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監督室での密談

 あっという間に4月が終わり、月末報告の日がやってきた。今回は特に何もないだろうな、と思いながらいつものようにメールを確認した。




『神様            2022/04/30


 宛先:baseball.8989@anu.ne.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 月末報告じゃ!

 久しぶり、神様じゃ。元気にしとるかのぉ?今日で4月が終わるので、月末報告をするぞい。


◎個人能力値


近藤 裕太(2年)  右投げ右打ち


※各数値の最大値は100 

※数値の右側は補足説明


〇ポジション 


 ファースト44(+3)

 他0


〇打撃


・ミート力   49(+4) バットにボールを当てる能力

・スイング速度 46(+3) スイングの速さ

・パワー    48(+3) 打球速度、飛距離


〇走塁


・足の速さ 35 (+1)単純な足の速さ

・走塁技術 27 (+1)ベースランニングとスライディング

・盗塁技術 18 (+1)リード、スタート、スライディング


〇守備


・肩の強さ   27(+1) 距離

・送球の正確性 25(+1) コントロール

・握り変え   21(+1) 取ってから握り変える早さ

・捕球力    24(+1) 球際の強さ

・打球判断力  25(+1) ボールとの距離感、スタート

・守備範囲   30(+1) (足の速さ+打球判断力)÷2


〇投手  


・球速   98km/時

・制球力   8

・スタミナ 11

・変化球  なし


〇その他


・体力     51(+2) 練習をする上で必要不可欠

・精神力    33(+1) 様々な場面での度胸

・サインプレー 27(+2) 理解力

・バント    30(+2) バントの技術

 


◎チーム評価


※最大値は10


・投手力  2

・打撃力  4

・機動力  3

・守備力  2

・指導力  2

・対外評価 2 



◎推薦枠部員情報

・星形 光(1年) 打1走4守2投1他2

・岩井 武(1年) 打4走1守1投1他2


◎アドバイス


 試合の中で成長させよ。




「推薦枠部員情報?また新しい項目ができたのか」


 今回の月末報告では推薦枠で入ってきた2人の情報が分かるようになっていた。


 山田監督ともよく話題にしていたし、かなりかわいがっている後輩たちなので、成長が分かりやすいのはありがたいことだな。


 アドバイスの内容も2人のことだろうな。まぁ、これで試合に出していくことは決定になるはずだ。





『じゃあどんどん使っていくか。何か変化があればその都度教えてくれ』

 

 翌日、メールの変化とアドバイスの内容を伝えると、山田監督は寸鳴り受け入れていた。アドバイスを聞く前からある程度は試合で試していくつもりでいたのだろう。


『今月は今日も含めてたくさんの試合を組んでるから、データもたくさん集められる。レギュラー決めには困らずに済みそうだな』


『しっかりと活躍してくれることを祈りましょう。微妙な結果だと、逆にレギュラー決めで迷いが出てしまいそうですから』


 まぁ、アドバイスでも書いてあったし、そんな心配はないとは思うけど……。





「えー、今日から5月はかなり多くの練習試合を行う予定だ。全員にチャンスが与えられるから、レギュラーじゃなかった2、3年も、入ったばかりの1年もしっかりアピールしてくれ。では、本日のスタメンを発表する」


本日のスタメン


1番 センター   北野(3年)

2番 ショート   星形(1年) 

3番 セカンド   川内(3年)

4番 ライト    秋田(3年)

5番 サード    斎藤(3年)

6番 レフト    岩井(1年)

7番 ファースト  近藤(2年)

8番 キャッチャー 水谷(2年)

9番 ピッチャー  石井(2年)


「みんな分かっているとは思うが、俺は学年なんて気にしない。実力があるやつを優先して使っていくからそのつもりでいてくれ」 


 その言葉に何人かの2、3年生の表情が僅かに曇る。


 1年生が試合に出るということは、その分出られなくなる上級生が出てくるということだ。うちの先輩たちも監督と同じく、勝つためには必要なことだと頭では理解していても、実際心の中では複雑な思いがある気がする。


