身勝手
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ルルさんと別れた後、私はジレンさんに抱えられ涼太さんが捕らえられている地下牢を目指した。
「ルルさん、大丈夫かな」
「大丈夫だろう!あれだけ強力な魔法が使えりゃ自分の身くらいは守れるんじゃないか?」
「うん。でもルルさん、最後とても悲しそうな顔してたの。それが気になっちゃって」
最後にシーナの目に映ったルルの力弱い笑顔。
シーナの持つ伝達の神の力は、その機微たる感情をしっかりと捉えていた。
ここより王城内 田中瑠々の視点に切り替わる。
たった今シーナちゃんジレンさんと別れ、真田君達に会うために私は一人で王族専用の執務室へと向かっている。
無抵抗を意思表示するため、ディーナとの融合を解く。
私は誓ったんだ。この命、この身体を賭けてでも涼太君とシーナちゃんを無事に逃がすと。これ以上二人を決して危険に晒さないと。
長い渡り廊下を渡り、王族以外侵入禁止区域へ足を踏み入れようとした時、先程の戦闘音で駆けつけた大勢の兵士達と鉢合わせした。
「これは田中様!お怪我はございませんか?どうやら何者かが城内に忍び込み、窓を破って逃走したようでして」
何者か?まだシーナちゃんの脱獄がバレてないのかな。
「はい、大丈夫です。私も危険を感じて逃げてきました。それより希莎ちゃん達が今どこにいるか知っていますか?」
「国王様と一緒に居られます。今は執務室にいらっしゃるかと」
「ありがとうございます。では私はこれで」
お礼を告げ執務室へ向かおうとすると
「あ、田中様!これ以上は進めません。ここからは王族専用エリアになりますので、お客様とはいえ侵入は不可なのです」
執務室へと繋がる廊下を遮る様に鎧武装した2人の兵士が立ちはだかる。
「私はあの人達のクラスメイトです。邪魔するなら希莎ちゃん達に言いつけますよ」
本当はすごく怖いし人を脅すとか苦手だけど、今は絶対にこの先へ進まなければならない。出来るだけポーカーフェイスで凄んでみる。
「はぁ、しかしですね」
「しかしですねじゃありません。急ぎ伝えなきゃいけない事があるんです!」
それから兵隊長と思われる人に駄々を捏ねていると
「おや、瑠々さん!さっき凄い音がしたから様子を見に来たけど、こんな所で何してるの?」
現れたのは怪訝な表情をした真田君だった。
「凄い音がしたから怖くて部屋から逃げてきて、これからあなた達に会いに行くつもりだったの。でもこの人達に足止めされているところだったの」
「ああ、それはすまない。今みんな揃っているから執務室に案内するよ。だからそんなに怯えなくても大丈夫だよ」
「うん、ありがとう。私もこれからの事で真田君と少し話したい事があって。少しいいかな?」
本当は今すぐにでもその顔をひっぱたいてやりたいが、グッと堪え無理に笑顔を作る。
「これからの事・・・。そっか、やっと決心してくれたんだね!僕の部屋へ案内するよ」
真田君は嬉しそうに私を自分の部屋へと案内する。
豪勢に装飾された真田君の部屋に入ってすぐに彼が私に告げる。
「これからは君の事、いや瑠々の事は俺が守るから何も心配しないで。瑠々には俺のその姿をずっと隣りで見ていて欲しいんだ」
「・・・。うん」
「俺達ならきっといいパートナーになれると思うんだ。きっと君を幸せにしてみせるよ、瑠々」
「真田君は私の事が好きなの?」
「え!ま、まぁ、そういう事になるかな。ハハハ、バレちゃってたか」
そう言って軽く頭を掻く真田君。
「私達、付き合ってもいいよ。その代わりお願いがあるの」
「お願い?」
「うん、今捕らえられている二人を逃がしてあげて欲しいの」
「捕らっ!何故それを知っている!?」
「それを約束してくれるなら、私を好きにしていいよ」
