二宮 次郎
「今日は月末か……」
いつもの流れで神様からのメールを確認する。今回はどんなことが書いてあるやら。
『神様 2022/05/31
宛先:baseball.8989@anu.ne.jp
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月末報告じゃ!
久しぶり、神様じゃ。元気にしとるかのぉ?今日で5月が終わるので、月末報告をするぞい。
◎個人能力値
近藤 裕太(2年) 右投げ右打ち
※各数値の最大値は100
※数値の右側は補足説明
〇ポジション
ファースト48(+4)
他0
〇打撃
・ミート力 51(+2) バットにボールを当てる能力
・スイング速度 48(+2) スイングの速さ
・パワー 50(+2) 打球速度、飛距離
〇走塁
・足の速さ 36 (+1)単純な足の速さ
・走塁技術 28 (+1)ベースランニングとスライディング
・盗塁技術 19 (+1)リード、スタート、スライディング
〇守備
・肩の強さ 30(+3) 距離
・送球の正確性 28(+3) コントロール
・握り変え 24(+3) 取ってから握り変える早さ
・捕球力 27(+3) 球際の強さ
・打球判断力 28(+3) ボールとの距離感、スタート
・守備範囲 32(+2) (足の速さ+打球判断力)÷2
〇投手
・球速 98km/時
・制球力 8
・スタミナ 11
・変化球 なし
〇その他
・体力 53(+2) 練習をする上で必要不可欠
・精神力 35(+2) 様々な場面での度胸
・サインプレー 30(+3) 理解力
・バント 32(+2) バントの技術
◎チーム評価
※最大値は10
・投手力 2
・打撃力 4
・機動力 3
・守備力 3(+1)
・指導力 3(+1)
・対外評価 2
◎推薦枠部員情報
・星形 光(1年) 打1走4守2投1他2
・岩井 武(1年) 打4走1守1投1他2
◎アドバイス
試合の中で成長させよ。
「予想外の結果だったな」
5月から重点成長能力を守備に変えていた。
星形、岩井の2人の1年生を試合に出す上で、最初に気にしたのは守備力だ。
星形の打撃の数値は1だが、彼は足もあるし、パワーがないだけでボールを捉える能力は高い方だった。
岩井は走塁と守備の数値が1だった。2つを比べたときに、守備の数値を上げることを優先することにした。
以前のアドバイスで『スタメンの選手は、ある程度の守備力がある人にしよう』というものがあった。
岩井には打撃という武器がすでにあるので、守備力の底上げが優先されることになったのだった。
「岩井の守備の数値を上げるつもりが、チームの評価の方が上がるなんて……」
嬉しいことだが、肝心の岩井の守備の数値に変化はなかった。どれだけ低いんだよ……。
山田監督の指導力も上がってるけど、今月なにか変化あったかな……。すぐには思い浮かばないけど、なにかきっかけになることでもあったんだろう。明日教えてあげよう。
「あれ?もう1通来てる。なんだろう」
月末報告を確認し終えて画面を閉じようとしたところで、もう1通のメールの存在に気がついた。
『神様 2022/05/31
宛先:baseball.8989@anu.ne.jp
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めでたいのぉ!
久しぶりのことだから忘れておったかもしれんのぉ。このメールは指導力が上がったことを祝福するメールじゃ。めでたいのぉ。山田監督にもよろしく伝えておいてほしいのじゃ。
今回、レベルアップしたことで報酬があるぞい。選択肢を用意しておいたから、決まったらメールで教えるのじゃ。今後の成長も楽しみにしておるわい。では、またのぉ!
指導力レベルアップ報酬として下記の中から1つが与えられますので、お選び下さい。なお、選ばれなかった項目は次回選ぶことも可能です。
①『コーチ導入』
練習グループをもう1つ作ることができます。重点成長能力も選択可能です。
②『照明設備導入』
練習時間を伸ばすことができます。
「完全に忘れてたな。しかし、今回は選択可能なのか。」
前回はマネージャーが自動でチームに加わってくれた。しかし、今回は2つから選ぶことができるらしい。
「明日山田監督に聞いてから返信するか。何か考えがあるかもしれないし」
俺はとりあえずは寝ることにしたのだった。
『俺としてはコーチ導入かな。』
『即答ですか。何か理由でもあるんですか?』
翌日、俺が月末報告と指導力レベルアップ報酬について話すと、山田監督は報酬について即答したのだった。
『実は、投手陣のことを心配していてな。石井はもとの能力的にある程度やれてはいるけど他はそうもいかないからな。もう一人練習を見てくれる人がいると、かなり助かるんだ』
『そう言われるとそうですね』
それに関しては俺も心を痛めていた。しかし、優先度の問題で投手陣のことは後回しにしてしまっていたのは事実だ。
『では、今晩神様にメールしておきますね』
『よろしく頼む。明日からいきなりコーチが来たりしてな』
『まさかぁ。そんな急に来るわけないじゃないですか』
『そうだよな。でも、マネージャーという前例があるから気になってな』
『ははは、確かに。……まさかね』
夜に俺はメールを送った。神様からは『了解じゃ!』と短い返信があるだけだった。
「普通ならいつ頃チームに合流するとか教えてくれそうなものだけど。……まさかね」
マネージャーとは違う。もとからいる生徒がマネージャーになるのと違って、コーチは外部から招集するはずだ。そんな1日、2日で決まるようなことではないはずだ。
「早めに来てくれると嬉しいんだけどな」
最近心配な明のこともある。早めに投手陣のことを見てくれる人が来てほしいものだ。
「初めまして。二宮 次郎です。今日からこのチームでともに甲子園を目指していきたいと思います。何かあればどんどん声をかけてください。よろしくお願いします」
練習前、ベンチ前に集められた俺達の前には山田監督の横に立つ若い男性の姿があった。神様仕事が早すぎる。
『山田監督、コーチってそんな簡単に見つかるものなんですか!?それに名前がめっちゃ2人目っていうのを強調している気がするんですけど!』
『そんな大声で話すなよ……。俺も今朝聞かされたから混乱しているんだから。名前は知らん。神様にでも聞いてくれ』
周りの様子を見ると、みんな普通に受け入れているようだった。疑うというのとを知らない、なんて素直な心をもった人たちなんだろう。
俺と山田監督の要望が叶い、チームに新たな仲間が加わったのだった。
二宮金次郎ではありません。お間違いなく。