 ここまで一緒に練習してきた仲間が試合に出られないなんて……。でも、ここは実力の世界、これは仕方のないことだ。







 5月はGW(ゴールデンウィーク)もあり、山田監督の予告通りかなりの試合数を行うことができた。8日間で16試合。毎週最低1日は練習試合が組まれた。


 怒涛の連戦をを終えたある日の練習終わりに、珍しく俺は監督室に呼ばれていた。


「失礼します」


「お、待ってたぞ。入ってくれ」


 室内に入ると、椅子に座り、机に置かれたいくつもの資料の中の1つを見て考え事をしている山田監督がいた。俺も目の前の椅子に腰掛け、山田監督と机を挟んで向かい合う状態になった。


「今日呼んだのは事前に伝えていた通り、ベンチ入りメンバー決めだ。資料は揃えておいたから自由に見て、意見を教えてくれ」


 6月に入るとすぐに夏の大会の抽選会がやってくる。そのときにはベンチ入りメンバーを提出しなければいけないので、今のうちに考えてるというわけだ。


 俺は机の上に置かれている1つの資料を手に取って中身を読むと、マネージャーが計算してくれた打率の一覧だった。


1番 センター   北野(3年)打率.280 

2番 ショート   星形(1年)打率.306 

3番 セカンド   川内(3年)打率.352 

4番 ライト    秋田(3年)打率.291

5番 サード    斎藤(3年)打率.319

6番 レフト    岩井(1年)打率.209

7番 ファースト  近藤(2年)打率.344

8番 キャッチャー 水谷(2年)打率.255

9番 ピッチャー  石井(2年)打率.190 

   センター   田中(3年)打率.208

   ショート   越後(3年)打率.166

   サード    木下(2年)打率.263

   ショート   町村(2年)打率.214

   ライト    杉山(2年)打率.153



「この5月の練習試合、星形も岩井も頑張っていましたね」


「そうだな。打率だけ見ればそこそこって感じだが、それ以外のところでかなり目立ってくれたからな」


 星形はヒットもそれなりに打ったが、チーム1の盗塁数、犠打数だった。そのおかげで3番、4番にチャンスで回る機会が増え、効率よく得点を上げることが出来るようになってきた。


 岩井は打率こそスタメン野手の中で最下位だが、長打の数はチーム1だった。5月最終戦では、レフトポール際ギリギリのところだったが、ホームランを放っていた。


「スタメンは今試合で試しているメンバーで行く予定だ。打順は多少変えるかもしれないが、控えの2、3年と変えることはないだろう。控えの3年は守備は良くても、打撃面はあと一歩ってところだからな」


「それでいいと思います。経験のある2、3年が控えていてくれると、試合後半の交代する場面があっても困ることはないですからね」


 その後もポジション面、これまでの練習の様子等を確認しながらベンチ入りメンバーを決めていく。


「エースナンバーは石井に与えるが、これまで通りの活躍を見られるかは正直微妙なところだろうな」


「……そうですね。今の状態はあまり良くありませんからね」


 5月の試合の中で感じた不安要素の1つに明のピッチングがあった。試合の立ち上がりは問題ないし、体力がついたことで投球回数も増え、ある程度の球数なら完投出来るようになっていた。


 しかし、ピンチの場面ではことごとくヒットを許して失点し、その後の打者にも連打を許すことが多かった。


 イニングが変わればまた復調するのと、そもそものうちの投手数が少ないということである程度の失点は許容してきたが、公式戦では話が変わってくるだろう。


「1イニングにいきなり4点も5点もとられるからなぁ。こんなこと今までなかったのに」


「そういえば紅白戦でも普通に失点してましたよね。あのときは気にしなかったけど、明があんな簡単に失点するのは今になって思えば少し変ですね」 


 明の様子については山田監督と何度か議論を重ねていた。普段の投球練習や打撃投手では問題はないし、試合も失点するイニング以外は普通通りだった。


「まぁ、夏の大会では継投のタイミングをいつもより早めに考えるようにするから大丈夫だろう」


 その後、ベンチ入りメンバーの最初確認をしてお開きとなった。


 2度目の夏開幕まで残り約1か月となっていた。

山田の部屋。ルールル、ルルル、ルールル……。


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