「す、好きに!?あ、あぁ、すまん取り乱した。交換条件だね。確かに彼らの命は俺次第だからね。まぁ考えてあげてもいいよ?その代わり今日から君には俺の事を愛してもらうよ?あと基本的に俺の言う事をちゃんと聞くことは約束してよ?それが条件だよ?」
自分が優位に立った途端に私に対しての態度が変わる。
気持ちよさそうに語る真田君の表情を見ると本当に気持ち悪さしかない。でも二人を助けるためにはこれを飲むしかない。
今の私にはこれくらいしかあの人の役に立てない。
「いいよ。その代わり約束は必ず守って」
「よし、いいだろう!その代わり今日から毎晩俺の部屋で寝るんだ。それが条件だよ?」
「・・・。分かったよ。それでよければ」
その後、私は真田君に連れられて他の3人のいる執務室へ向かった。
執務室に入ると鳴海君、千里ちゃん、希莎ちゃんの3人が豪勢なソファに座っていた。
「あ、瑠々!大丈夫だった?さっき天使の不審者が城に侵入したみたいなの!多分ここにある宝玉狙いの強盗だと思うけど」
希莎ちゃんが私の元に駆け寄ってきた。
「う、うん、大丈夫。怖くて助けを呼んだら外の見張りの人が逃がしてくれたの」
扉をぶっ壊して見張りの人も一緒にぶっ飛ばしましたとは言えないので上手く誤魔化す。すると鳴海君が
「しかし、王である俺の居る城に忍び込むとはいい度胸だ。捕まえて王の裁きを与える必要があるな」
一点を見つめ自分に酔いしれた顔で呟く。
「エイジ、それを言うなら法の裁きだろ?でもまあ王が作る法だからな。同じことかもな」
真田君がメガネを拭きながら流し目で答える。
それを聞いて作り笑いの希莎ちゃんに、興味無さげに爪の手入れをする千里ちゃん。
そんな4人のやりとりに正直呆れてしまい、こんな人達に捕まってしまった私達が恥ずかしく思えてきた。
「ねえ、みんな聞いて欲しいの」
突然の私の訴えに4人が一斉に顔を上げる。
「私を騙していた事はもう許すから、牢獄に捕らえられている涼太君とシーナちゃんを逃がしてあげて欲しいの」
私の訴えに対し、希莎ちゃんがバツの悪そうな顔をする。
鳴海君が口を開く。
「その事実を知っていたのか。だがそれはダメだ。あの二人は王である俺の怒りを買った。それだけで重罪に値する。あいつらは死刑だ」
対し真田君が私との約束を守るため反対意見を述べる。
「まぁ待てよエイジ。盗撮野郎とはいえ仮にもクラスメイトだ。生かしてやる事でエイジの器の広さが広まり、他の者もエイジに付き従うだろう」
真田君の意見に鳴海君がピクっと反応する。
「ほう。俺の格が上がるということか?」
「そうさ。さすがはエイジと誰もが思うだろう。もしかしたら逃亡中の桐谷さえも戻ってくるかもしれんぞ」
桐谷・・・透華ちゃん?逃亡してるんだ。
そりゃこんな所に居たくないよね。この会話を聞くだけで気持ちがすごく分かる。
「ならばいいだろう。俺の器に免じて命は助けてやろう。希莎も千里もそれでいいか?」
急に振られて驚いた希莎ちゃんは
「あ、はい!私は鳴海君のいい方でいいです」
意思なく鳴海君に賛成する。
興味無さそうに爪の手入れをする千里ちゃんも
「うーん、私は最初から殺すとか反対かなー。なんか物騒だし」
こちらも興味なさげに鳴海君に賛成した。
それを聞きひと安心していたところ、鳴海君がまた暴走する。
「よし。では死刑は無しだ。終身刑と処す」
あまりに自分勝手な暴走にさすがに腹が立ち
「ねぇ、逃がしてくれるんじゃないの!?そんなの身勝手で酷すぎるよ!それに真田君、これじゃ約束が違うよ!」
鳴海君と真田君に対し交互に文句を言う。
「身勝手?俺に向かっていい度胸だな、田中」
鳴海君が片目で私に睨みを効かせ脅しをかけてくる。
鳴海君に便乗して真田君も
「ま、まぁ、死ぬ事はないんだしこれ以上は諦めてくれ。それより、これ以上エイジに文句をつけるようだと死刑になっちゃうよ?いいの?」
人の弱みにつけ込み、最低な本性丸出しに脅してきた。
追い込まれた私は希莎ちゃんに助けを求める。
「希莎ちゃん!お願いだから助けてあげて。このままじゃクラスメイトが!」
