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最後の切り札

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王都ベリルヘムは巨大な城塞都市。

王城、大聖堂を中心に1番街、2番街、3番街と円を描くように住居が連なっている円状の都市だ。

中心に行くに連れ住民の身分も高く、1番街は上級天使や身分の高い人間が多く住む。逆に円の外側の3番街は身分が低く、隷属的に扱われる人々が住んでおり、街並みも1番街とは大きく違う。

神の国が謳う「誰もが平等な正しく美しい国」とは大きく乖離している様に感じる都市だ。


飛行移動を止め、地上に降り立つと同時に融合を解く。

ジレンさん曰く、この都市も中へ入るには通過審査が必要らしい。融合後の姿では種族を疑われる可能性があるため、人間の姿での通過審査を選択する。

入場ゲートまで着くと、手前に大きめの建物があり、そこで通過手続きを行う様だ。

中に入ると受付までの長い行列が出来ており、人間はもちろん中には天使や神の様な者も種族の境目なく並んでいる。

俺達3人も列に並ぶと、後ろに並んだジレンさん達が話しかけてきた。


「よう大将、なんだって人間の姿になってんだ?」


そうだ、融合解除後の俺の姿を見せるのは初めてだった。

今更、実は私は人間なんです、ともカミングアウト出来ないため


「話す相手が人間の時は、この姿の方が威嚇しなくて済むかなと思いまして。ちょっとした気遣いです」


とでも説明しとく。


「ほぇー、そんなこと考えたことも無かったぞ!確かに一理あるな!」


納得してくれたのでこれで良しとしよう。

約30分程並び、ようやく俺達の順番となる。受付カウンターで対応してくれたのは、人間女性の通過審査官だった。


「こんにちは、旅のお方。この街に来るのは初めてですか?」


審査官の女性が俺達に尋ねる。受付カウンターの後ろ側を見ると武装した兵士が多数名。正式に数えてはいないが、おおよそ30名くらいはいるだろう。

更に1番奥には、白黒のゴシック服を着た白髪少女がお菓子とぬいぐるみに囲まれソファに寝そべっている。見たところシーナと同じくらいだろうか。

審査官の質問に対し、ジレンさんの時同様、豪快な嘘で乗り切ろうと試みる。


「私はこの街の住民です。今回はこちらのお嬢様達の護衛のため、国外に出て帰還致しました!」


「それは任務ご苦労さまです。ここを出立する際に受け取った任務指示書などはお持ちですか?」


「それが・・・途中で野良悪魔に襲われ、荷物の一部を無くしてしまいまして」


「それは困りましたね。お持ちでなければご関係者への確認が必要でして、少しばかりお時間を頂く形となります」


それは困る。当然全部嘘なので関係者などいる訳が無いからだ。後ろでジレンさんが


「そりゃそうなるわな。そんな大事なもん無くすからだぞ、ダハハハ」


と愉快そうに笑っている。


「関係者確認は別にいいのですが、私はジェイド様より直ぐに戻る様言われているのです!ここで時間をかけていると、ジェイド様がお怒りになり、皆様にも被害が及ぶ可能性がありますがそれでも宜しいですか!?」


