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閑話 球児たちの初詣

「なんで、練習しないのにお前と出かけなくちゃいけないんだよ」


「どうせ室内練習場は使えないんだからいいじゃないか。行こうぜ、初詣!」


 元日の昼、俺は木下の家の前に集合させられていた。





 遡ること約12時間前。年が変わったところで、連絡用アプリ『ラァイン』に新年の挨拶が届いていた。俺は送ってきた人に返信を返し、全員分終わったところでさっさと寝ようとアプリを閉じようとした。


「あれ?木下には返したよな。また何か送ってきたのか?」


 確認すると俺の返信にさらに木下から返信が届いていた。


『明日の昼1時、俺の家の前に集合』


「は?ちょっと待てよ。いきなりすぎるだろ!」


 その後返信するが、木下から返ってくることはなかった。翌朝になっても返ってこなかったので、仕方なく時間通りに木下家に向かったのだった。






 そして、現在に至る。本当に勘弁してほしい。


「分かった。初詣行くから。さっさと行こうぜ」


「ちょっと待て、もうすぐしたら来るから」


「は?来る?誰が?」


 歩き出そうとすると、木下に腕を掴まれ止められた。


 他に誰か来るなんて聞いていない。そもそも俺は初詣に行くことすら聞いていなかった。


「あ、先輩方早いっすね!明けおめっす!」


「明けましてございます。今年もよろしくお願いします」


「先輩方、明けおめです!」


 待っていると星形、岩井と1年マネージャーの緑川さんが3人で歩いてきた。


「おう、明けおめ。お前らどこか行くのか?」


「え?どこか行くのか、って一緒に初詣行くって話じゃないすか」


「へ?」


 星形だけじゃなく、岩井や緑川さんも俺がおかしなことを言ったみたいな表情をしている。そうか、犯人はお前か。


「木下。後でおぼえてろよ」


「いや、これには深い事情が………」


「覚えてろよ?」


「………はい」


 俺の有無を言わせぬ圧力に木下は屈したようだった。自主トレでたくさん打たせてあげることにしよう。2箱くらい連続で打ち続けるとか楽しいだろうな。


「全員揃ったなら早く行こうぜ、ここにいても仕方ないし」


「先輩、まだ一人来てないっすよ?」


「え?」


 いつもの4人に珍しく緑川さんがいて5人。ここに来るもう一人って誰だ?


『ガチャ』


「あ、みんなもう来てたんだ。待たせちゃってごめんね!」


 木下の隣の家から2年マネージャーの赤羽(あかはね) 真子(まこ)が現れた。


「木下、後で覚えてろよ?」


「なんで!?」


 木下ことは無視して、全員揃ったので6人で神社に向かうのだった。






「結構混んでるね……」


「私普段初詣来ないから、なんだか新鮮です」


 赤羽さんと緑川さんが楽しそうに話しながら俺たちを先導していた。その間に俺は星形たちにこうなった経緯について聞いていた。


「自分が木下先輩に岩井と緑川と3人で初詣行く話をしたっす。そしたら木下先輩も行きたいって言いはじめたんすけど、『さすがに2年生一人は気まずくないっすか?』って、言ったら『2年生は任せろ』って言ってきて、その結果がこれっす」


「近藤先輩は練習の虫ですからね。普通に誘ったら来ないと思ったんじゃないですか?赤羽先輩は緑川さんが女子一人ということに気を遣って呼んだのかと」


「はぁー。そうなの木下?」


「はい、おっしゃる通りです」


 木下は俺に対して申し訳ないのか、かなりシュンとしていた。さすがに俺もやりすぎたと思い、少しフォローに回ることにした。


「まぁ、こういう機会がないと初詣行くことがなかったし、いい息抜きになるよ。木下ありがとうな。俺はもう気にしてないからさ。だからお前も………」


「そうだろ、そうだろ?俺の作戦と優しい心が今回の成功のポイントなのさ。さぁ、みんなで楽しもうぜぇ!」


「…………」


 俺がすべてを言い終わる前に復活していた。俺はもう木下に優しくしないとこの日誓ったのだった。






 お参りを済ませ、おみくじを引くことになった。各々が順番に引き、せーので同時に開いた。


「やったー!大吉だ!待ち人は……来るぅぅうう!!よっしゃー!!」


「木下先輩喜びすぎっすよ。自分は中吉っすね。まぁ満足っす」


「私は吉かぁ。なんか2人に比べると微妙かも。遥は?」


「私は小吉でした!岩井くんは………大吉じゃん!なのになんでそんな静かなの!?」


「いや、木下先輩が喜び過ぎてるから同じだと思われたくなくて……」


「確かに。岩井は品のある大吉っすね」


「おい、星形。それどう意味だよ」


 星形と木下のやり取りにみんな笑っている中、俺はおみくじの中身を読んでいた。


「そういえば、近藤先輩はどうだったんすか?先輩も品のある大吉っすか?」


「おい!」


「木下怒るなって。俺か?俺は………まぁ、吉かな。普通だったよ」


「じゃあ、俺らの中に凶はいなかったんすね。良かったっす!」


 みんながおみくじの内容を見せ合い始めた。俺はこっそりその場を離れ、他の人が結んでいるところに同じようにおみくじを結んだ。


 俺が戻るとみんなはお守り売り場に移動していた。


「近藤くんどこ行ってたの?せっかく同じ吉だから、おみくじの内容見比べようと思ってたのに」


「ごめん赤羽さん。いつもの癖で結んできちゃったから見せられないや」


「えー、残念。吉なんだから別に持っていてもいいと思うけどなぁ」


「近藤先輩!お守りがあるっすよ!お揃いで買いましょうっす!」


「駄目よ!お守りなんか必要ないわ!もう帰りましょ!」


 お守りを買いたがる星形を緑川さんが止めていた。そんなに早く帰りたいのだろうか?


「そうね、もう帰りましょうか。星形くんお守りは諦めなさい」


「赤羽先輩まで……近藤先輩、何とか言ってやって欲しいっす!」


「お揃いはいらん。帰るぞ」


「そんなぁ……。ひどいっす」


 俺たちは束の間の休みを満喫して、神社をあとにするのだった。

別に本編でもいいのかな?まぁ、野球してないんで閑話ということで。


ブックマークがまた増えていました!ありがとうございます!

昨日は1ページ更新でしたが初の1日200PVアクセス達成しました。ありがとうございます。今後も頑張ります!

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