県内4強との戦い
9月18日 秋季県大会 1回戦
「今日の対戦相手は北上高校だ。夏はベスト4だったな。相手のエースは左の本格派で、ストレートの球速が140Km/h前後と言われている。始動を早くして、ストレートに振り遅れないようにしていこう。では、今日のスタメンを発表するぞ」
本日のスタメン
1 ショート 星形(1年 背番号6)
2 センター 平野(1年 背番号8)
3 ファースト 近藤(2年 背番号3)
4 レフト 岩井(1年 背番号7)
5 サード 木下(2年 背番号5)
6 キャッチャー 水谷(2年 背番号2)
7 ライト 飯野(1年 背番号15)
8 セカンド 町村(2年 背番号4)
9 ピッチャー 石井(2年 背番号1)
木下の打順がもとに戻り、下位打線も少し打順を入れ替えたようだ。二次予選2回戦では2点しか取れなかったから、いじってきたのだろう。1年の飯野はほぼスタメンの座を掴んだようだった。
「名前が呼ばれなかった者もいつでもいけるように、状況をよく見て準備しておけよ。まずは先制点だ!さぁ、いくぞ!」
俺にとっては初となる、県大会での戦いが幕をあけた。
1回表 ツーアウト ランナーなし
先頭の星形、2番の平野はあっという間に凡退していた。ストレートにはバットは当てられるもののファールが精一杯で、追い込まれたあとは変化球で打ち取られていた。
初打席はランナーなしで回ってきた。この投手からは長打は難しいだろう。ヒットを打って少しでも【先導する者】の効果でみんなを援護しないと。
横から見ていた感じだと、相手投手のストレートの球速は140Km/hは出ていないように感じる。初回だからまだ肩が暖まっていないのだろうか。ただ、変化球のキレもかなりのものだった。
ここまでの打席で確認できた変化球はスライダーだけ。他にもあるのは間違いないが、とりあえずは分かっている情報を駆使して狙いを考えよう。
ストレートに自信をもっているのはここまでの配球から読み取れる。やはり狙いはストレートだな。追い込まれるまではストレート一本に狙いを絞ろう。
『狙いの球種→ストレート
打ち方 →ミート中心
打球方向 →センター方向
成功確率 →13%』
マウンドの相手投手はサインに頷き、投球動作に移った。動き出したのに合わせて、俺も早めにタイミングをとる。1球目が投げられた。
『ブルン』
「ストライーク」
初球はストレート。コースはそこまで厳しくないアウトコースだった。狙い通りの球種でコースもストライクゾーンギリギリでもないのに、バットに当てることすらできなかった。いつもより少し早めのタイミングで打ちにいったが、それでもまだ振り遅れているようだった。
マウンドの相手投手はテンポよく2球目を投げてきた。俺は先程よりも早いタイミングでスイングした。
『キーン』
「ファール」
なんとかバットには当たったが、ファールチップが精一杯だった。先程よりもタイミングは合っていたが、まだ少し遅かったように感じた。
カウントノーボールツーストライク。前の二人を見ても、基本的には3球勝負で無駄球は投げていなかった。同じようにスライダーか、それともまだ見せていない球種か………。
とりあえずは変化球狙いで、なんとかバットに当てるしかないな。
『狙いの球種→変化球
打ち方 →ミート中心
打球方向 →センター方向
成功確率 →15%』
素早くキャッチャーとのサイン交換を終わらせ、マウンドから勝負の3球目が投げられた。
投げられたボールはインコース低め。俺に向かって一直線に進んでくる。スライダーなら確実にの足に直撃するだろう。俺は思わず背中側に少し飛んで、ボールを避けた。
「ストライーク」
「えっ!?」
ボールは最後まで曲がらずストレートだった。ボールともストライクともいえるギリギリのところに投げ込まれていた。
ストレート3球勝負。俺は三振という結果以上に、何か大きな力の差を見せつけられたような気がした。
『【先導する者】の効果により、チームメイトの能力が試合中2%低下します』
頭の中で打席の結果に応じた効果が告げられる。その言葉に俺はさらに絶望に突き落とされるのだった。
7回表 ツーアウトランナーなし
バッターは木下。カウントはツーボールツーストライクと追い込まれている。俺は他のみんなと同じように、ベンチから声援を送る。
「木下!繋いでくれ!いつもバッティング見せてやれ!」
マウンドの投手から、勝負の一球がボールが投げられた。
『ガゴッ』
木下が打った打球はピッチャーの前に力なく転がっていった。
「アウト!」
それを難なく捌き、最後は木下がピッチャーゴロに討ち取られゲームセットとなった。
結果は0対7、7回コールド負けだった。打線はヒット1本と四球1つの2回の出塁しかできず、完璧に抑えられてしまった。俺自身も3打数ノーヒット。ストレートを最後まで捉えきることはできなかった。
投げては先発の明が6回7失点だった。打ち込まれたというよりは、四死球と味方のエラーで出塁したランナーに足でかき乱されて失点を重ねてしまったのだった。
「負けたのは悔しいが、結果をしっかり受け止めるしかない。この悔しさを忘れずに、夏必ずリベンジするぞ」
試合後のミーティングで山田監督が悔しそうに試合の講評と、今後について説明をはじめる。このあとは練習試合はほとんどなく、オフシーズンに入っていくことが先取たちに伝えられた。
近藤裕太として残された甲子園へいくチャンスはあと一回しかない。今日負けた北上高校、秋の一次予選で負けた東雲高校など県内4強と呼ばれる高校に勝たなければ千葉県を制することはできないのだ。
山田監督の言葉を聞きながら、4強に勝つためには冬にどんなメニューを行うべきか頭をフル回転させて考えるのだった。
県内4強は東雲と北上と、残り2つは………。
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