぶジレンさんが俺とシーナを両脇に、謎の少女を背中に背負い、翼を羽ばたかせ浮かび上がる。

俺達は空中を駆け抜け逃亡を計るが、3人も抱えていてはスピードが出ず、みるみる2名の警備兵に追いつかれてしまう。


「もう無理だ。戦うしかねえ。涼太、戦えるか?!」


王城正面口あたりで地上に降り俺達3人を降ろす。


「契約悪魔と離れているのでめちゃくちゃ弱いです!でも戦えます!」


「そうか。ならこれを使え」


ジレンさんは腰から年季の入ったナイフを手渡してきた。


「そいつは相手が天使だろうが悪魔だろうが通す逸品だ。そいつで戦え!」


「はい!やってみます!」


俺達を追ってきた天使エンジェル警備兵2体も地上に降り立つ。手には長剣を携え、こちらを警戒し距離を詰めてくる。


「俺は左をやる。涼太は右を頼む」


そう言うと同時にジレンさんが相手との距離を詰め、腰の大剣で横なぎに振り払うように斬りかかる。

その様子を見ていた俺に対しては、もう一体の警備兵が同じく斬りかかってきた。


「うわ、危ねぇ!」


後ろに下がり辛うじて攻撃をかわすが、更に切り付ける警備兵に対して防戦一方だ。


「このままじゃまずい。こっちも反撃するしかないか!」


勇気を振り絞って警備兵との距離を詰め、ナイフで相手の胸を突く。しかしひらりとかわされ再び上空に距離をとられた。ジレンさんはまだ戦闘中だ。


上空に舞い上がった警備兵がそのまま剣を突きだし急降下してきた。


「まずい、かわせない!」


その瞬間警備兵の加速が弱まり突如力が抜けたように地上へ落下する。


「シーナ!!」


警備兵の落下音と同時に聞こえたその声の方を振り向くと、シーナが地面に横たわっていた。

倒れたシーナを抱き抱える謎の少女。その姿を見て彼女はシーナの探していた姉だと直感する。きっとシーナはここで姉に会えたのだ。


落下した警備兵を確認するがピクリとも動かずに地面に横たわっている。ジレンさんの相手も同様だ。


「シーナ、大丈夫か!」


倒れたシーナに駆け寄ると、チョーカーのエルメスが


「心配ない、魔力切れじゃ。だがこうなったらもう当分起きんぞ。まったく、これ以上魔法は使うなと言っておったのに」


シーナは目を閉じ、眠った様に意識を失っている。


「すまないシーナ、俺が弱いばっかりに。でもこの場を切り抜けられたのも事実だ。ジレンさん、シーナとこの子を連れて街へ逃げてください!」


ジレンさんに二人の保護をお願いするが


「いや、どうにもそれは無理みたいだぜ。こりゃもうここまでかもしれねぇ」


悔しそうに歯ぎしりするジレンさんの視線の先には、上10体近い天使エンジェル警備兵を従え、巻き付けた白布に派手な装飾を着飾り、もじゃもじゃの頭に草冠を被った真田がいた。


「よく逃げ出せたな、仲立。でもここまでだよ。脱獄罪は重罪中の重罪だし、これは俺でも助けてやることは出来ないね。大人しく捕まって罪を償えよ」


「真田ぁ、ルルはどうした!!」


「ルルとか気安く人の女を呼ばないでくれ。彼女はもう俺と付き合ってるんだ。お前とはもう縁が切れたんだよ。お前は大人しく盗撮魔らしく別な女の盗撮でもしてろよ、ギャハハ」


「ルルがお前と付き合った?寝言言うなよ。お前みたいな性悪キモメガネ野郎にルルがなびく訳ねーだろ。妄想もそこまでいくと哀れだぞ」


「はっ!言っとけ盗撮野郎。これは事実だ。あいつはもう俺の女だ。今晩から毎日俺のベッドで寝るってよ!どうだ?羨ましいか?そんなに羨ましいなら周りを見てみろよ!お前にピッタリの相手がこんなに沢山いるぞ、ギャハハハ」


真田の言う通り、周りを伺うといつの間にか大勢の警備兵に包囲されていた。


「くそ。おい、真田。俺は好きにしていいがこの3人は助けろ。約束するなら大人しく降伏してやる」


「はっ、ダメにきまってんだろ!そいつらも違法で同罪だよ。この国は法がすべてだ。その法は俺達が自由に作れるんだよ。いい国だろ?」


「くそみたいな国だな。とにかくこの3人の安全を保証しろ!でなければこの命をもってここで大暴れしてやるよ」


「お前如きが大暴れして何になる?でもそうだな、そこで裸になって四つん這いでワンって言ったら考えてやるよ、ギャハハ」


その下衆なセリフを聞いたジレンさんは


「涼太、俺はもう我慢出来ねえ。あの腐った王族を叩きのめすぞ。武器を構えろ!」


しかしこの状況でシーナ達を助けるには僅かでも可能性に賭けるしかない。荒ぶるジレンさんを手で制止し


「分かった。お前の言う通りにしてやる」


そう真田に告げ、聞いた真田がニヤリと笑った時だった。


「その必要は無いよ、涼太君」


聞き慣れた優しい声が辺りに響く。


その声と同時に上空に水の渦が出来、大量の鋭い水の槍が地上に雨のように降り注ぐ。

槍の雨は地上で俺達を取り囲んでいた警備兵達に突き刺さり、大多数を一掃した。


その姿を見て心の中でホッとする反面頼もしさを覚える。

王城入口からカツカツと足音を鳴らしながら俺に近づいて来る姿はまるで水の精霊。

普段のショートカットも良いが、綺麗に青く染まった長髪をなびかせて近づくルルの姿は、この状況を忘れて見蕩れてしまう程に美しかった。

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