見たことも無いジェイドの名前を使い、強引に突破しようとする。これに対し受付女性は困り顔で


「ジェイド様ですか!?少々お待ちください!」


慌てて後ろに座る男性職員に相談しに行った。報告を受けたであろう男性職員の顔も曇り、いくつか言葉を交わした後、女性審査官が再び戻ってきた。


「そういう事でしたら、入場を許可させて頂きます。ちなみにそちらのお2人はどの様なご身分の方達でしょうか?」


「はい、詳しくは申せませんが、こちらのお2人は王族の関係者でございます。訳あってここベリルヘムから連れ去られ、私がお連れ戻して来たのです」


「た、たたた大変失礼したしました!直ぐに通過手続きをさせて頂きます!」


まさかこんなに上手くいくとは思わなかったので少し拍子抜けした。王族の名前だけで通過可能とか意外とザルだなこの審査。こういうところは日本とは違うな。

ひと安心し、壁際のソファに腰かけようとした時


「嘘じゃな。そいつの言ってることは全てが嘘で塗り固められておる」


よく通る高い子供の声が室内に響く。声の主は室内奥で、お行儀悪くお菓子を摘みながら寝そべる少女。


「あまりに嘘だらけで面白いから放置して聞いていたが。我ら王家の名を使うのであれば話は別じゃ。兵士達よ、そやつ等をひっ捕らえよ」


少女が言い終わると同時に、後ろに控えている武装した兵士達が俺達に迫る。

これはまずい、強行突破を計るか否か迷っているとルルのウンディーネが


「抵抗は止めた方がいいわ。こっちにはシーナちゃんもいるのよ。今戦うと間違いなくタダじゃ済まないわよ」


俺はまだしも、ルルとシーナをこの場で危険に晒す訳にはいかない。あっという間に兵士達に取り囲まれ、俺達は無抵抗で捕らえられた。


「王家の名を不肖に使うからじゃ不届き者め。まだこの状況を打開するための嘘はあるか?全て見破ってやろうぞ」


少女はソファに横たわりながら、ニヤけ顔で俺の顔を眺める。


「くっ、ここまでか」


「なんだ、もう終わりか?つまらない奴らじゃ。情けないのう、貴様らの底はそこまでか?」


確かにこの状況は詰んだに等しい。だが、どこかで正体がバレる可能性は考えていた。その為、こうなった時の最後の切り札は考えている。今まさに一か八かそれを使う時だ。

体制を立て直し両手を上げ、全体に向けて告げる。


「分かった、大人しく捕まるよ。但し、1つだけ頼みがある。今から話すことは必ず上層部に伝えて欲しい」


兵士の中の1人が声を荒らげる。


「貴様!この後に及んで何を!」


「良い。面白そうではないか。そちの願い聞いてやろう。その代わりつまらぬ事を申したら貴様らは贖罪落ちでは済まん。明日にでも公開処刑にしてやろう」


少女が気だるそうにソファから起き上がり、こちらへ近寄ってくる。同時に構えていた兵士達が敬礼の如くその場に跪く。


(わらわ)はエルメス。伝令と計略の神じゃ。貴様の言い分、この場で王族まで届けてやろうぞ」


エルメスと名乗る少女、いや神は人差し指をこちらに向け妖艶なポーズをとる。だがしかし、見た目はどう見てもシーナと同じくらいの子供であり、いくらセクシーポーズをしても残念ながら・・・


「おい貴様っ!今なんか失礼なこと考えとったじゃろ!!」


「い、いえ。とんでもありません」


俺の嘘を見破ったことといい勘が鋭いなこの子。額に冷や汗をかきつつも切り札を出す。


「俺はお前らの大嫌いな悪魔と契約した契約者だ。この世界の人間ではない」


「な、なんだと!?」


後ろからジレンさんの驚きの声が聞こえる。騙しててごめんねジレンさん。両脇のルルとシーナも突然カミングアウトした俺の顔を驚きつつ見上げる。辺りの兵士達は戦闘モードとなり武器を構える。


「俺は悪魔と契約を結びこの国にやって来た。最後の審判(ラストジャッジメント)を見つけるためだ。この国にも俺と同じ契約者がいるはずだ」


皆が俺の話を音1つ立てずに聞いていたが、最後の審判(ラストジャッジメント)のフレーズが出た途端ざわめき出す。

エルメスは興味深そうに俺の顔を見る。


「この国の上層部に伝えろ。仲立 涼太(ナカダテ リョウタ)田中 瑠々(タナカ ルル)が会いに来たと」


言い終わると、エルメスは口を三日月状にして笑い


「ほう、これは嘘では無いぞ。いいだろう!貴様の願い届けてやろう」


そう述べると、エルメスが目を閉じ、ぺったんこの胸の前でお祈りポーズをとる。その後、エルメスの体がぼんやりとした薄い緑色に包まれる。

約30秒程度経過したところでエルメスが口を開いた。


「これでお主の願い届けられたぞ。王族達が貴様に会いたいそうだ。今すぐ大聖堂カテドラルへ向かうぞ」


俺達はエルメスと多数の兵士に連れられ、大聖堂カテドラルへ向かった。

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