私の叫びを聞いた希莎ちゃんは、最初こそ私の目を見て同情の眼差しを向けていたが、すぐに目を背け
「し、仕方ないよ!この国の法律に従わない仲立君が悪いと思うし。それに瑠々もあんまりしつこくしてると捕まっちゃうかもだよ。今回は諦めよ、ね?」
信じていた希莎ちゃんまで私の助けを聞き入れようとしなかった。
これでハッキリした。この人達は最低だ。
神聖王国という名ばかりの王国。それを牛耳る身勝手な人達。同じ空間にいるだけで虫唾が走る。
こうなったら今すぐこの人達とこの場で戦い、涼太君を救出に向かうしかない。そう心に決め、ディーナを呼ぼうとしたその時
「あーもう、爪失敗したぁ!またやり直しじゃん!みんながうるさいからだよ。てかもうこの話はおしまい!みんな少し頭を冷やした方がいいよ?」
突如話に割り込んだ夏川千里ちゃんが立ち上がり、プンスカ怒りながら部屋を出ていった。続いて真田君が
「そうだな。瑠々も少し頭を冷やした方がいい。今から俺の部屋においで?一緒に紅茶でも飲もう」
執務室の扉を開け、私に付いて来るよう目配せする。
それから私は執務室を後にし、真田君の部屋へ向かう。
部屋に着くと彼は豹変し、私に対して近距離で凄んできた。
「瑠々、自分の立場が分かってるのか?あまり俺を困らせない方がいいぞ」
「逃がしてくれるから付き合う条件を飲んだんじゃない!ひどいよ!」
「黙れ!もうこの話は終わりだ。それより・・・」
無理矢理話を終わらせると、真田君の目が普段より一層気持ちの悪いものに変わる。
涼太君達を助けるために覚悟はしていたものの、あまりの気持ち悪さに後ずさりする。
「そんな事よりお楽しみの時間だ、瑠々。さぁ、その服を脱」
「優希ー?いるー?」
真田君が私に迫ろうとしたその時、部屋の外から千里ちゃんの声が聞こえた。
「ちっ、なんだよ!これからだって時に・・・チサト、どうした?」
真田君が部屋のドアを開けると、そこには夏川千里ちゃんが立っていた。
「宝物庫にあるはずの宝玉が無くなってるんだけど優希持ってる?爪に付ける宝飾品を取りに行ったんだけど、その時にあるはずの宝玉が無いことに気付いたの」
「は??何故無くなっている!?まさか強盗か?瑠々、少しここで待っててくれ!」
慌てた真田君は急ぎ部屋を飛び出し、廊下脇の階段を駆け下りて行った。
残された千里ちゃんと2人きりになり、この先自分が置かれる環境に絶望していると
「瑠々ちゃんも大変だねー。優希に弱み握られちゃって。どうせ助けてやるから抱かせろとかそんな感じでしょ?」
ずっと興味無さげだった千里ちゃんからまさかの言葉が飛び出す。
「どうしてそれを?」
「アイツらの考えてる事なんて全部分かるって。ほんとしょーもないよねあのバカ達」
私に向かって苦笑いする千里ちゃんが今までとは別人に見える。
「鳴海も真田も調子にのり過ぎてるのよ。あと長谷川希莎、あの子はヤバいよね。人間って追い込まれるとクソみたいな本性が丸出しになるよねー、ウケる」
突然仲間を貶しだす千里ちゃんに唖然としていると
「ごめんごめん。こっからが本題だよ。とりあえず瑠々ちゃんにはこれをあげよう」
そう言って私に手渡してきたのは、赤い宝石の付いた見慣れたネックレス、ルシアちゃんだった。
「えぇ!もらっていいの?!」
「うん。どうせ夜にでも渡すつもりだったし。でも夜まで待ってたら真田優希が瑠々ちゃんに対して暴走しそうだったから今渡しに来たの」
「千里ちゃん、あなたは一体?」
「うん、私はレジスタンスの1人。透華を逃がした王国の裏切り者。とりあえず真田が戻って来る前に私と一緒にこっちへ来て」
そう言って私の手を掴み、真田君の部屋を後にする。
それから私達が向かったのは千里ちゃんの部屋。
そこで私は衝撃の事実を知ることになる。
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