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半悪魔と計略の神

モチベになりますので「いいね」「ブックマーク」「評価」の程よろしくお願いします(>人<;)

「ほう。悪魔と契約の後、インドラからこの国へ辿り着いたと。この国にある宝玉と贖罪制度の撤廃が目的ということじゃな?」


長いテーブルを挟んで対面にはエルメス。その反対に俺とシーナが並んで座っている。


「ああ、宝玉を手に入れる目的は元の世界へ帰るため。新たな世界の創造とかには正直興味が無い。あと、この国にいる鳴海英志を1発ぶん殴るのは外せん」


「ふむ。そちの言う鳴海英志がここの国王だとしてもか?」


「なっ!国王?なんでそんな事になってんだ!?」


「前国王である女神デメテルが失踪したのは知っておろう。国王不在時にミカエルと契約した鳴海がこの国に出現した。ミカエルは大天使長じゃ、そうなったのも不思議はなかろう」


ミカエルって確か超有名天使じゃなかったっけ。鳴海め、随分大物と契約したな。


「国王だろうが関係ないよ。俺は個人としてアイツには借りがあるんだ。見つけ出したら容赦しない。それにアイツが国王ならちょうどいい。贖罪制度とか言うふざけた奴隷制をやめる様説得してやるよ」


黙って聞いていたエルメスが突然笑い出す。


「アハハハ、そちは傲慢というか、身の程知らずというか。この王国を敵に回しても構わんと言うのか!良い、良いぞ。気に入った。わらわも今のミカエルの王国は好かん。ちょうど良い。お主達で存分にかき乱すがよい」


え、いいの?エルメスも今の王国には不満があるのだろうとは思っていたがかき乱せとは。


「それでそこのちっこいのは何故ここにいる。まさか自分の意思なく、ただこの男に付いて来たって訳じゃなかろうな?」


シーナに厳しいエルメスが、尚も厳しくシーナを追求する。


「あ、えと、私はただこの国にいるお姉ちゃんに会いたくて。それで涼太さんとご一緒させてもらってます」


エルメスが目を細める。


「お主は自分の力でその姉とやらを探しているのではなく、この男に頼ってるだけということか」


「え、あの・・・」


「待てエルメス。この子が過酷な環境で生きているのを見て、助けたいと言ったのは俺だ。だからそんなに責めないでくれ」


「随分と甘いことを言うではないか。人間界ではどうか知らんが、ここエラリスでは神、悪魔問わずこれくらいの歳で独り立ち出来る力が無ければ生き残ってはいけぬ。それに自分の弱さを盾に、他人に守ってもらうことを良しとするその性根が気に食わん。貴様はダメじゃ、ここから立ち去り一生贖罪人として生きよ」


確かにここエラリスは俺達の世界とは環境が違う。エルメスの言う通り、幸せな人生への執着、立ち向かう強さが今のシーナからは見えない。今この場で見捨てる気はないが、今のエルメスに言い返せるくらいの強さは必要だ。なので黙ってシーナを見守ることにする。


「あの、私はどうしたらいいでしょうか?やっぱりもう一度ベフデトの街へ帰るべきなのでしょうか?」


「そんなのは知らん。自分の人生じゃ、お主の好きにすれば良かろう」


エルメスは尚も冷たくあしらう。

シーナは長い期間、贖罪人として他人に都合よく扱われてきた。恐らく途中からはずっと他人に生き方を決められてきたのだろう。

奴隷根性。今のシーナにはそれが染み付いてしまっている。


一方、幼いながらも自立し、立派な神としての威厳を全うしようとしているエルメスからしてみればイラつくのだろう。

どちらも責めることは出来ないが、シーナがもっと強くなる必要があるのは確かだ。でなければこの猛獣だらけの野生を生きてはいけない。


誰も助け舟を出してくれずシーナが途方に暮れているとエルメスが


「お主はこれこら一体何がしたいんじゃ?」


片目でシーナを見ながら尋ねる。


「お姉ちゃんに会いたいです。あと出来るならクリカラの故郷ゲーテに帰りたいです」


「ほう、その為に自分は何をすべきと思うのだ?」


「えっと、まずはこの街でお姉ちゃんを探します。そして一緒にここを抜け出して、ゲーテに向かうことです」


「ならば何故それを今すぐ実行しないのだ?」


「それは・・・私は贖罪人ですから。あと、エルメス様にも先程帰れと言われましたし。それに、私にはそれを実行する力が備わっていませんし」


ここでエルメスがついに切れた。


「このたわけ娘が!貴様は妾に死ねと言われれば死ぬのか!ならば今すぐここを出て、野良悪魔にでも殺されてしまえばいい!」


これはエルメスの言う通りだ。

自ら選んであの町を飛び出し俺達に付いてきた以上はそれなりの覚悟が必要だ。誰に何を言われようと目的を達成したいという想い。それがシーナを強くするはずだ。


「貴様の様なウジ虫はこの男の役に立つどころか、足でまといにしかならん!どうせ貴様の姉とやらももう生きておらんだろう。ならばさっさと何処へでも行き、一生他人にいいように使われておれ、このたわけ者が!」


強い否定にシーナの表情が崩れ、ついに涙が流れる。


「わ、私だって、もっと自分で切り抜けられる力が欲しいの。そのためなら私は何だってするつもりです。でも、私なんかが頑張っても、何ひとつ上手くいく訳が無いって分かってるの!どこか諦めてしまっているんです。本当はもっと、もっと強くなりたい。どうすれば強くなれますか!?」


