チャンス?それとも………
「やっと月末か………」
近藤になってからはずっと練習に没頭する日々だったので、考えることは甲子園で勝つための技術的なことばかりだった。しかし、ここ最近は違ってきていた。
「あいつらはなんとかならんかね………」
悩みの種は真島と直正のことだった。ことあるごとに他の部員とトラブルを起こし、その度に俺や木下が仲裁に入っていた。ここ数日は木下のイライラも限界で、ほぼ俺が仲裁していたが………。
「そういえば、推薦枠の選手の能力は見られるんだったな。今年の3人はどんな感じか気になるな」
困ったことは多いが実力は申し分ない。この2人に月岡を入れた推薦枠の3人は、既に練習試合でも結果を残し始めていた。このままいけば、夏の大会でもかなりの戦力になってくれるはずだ。
そんなことを考えながら、俺はいつものように神様から届いたメールを開いて中身を確認した。
『神様 2023/04/30
宛先:baseball.8989@anu.ne.jp
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月末報告じゃ!
久しぶり、神様じゃ。元気にしとるかのぉ?今日で4月が終わるので、月末報告をするぞい。
◎個人能力値
近藤 裕太(3年) 右投げ右打ち キャプテン
※各数値の最大値は100
※数値の右側は補足説明
〇ポジション
ファースト70(+1)
他0
〇打撃
・ミート力 67(+1) バットにボールを当てる能力
・スイング速度 64(+1) スイングの速さ
・パワー 66(+1) 打球速度、飛距離
〇走塁
・足の速さ 53 (+1)単純な足の速さ
・走塁技術 42 (+1)ベースランニングとスライディング
・盗塁技術 33 (+1)リード、スタート、スライディング
〇守備
・肩の強さ 46(+1) 距離
・送球の正確性 44(+1) コントロール
・握り変え 40(+1) 取ってから握り変える早さ
・捕球力 44(+1) 球際の強さ
・打球判断力 44(+1) ボールとの距離感、スタート
・守備範囲 48(+1) (足の速さ+打球判断力)÷2
〇投手
・球速 98km/h
・制球力 8
・スタミナ 11
・変化球 なし
〇その他
・体力 70 練習をする上で必要不可欠
・精神力 55(+1) 様々な場面での度胸
・サインプレー 44(+1) 理解力
・バント 47(+1) バントの技術
◎チーム評価
※最大値は10
・投手力 5
・打撃力 5
・機動力 4
・守備力 4
・指導力 4
・対外評価 3
◎推薦枠部員情報
・星形 光(2年) 打4(+1)走5守4投1他4
・岩井 武(2年) 打6(+1)走3守3投1他4
・月岡 修(1年) 打2走4守2投1他2
・直正 健(1年) 打4走2守3投1他2
・真島 宏大(1年)速4制2ス2変2他2
◎アドバイス
試合の中で成長させよ。
4月は打撃練習に力を入れていた。それもあって星形、岩井は順調に成長していた。俺の数値の伸びが明らかに悪くなってるのは気になるが……。
そして予想通り、1年の推薦枠の3人も能力が載っていた。
月岡は星形の入学時とほぼ同じ、直正は岩井の入学時より走塁と守備の数値が高かった。そして、真島は………よくわからなかった。
まず、俺が投手ではないということが原因だった。数値を見てもこれが高いのか低いのか判断がつかない。そして、その数値が月岡や直正とあまり変化がなかったので、他の選手に比べてかなり優秀というわけではないと予想するのだった。
「うーん、よくわかんないな。しかも………球速以外は大したことないのか?」
最近の練習試合を思い返してみる。明が投げたときは基本完投していた。それに対し、真島は長くても6回。球数や状況によっては4回か5回に交代することが多かった。
「制球が良くないとか、スタミナがない印象はあまりなかったけど………」
試合で制球が乱れて崩れたり、球威が落ちて連打される場面はここまでなかった。
練習に関しても、投手と野手はだいたいの練習が別で行っている。特に投手陣の投げ込みや走り込みはほとんど注目して見ることはなかったので、メールの数値を見るまで特に疑問にもつことはなかったのだ。
「んー、考えても分からないし、明日山田監督に聞いてみるか」
投手陣の練習は二宮コーチが見ている。山田監督なら二宮コーチから真島のことについて報告を受けているはずだ。明日その辺りのことを聞いてみようと決めて、眠りにつくのだった。
『真島か。悪くないけど、まだまだこれからって感じだな。球速だけにみんな目がいきがちだけど、他は平均的だな』
翌日聞いてみると、山田監督がいうには制球やスタミナをはじめとしたほとんどの能力が並のピッチャーと変わらないみたいだった。
『だが、球速だけは1年生にしてはかなり優秀だ。そして、制球やスタミナなんかは練習である程度のラインまで引き上げることは出来るから今は別にいい。それに対して、球速はなかなかそうもいかない。ある意味持って生まれた才能だな。だから、球速だけ優秀だったとしても推薦でとる価値はあったんだ』
確かにここまで真島はストレートを中心に結果を残していた。球速がもっと遅かったなら、ここまで上手くいくことはなかっただろう。それが、あるだけでも投手としてかなり戦えていけるのは間違いないだろう。
『あと、キャッチャーの配球が良いからだな。基本的には直正と組ませるけど、他のキャッチャーならもっと崩れてるだろうな』
『そうなんですか?直正は打撃のイメージが強かったので意外でした』
『まぁ、肩の強さはそこまでだからな。だから余計に打撃に目がいきがちだろうが、リード面においてはかなり優秀だと思うぞ』
普段の練習ではリード面なんて気にしたこともなかった。つまり直正は打撃だけでなく、守備面でもかなり能力の高い選手ということになる。それだけに周りとぶつかることも多いということだろうか。
『ちなみに次の練習試合は試しに石井と直正、真島と水谷でバッテリーを変えてみるつもりだ。それを見れば俺が言ってることが分かると思うぞ』
こうして、GWの試合が始まっていくのだった。
「今日は2校招いての試合だ。初戦は真島と水谷のバッテリー、2試合目に招いた2校の試合をはさみ、3試合目は石井と直正のバッテリーでいく。今はバッテリーをある程度固定しているが、夏は必ず継投が必要になってくる。どの組み合わせでもベストを出せるようにしておいてくれ。では、初戦のスタメンを発表する」
本日のスタメン(背番号は春の大会のときのもの)
1 ショート 星形(2年 背番号6)
2 セカンド 月岡(1年)
3 ファースト 近藤(3年 背番号3)
4 レフト 岩井(2年 背番号7)
5 サード 木下(3年 背番号5)
6 キャッチャー 水谷(3年 背番号2)
7 ライト 飯野(2年 背番号15)
8 センター 平野(2年 背番号8)
9 ピッチャー 真島(1年)
「石井と直正以外はどんどん出していくからな。いつでも出られるように準備しておけよ。まずは初回からどんどん攻めていけ!」
「「はい!!」」
直正はエースピッチャーと、真島はレギュラーキャッチャーと組むことになった。真島と直正にとっては最大のチャンスである。ここでアピールに成功すれば、今後もこの組み合わせで試合に出る機会が増えるかもしれないからだ。
初戦も3試合目も相手はどちらも秋や春に県大会出場を果たしたチームである。力はだいたい互角といっていいだろう。2人の力が試される1日が始まったのだった。
次回は2試合行われます。果たして結果は?
ブックマークまた増えておりました。ありがとうございます。




