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お前のことだったのか

「今日は月末か……」


 いつもの流れで神様からのメールを確認する。今回はどんなことが書いてあるやら。



『神様           2022/06/30

 宛先:baseball.8989@anu.ne.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 月末報告じゃ!

 久しぶり、神様じゃ。元気にしとるかのぉ?今日で6月が終わるので、月末報告をするぞい。



◎個人能力値


近藤 裕太(2年)  右投げ右打ち


※各数値の最大値は100 

※数値の右側は補足説明


〇ポジション 


 ファースト52(+4)

 他0


〇打撃


・ミート力   53(+2) バットにボールを当てる能力

・スイング速度 50(+2) スイングの速さ

・パワー    52(+2) 打球速度、飛距離


〇走塁


・足の速さ 37 (+1)単純な足の速さ

・走塁技術 29 (+1)ベースランニングとスライディング

・盗塁技術 20 (+1)リード、スタート、スライディング


〇守備


・肩の強さ   33(+3) 距離

・送球の正確性 31(+3) コントロール

・握り変え   27(+3) 取ってから握り変える早さ

・捕球力    30(+3) 球際の強さ

・打球判断力  31(+3) ボールとの距離感、スタート

・守備範囲   34(+2) (足の速さ+打球判断力)÷2


〇投手  


・球速   98km/時

・制球力   8

・スタミナ 11

・変化球  なし


〇その他


・体力     55(+2) 練習をする上で必要不可欠

・精神力    37(+2) 様々な場面での度胸

・サインプレー 31(+1) 理解力

・バント    34(+2) バントの技術



◎チーム評価


※最大値は10


・投手力  3(+1)

・打撃力  4

・機動力  3

・守備力  3

・指導力  3

・対外評価 2 



◎推薦枠部員情報


・星形 光(1年) 打1走4守3(+1)投1他2

・岩井 武(1年) 打4走1守2(+1)投1他2



◎アドバイス


 信じすぎてはいけない。




「お、やっと岩井の守備が1じゃなくなったな」


 約2か月の守備練習を通してやっと最低値を脱することができた。2試合に一度はエラーしていたのも、これでいくらかマシになるだろう。


「それにしてもアドバイスがまたこれか……。いったい何を表してるんだろう」


 前回は3月の月末報告だったから、4月に入ってくる推薦枠の新入部員の2人かと思っていた。でも、ここまでチームに与えた影響を考えると、違っていたと気付かされる。


 この2人の存在が、チームにとって足りなかった機動力と長打力を補ってくれたからだ。おかげで得点力はかなり改善された。


 山田監督とも、この2人のことではないだろうなという結論に達していた。


 では、いったい誰のことなのか。今月新たに加わった二宮コーチはだうだろうか。……まぁ、貢献度を考えれば彼も違うだろうな。


 俺はその後も考えがまとまらないまま、眠りにつくのだった。




 



『分からないから保留だな。どうせ俺たちではどんなにかんがえても分からないさ』


 翌日、月末報告の内容を伝えると山田監督はすでに諦めているようだった。


『それよりも当初の目標は達成したな。明日からは重点成長能力を打撃に戻してくれ』


『分かりました、変更しておきます』


 うちのチームは打ち勝つ野球を目指している。守備面は最低限あれば良いので、これからはまた打撃練習中心に戻るのだった。








 いよいよ初戦の日を迎えた。


「初戦は浜北(はまきた)高校だ。秋、春は県大会に出ていない。それなりに打てるバッターはいるみたいだが、特筆すべき程の者はいないな。だからといって、油断なんてするなよ。では、今日のスタメンを発表する」



本日のスタメン


1番 センター   北野(3年 背番号8)

2番 ショート   星形(1年 背番号6) 

3番 セカンド   川内(3年 背番号4)

4番 ライト    秋田(3年 背番号9)

5番 サード    斎藤(3年 背番号5)

6番 レフト    岩井(1年 背番号7)

7番 ファースト  近藤(2年 背番号3)

8番 キャッチャー 水谷(2年 背番号2)

9番 ピッチャー  石井(2年 背番号1)



「最初が肝心だ。まずは、先制点とってこい!」


 夏の戦いが幕を開けた。

 




 4回表 ツーアウト 3塁

 

 毎回のようにランナーは出すが、決定打が出ないまま4回まで進んだ。現在0対0。そろそろ得点をとっておきたいところだ。


 マウンドにいる相手投手は左投げで持ち球はストレート、スライダー、スクリューは確認できた。制球は悪くないが、球速はそこまで出ていないように感じる。


 ランナー3塁で、パスボールが怖いだろうし変化球はそこまで投げてこないだろうな……。ということは、ここはストレートを狙ってコンパクトにセンター返しだな。



『狙いの球種→ストレート

 打ち方  →センター返し

 成功確率 →36%』


 

 サイン交換を終え、セットポジションから投球動作が始まる。俺はそれに合わせてタイミングをとり、向かってくるボールに集中する。


「ボール」


「ふぅー」


 1球目はスライダーが外れてボール。一瞬、手を出しかけたがなんとか踏みとどまることができた。


 それにしても初球から変化球か。カウントを悪くしたくないだろうし、次はストレートだと思うけど……。狙いは変えずに、このままでいこう。


 マウンドにいる相手投手の投球動作が始まる。左手から、第2球が放たれた。



「カキーン!」


「しゃあ!」


 打球はショートの横を抜け、センターに転がっていく。それを見て、3塁ランナーはホームに生還した。





 その後、打線の勢いが増し、7回の表を終えて4対0とリードを広げることができた。7回裏、この試合最大のピンチを迎える。


 7回裏 ツーアウト 満塁


 内野陣はマウンドに集まっていた。山田監督の伝言を聞いた伝令もベンチから走ってくる。


『山田監督、ここは続投ですか?』


『まだ、点を取られたわけではないからな。ここまでの投球内容も悪くない。エースである以上ここで変える理由はないな。それでいいか』


『分かりました。俺もそれで大丈夫だと思います』 


「山田監督は、『ホームランでも同点になるだけだから気にするな、思い切って勝負してこい」だってさ。石井はここまでいいピッチングしてるし、大丈夫!俺たちはお前を()()()()ぞ!」


「そうっすよ、石井先輩はエースなんすからバックを信じて思い切って投げたらいいんすよ。みんな、抑えてくれるって()()()()()から!」


「みんな、ピンチにしてしまって悪いな。ここはなんとか抑えてみせる。俺を()()()()()


 ん?まさか、アドバイスの信じすぎてはいけないっていうのは……。


 俺は山田監督にさっき考えついたことを伝える。最初は驚いた様子だった山田監督だったが、最後は俺の考えに頷いていた。


 まだ、予想にしかすぎない。外れていてくれ。


 伝令がベンチに戻り、内野陣がポジションに戻っていく。


「明!思い切って投げろ!」


 


「カキーーン!!」


 カウントツーボールワンストライク。4球目に投げたストレートは無情にも右中間を破っていく。ランナーが全員生還する、3点タイムリーツーベースヒットだった。


「明……」


「タイム!」


 審判の方に目を向けるとベンチから交代を伝える選手が審判の方に走っていくところだった。



「選手の交代をお知らせします。ピッチャー石井くんに変わりまして、佐藤くんが入ります。9番ピッチャー佐藤くん。背番号10。以上のように変わります」 






 その後後続を佐藤先輩が抑え、なんとか4対3で逃げ切ることができた。


 なんとも嫌な後味を残す、俺達の夏初勝利だった。


信頼はしても、信用してはいけない。

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