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1年目 夏 開幕

「今日の抽選の結果、初戦は7月1日の第1試合に決まった。相手は小野田高校だ。昨年夏は3回戦敗退という結果のチームだな。」


 抽選日が行われた日の練習終わりに、山田監督から組み合わせが発表された。


 小野田高校か……。そこまで強豪というわけではないが、今のうちのチームからしたら格上なのは間違いないな。今のチームでどこまでやれるか……。


「レギュラー発表は1週間前に行うことにする。この時期はケガだけはしないように体のケアを徹底すること。では、解散」


 レギュラーについては事前の山田監督との会話の中で、大会に申込む関係上すでに決まっていると言われていた。


 チームによっては早めにベンチ入りメンバーを伝えて別メニューを組むところもあるみたいだが、この人数ではほとんどがベンチ入りだから特に意味がない。


 ギリギリまで発表しないことで、最後の最後まで競争意識をもって練習させるという意図があるのだった。


 ちなみに俺がベンチ入りメンバーか聞いたら、内緒とはぐらかされた。夏の予選はベンチ入りメンバーは20人で、1人しか外れない。まさかな……。



 





「それでは、ベンチ入りメンバーを発表する。背番号に名前を呼ぶから、呼ばれたら前に背番号を取りに来てくれ」


 時は流れ、いよいよ大会1週間前。練習終わりにベンチ入りメンバーの発表が行われることになった。


 試合用ユニフォームは個人で持っているので、渡された背番号を背中に縫うことになっている。俺が守るファーストのレギュラー番号は3番だ。さて、俺は何番を渡されるのか……。


「1番、会田………2番、太田………3番、斉藤………」


 残念ながらレギュラーナンバーではなかった。俺はそれなりに試合にでて結果は出したが、斎藤先輩も俺とあまり変わらないような成績だった。俺がもう少し良いアピールが出来ていたら結果は違ったのかもしれない。


「11番、石井………12番、水谷………13番、近藤」


「はい!」

 

 なんとかベンチ入りメンバーには選ばれた。ベンチ入りメンバーから外れたのは1年生ピッチャーの山路だった。


「ベンチ入りメンバー全員にスタメンのチャンスは残されている。試合当日までに気を抜かずに、練習に励んでくれ」


 確かに山田監督の言う通り、背番号1桁がスタメンとはかぎらない。この背番号は6月序盤に決まったものなので、この1か月の内容によっては試合に2桁の選手が出ることも十分にあり得るのだ。


 俺はレギュラーを取れなかったことに落ち込むことなく、自分の出番を信じて残り1週間の練習に臨むのだった。






「いよいよ明日は試合か……」


 6月最終日の30日15時から開会式が行われた。試合は複数の球場で明日から行われる。


「明日は早いし、もう寝よう」


 明日は第1試合ということもあって、いつもより起床時間が早くなる。俺は寝坊しないように早めにベットに入るのだった。


 その時メールが来ているのに気がついたが、どうせ月末報告だろうと思い、試合後にゆっくり見ようと考えてメールは後回しにしたのだった。









「では、スタメンを発表する。」


 試合をまもなくに控えた俺たちは監督のもとに集められた。さて、スタメンは誰だろうか。



1番 センター   牧田(3年 背番号8)

2番 レフト    北野(2年 背番号7)

3番 ショート   藤田(3年 背番号6)

4番 サード    櫻田(3年 背番号5)

5番 キャッチャー 太田(3年 背番号2)

6番 ライト    山内(3年 背番号9)

7番 ファースト  斉藤(2年 背番号3)

8番 ピッチャー  会田(3年 背番号1)

9番 セカンド   川内(2年 背番号4)



 スタメンは全員背番号1桁の選手たちだった。まぁ、この短期間で1年生が抜くことはさすがに誰もできなかったようだ。


「試合の展開によっては、他の選手もどんどん使っていくから、準備だけは怠るなよ!」


「「はいっ!」」


 こうして、俺が転生してから最初の夏の大会が始まったのだった。







「選手の交代をお知らせします。8番、ピッチャー、会田くんに代わりまして、近藤くん。バッターは近藤くん、背番号13」


 球場にアナウンスされ、俺はバッターボックスに向かう。


 現在、5回表。1対5で、相手にリードを許している。先発した会田さんが5失点し、球数が80球を超えたところで俺に出番が回ってきた。


 相手投手は立ち上がりに制球が安定せず、そこで1点失ったがそれ以降は立ち直っていた。ストレートの球速は130Km/h前後、スライダー、フォークが持ち玉のようだった。


 さて、どうするか。代打には警戒して、初球は様子見で来る気がする。ストレート待ちで、ストライクゾーンに来たらフルスイングしよう。



『狙いの球種→ストレート

 打ち方  →フルスイング

 成功確率 →8%』


 俺はバッターボックスに入り、相手投手の動きに集中する。この体になって初めての公式戦、初めての打席だがあまり緊張はないようだ。


 相手投手が投手動作に入り、俺もタイミングを取り始める。相手投手の右腕からボールが放たれた。


「ボール」


 初球は外側に外れてボール。様子見だろうか?ここはカウントを悪くしたくないと思うし、もう一度同じ狙いでいってみよう。


 投げられた球は先程よりも内側に入ってきていた。俺は狙いを定めてフルスイングした。


『ブルン』


「ストライーク!」


 途中からボールが曲がっていき、バットに当たらずミットに収まった。スライダーでカウントを取りに来たのか……。


 次も同じ狙いで打ちにいったが、同じようにスライダーを投げられ追い込まれてしまった。


 ワンボール、ツーストライク。ピッチャー有利なカウントだ。フォークがあるからそこを待ちたいが、それでストレートが来たら完全に振り遅れる。しかし、ここまで変化球にまったく合っていない俺は、フォークが来ると予想し、狙いを変えた。



『狙いの球種→フォーク

 打ち方  →センター返し

 成功確率 →15%』


 俺は相手の動きに合わせてタイミングを取る。投げてきたのは真ん中低め、そこから変化したらボールになると思いって俺は見逃した。


「ストライク、バッターアウト!」


 ボールは落ちることなくミットに吸い込まれた。球種はストレート。気付いたときには手遅れだった。


 俺の初打席は、見逃し三振で終わった。










「ゲーム!」

 

「「ありがとうございました!!」」


 整列したあと、ベンチに引き返していく。結果は2対9で7回コールド負けだった。あの後俺はベンチに下がり、2番手でマウンドに立った3年の島内さんが2回で4失点してリードを広げられ、反撃及ばずに試合が終わったのだった。




1年目夏、結果は初戦敗退。俺の甲子園優勝を目指す戦いは、まだ始まったばかりだ。


高校野球、そんなに甘くないですね。次回からは新チームです。

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