大粒の涙を流すシーナは自分の顔を覆う。エルメスが真剣な眼差しでシーナに問う。


「姉を救い出し故郷に帰る力のためなら、そちは何でもすると言ったな。その言葉に偽りは無いか?」


「うん。自分で切り抜けられる力が手に入るならどんな努力だってする!覚悟はあります!」


シーナは弱い自分を切り捨てるかの様に語尾に力を込め誓う。


「それがそちの命を賭けることになってもか?」


命を賭ける、今までならその言葉に躊躇するであろうシーナだったが、微塵も動揺せずに


「私なんかの命でお姉ちゃんを救えるのなら、幾らでも賭けます」


ニヤぁ、と擬音が聞こえるくらいの笑みを浮かべるエルメス。


「アハハハハ!それじゃ、その顔じゃ!なんだやれば出来るではないか」


今までの怒りが嘘だったかのように大笑いするエルメスは、一通り笑い終わった後


「良い。のう、シーナよ。妾と契約せぬか?」


シーナに向かいとんでもない事を言い放った。


「は?!ま、待て待てエルメス!いきなりどうしてそうなる!?お前はここの神であり、王国を統べる王族の1人だろ?そんな簡単にシーナと契約しちゃっていいのか?今の王族としての立場はどうする気だ?!」


エルメスの突飛な提案にシーナ以上に俺が驚いた。


「ふんっ、今の立場など何が面白いものか。つまらんのじゃ!今の王国が。それならお主達と一緒にこの国をめちゃくちゃにした方が楽しかろう。それに王国の外とか旅してみたいし」


こいつ。シーナの本心を焚き付けて、自分が今の立場から抜け出すことに利用しやがった。

そう言えば伝達の神以外にも、計略の神とか言ってやがったな。とんでもないヤツじゃねーか!

エルメスをルル直伝のジト目で睨むとエルメスは


「妾の計りがバレたか、フフフ。でも考えてもみよ。その代わりそこのシーナの力になると言っておるのだ。こういうのをお主達の世界ではうぃんうぃんと言うのじゃろ?」


一瞬ウィンクしながらドヤ顔で語るエルメスのこめかみをぐりぐりしたくなったが、考えてみるとこいつがここで仲間になるのは助かる。

当然、完全に信用出来る訳ではないが、シーナを守るためにも逆に利用することも出来そうだ。この契約を受けるかどうか考えていると


「涼太さん、私この契約を受けます!賭けるのが私の命なら決定権も私にあるはずです!」


「確かにその通りなんだけど。エルメスが嘘をついていて君を利用しようとしているかもしれないんだよ?」


「それならそこまでです。私の価値はその程度だったで諦めがつきます。でも、このまま誰かに守られて生きていくのはもう嫌なんです。それなら私の命を賭けてでも、この契約を受けたい!」


そう告げるシーナの目は決意に溢れていた。


「それに、エルメスちゃんはそんなに悪い人じゃないって分かるんです。確かにたまに口は悪いけど、なんていうか温かさみたいなものが伝わるんです」


「なっ、エルメスちゃんじゃと!」


シーナのちゃん付けにエルメスは開いた口が塞がらずにいる。


「だから大丈夫!私を信じて下さい、涼太さん!」


シーナがここまで言う以上、俺がとやかく言う筋合いはない。

後はこの契約がのちの成功に繋がるよう祈ろう。


「ふん、覚悟は決まったかシーナよ。ならばそちの左手を妾に出すがよい」


「左手?こう?」


シーナがエルメスに対し、手のひらを向ける様に差し出す。

するとエルメスの身体が黄金の光に包まれ、ぼんやりと発光しだす。


「汝、我を求める者よ。我も汝を求めここに契約する。汝の望みは我の望み、我の望みは汝の望み。その全てを分かち合い、互いの糧として付き従う。ここに汝と我の標となる礎を築く!」


エルメスの発する契約の言葉が終わった途端、エルメスが小さな黄金の光に姿を変える。

そしてその黄金の光がシーナの手のひらに乗り弾ける。

途端、目が眩む程の光が部屋中を包み、あまりの眩しさに2人とも目を閉じた。

光が治まり、再び目を開けるとシーナの手のひらの光が消え、その代わりにシーナの首に黄金の首輪、いやチョーカーの様なアクセサリーが付いていた。


「ふん、お主らこれから宜しく頼もうぞ。特にシーナ、妾の力は強力ゆえ早く慣れ使いこなせるようビシバシやるから覚悟しておけ!」


「うん。ありがとうエルちゃん」


「え、エルちゃんじゃと!ま、まぁ何でも良いわ。好きに呼ぶがよい。しかし、エルちゃんとは、ウフフ」


シーナの付けたあだ名に満更でもなさそうなエルメスの返答がなんか微笑ましい。それにしてもシーナは半悪魔(デミデビル)で、エルメスは神なのだがその辺は問題ないのだろうか。

エルメスに尋ねてみると


「種族なんぞ、お主らでいうところの人種みたいなもんじゃ」


と簡単に返された。

契約も無事果たされ一件落着のところで、今まで静観していたルシアがついに口を開く。


「はぁ。相変わらず強引ですね、エルメス」


その言葉にシーナの首に付いたエルメスが反応する。


「何?お主何者じゃ?」


「私ですよ。主ルーシェの使い魔ルシアです」


「!!?ルシアじゃと!?ではそこの男の契約悪魔というのは・・・まさか・・・」


「そのまさかです。ここにいるりょーたの契約者は元大天使長であり熾天使の長、光をもたらす者。愛称ルーシェこと、ルシフェルです」


「ええええええ!!!!」


エルメスの今日イチの大絶叫が部屋中に響いた。


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