カラフル
僕は生まれつき目に障害がある。
色盲と言って、色がわからない病気だ。
僕の目には全てが灰色に見える。
灰色の空、灰色のりんご、灰色の花。
この生活で困ることはいろいろある。
信号の色がわからなかったり、焼き肉の焼き加減がわからなかったり、といったことだ。
みんなは、そんな僕のことを可哀想だと言うが、僕はもう慣れてしまっているので、そう言われても反応に困ってしまう。
でも、そんな僕に色を教えてくれる女の子がいた。
「空は青いんだよ。ポストは赤いんだよ。カラスは黒いんだよ。」彼女は目についた物を片っ端からあげて、僕に教えてくれた。
僕にできるのは、色を想像することだけだった。
「わたし、大きくなったら医者になって、晴人の病気を治してあげるね。」
彼女はそう言った。
僕は嬉しかった。
そして10年後、大人になった僕は、色が判るようになっていた。医学の進歩により、色盲患者用の特別な眼鏡が発明されたのだ。
僕はその眼鏡を初めてかけた時、世界はこんなにも美しかったのかと思った。
そして僕は彼女にプロポーズした。彼女は赤くなって、うん、とうなずいた。
僕は眼鏡があって良かったと思った。
だって彼女の照れた顔を見ることができたから。
雨上がりの空には、虹が出ていた。