重点成長能力
「うーん、こんなものかな?」
前世の自分である山田監督に現状を伝え、今後の協力について取りつけることができた。しかし、具体的にどうしたらいいか見当がつかないので、今後のアドバイスをメールで聞いてみることにしたのだった。
「さて、返信が来る前に少し勉強でも……え、もう返ってきたの!?」
携帯の画面を見ると、すでに一通のメールが届いていた。案の定神様からだったので開いてみる。送ってから1分も経っていない気がするんだけど……。
『神様 2021/04/18
宛先:baseball.8989@anu.ne.jp
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さすがじゃのう!
昨日ぶり、神様じゃ。君はすぐ寝てしまうから返信急いでみたぞい。
さて、さっそく一歩前進したようで、一安心じゃ。これからのことについてじゃが、まずはチーム力を上げることが大事じゃな。具体的には勝つために必要な練習を指示して、選手の個々の能力を高めることが大事じゃな。
君にできる力の1つに『重点成長能力の設定』がある。君が心の中で重点練習能力を決めると、チーム全員の成長速度が高まるのじゃ。便利じゃろう?
ただし、注意点がいくつかあるのぅ。
①決められるのは朝起きてから、練習が始まるまでの間
②一度決めたら10日間は変更できない。
③重点成長能力に設定した能力を高める練習だけすれば効果的だが、他の能力は何も練習しないと下がってしまう。ある程度のバランスを考える必要がある。
まぁ、大まかに言えばこんなもんかのぉ。最初は上手くいかんこともあるとは思うが、すぐに慣れるはずじゃ。
それと、この内容は山田監督とも共有したほうがいいじゃろう。練習に反映しないと意味がないからのぅ。
君と山田監督はもとの魂は同じだから心の中で会話できるから、今後はそれを活用して伝えると良いと思うぞい。やり方はお互いが同じ身体のパーツを触ることでできる。試してみてくれ。
では、またのぅ。
この文章量を1分で書き上げたの?神様すごいなぁ……。
重点成長能力の設定と心の中での会話か。さっそく明日試してみるか。
「〜と、いうわけなのでこれからは効率よく練習できるはずです。重点成長能力はまだ決めてないのですがどうしますか?」
翌日、俺は練習終わりに山田監督のもとを訪れ、神様から昨日聞いた話について伝えた。
「すごい力だな……。重点成長能力だったか。じゃあ明日からはとりあえず打撃力を上げたいな。全員が紅白戦でもほとんど打ててなかったし」
「打撃力ですね!分かりました。それと、今後は何かあれば心の中で、会話できらそうなので何かあれば話しかけてください」
監督1年生部員が何度も会っていると、周りからよからぬ声が聞こえてくるかもしれない。なので、それを防ぐために周りから分からないように会話することにした。
「そうですね。基本どちらも帽子を被っていると思うので、何かあるときは帽子のツバを掴んでください。それを見かけたら、俺が合わせますので」
「分かった。逆の場合もそうやって合図を送ってくれ。俺な方でも合わせるようにしよう」
「ありがとうございます。では、明日の放課後練習の開始時に、ちゃんと重点成長能力を設定できたか心の中で伝えるので、よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく頼む」
山田監督との打ち合わせを終え、俺は帰宅することにした。とりあえずは明日の朝起きたら、重点成長能力がチャント設定出来るか試してみよう。
「ふぁー、よく寝た」
俺はベッドから起き上がり、目をこすりながら携帯を確認してみる。特にメールは来ていないようだった。俺の方でもあれから送っていないし、来ていなくても当然か。
「そうだ!重点成長能力の設定をしないと!」
俺はやるべきことを思い出し、心の中で『重点成長能力は打撃力』と、唱えてみた。すると、頭の中から『重点成長能力を打撃に設定しました。次回の変更可能日は4月30日です』と、聞こえてきた。無事に設定できたようだ。
「どんどん人間離れしていくなぁ……。たけど、この力も甲子園優勝するためには必要なことか」
できることが増えるにつれて、普通の人間ではなくなってきている感は否めないが、悲願達成のためにその辺は諦めることにした。
『山田監督、無事に重点成長能力を打撃に設定できました』
『そうか!それは良かった。では、予定通り打撃練習をメインに進めることにする』
『よろしくお願いします。次の能力に変えるときは前日のうちに教えてくださいね』
『分かった。では、とりあえずしばらく様子を見て、29日の練習終わりまでに継続するか変更するか伝えることにするよ』
『分かりました。よろしくお願いします』
放課後の練習では、無事に心の中で会話することができ、用件を伝えることができた。これで今後はむやみやたらに接触しなくても済むだろう。
「チームのことはこれでいいとして、次は個人の問題だな」
せっかくもう一度高校球児になれたのだから、やるからにはレギュラーで試合に出て、自分の力で甲子園優勝に貢献したい。山田監督とは前世のこともあって信頼してもらえたが、それとは別に選手としても信頼してもらえるようにならなければいけない。
俺は打撃力でアピールできるように、練習終了後も明と黙々と打撃練習に取り組むのだった。
3日目にして、総PV100達成しました!ブックマークもしていただきありがとうございます!
感謝を込めてもう1話書き上げました。今後もブックマーク、評価よろしくお願いします!