期待の新入部員
入学式からおよそ1週間程経ち、とうとう1年生が本入部となる日がやってきた。
今は練習開始前に、ベンチ前に整列した1年生の自己紹介を聞いているところだ。推薦枠で入部した2人は列の最後に並んでいた。
「星形 光です。里江中出身です。ポジションはセカンドやショートを守っていました。よろしくお願いします!」
「岩井 武です。村野中出身です。ポジションは外野手です。よろしくお願いします!」
星形くんはかなり身長が小さいな。間違いなくうちの部で1番小さい。見た感じ、160cm前後だろうか。
それに対して岩井くんは大きい。身長はもちろんだが、体格が結構ガッチリしている。初対面の人は1年生だとは思わないだろうな。
「えー、以上8名が入部となった。分からないことがあれば、先輩たちに聞くように。それではアップから始めてくれ」
1年生はアップの後は2、3年生と別行動になる。最初の2週間は体力トレーニングや硬式球になれるために基礎的な練習メニューが組まれている。
俺たち上級生は、いつも通りの打撃練習メニューを消化していくのだった。
「今日は紅白戦を行う!試合開始は1時間後だ。キャプテンチームと副キャプテンチームに別れて行う。チーム分けとオーダーは俺が考えてきたから、試合開始前に発表する。では、試合開始前と同じアップを始めてくれ」
1年生が本入部してから最初の土曜日、昨年と同様に紅白戦を行うことになった。1年生たちのポテンシャルを確かめるには、絶好の機会といえるだろう。
特に推薦枠の2人は、ある程度の活躍が見られれば山田監督ならすぐに試合で使っていく気がする。年功序列は廃止しているので、実力さえ認められればレギュラーもあり得るのだ。
俺たちはランニング、ストレッチ、キャッチボールとアップを済ませ、山田監督によるシートノックを受けて試合ができる状態に仕上げていった。
「それでは、スタメンを発表する」
○キャプテンチーム
1番 レフト 北野(3年 背番号7)
2番 センター 田中(3年 背番号8)
3番 ファースト 近藤(2年 背番号3)
4番 サード 斎藤(3年 背番号5)
5番 ショート 町村(2年 背番号13)
6番 ライト 平野(1年)
7番 セカンド 越後(3年 背番号6)
8番 ピッチャー 山路(2年 背番号11)
9番 キャッチャー 湯元(1年)
控え
ピッチャー 石井(2年 背番号1)
センター 飯野(1年)
○副キャプテンチーム
1番 ショート 星形(1年)
2番 サード 木下(2年 背番号12)
3番 セカンド 川内(3年 背番号4)
4番 ライト 秋田(3年 背番号9)
5番 レフト 岩井(1年)
6番 キャッチャー 水谷(2年 背番号2)
7番 センター 杉山(2年 背番号14)
8番 ピッチャー 佐藤(3年 背番号10)
9番 ファースト 米田(1年)
控え
ピッチャー 時任(1年)
サード 大林(1年)
山田監督によってスタメンが発表され、試合が始まる。さて、今年の1年生はどうだろうか……。
試合は3対5で副キャプテンチームが勝利した。俺は、4打数2安打1打点でまずまずの成績だった。
そして、1年生の能力を見るという目的だが、注目していた2人は予想以上の力を見せてくれた。
1番ショートで出場した星形は4打数2安打1四球2盗塁だった。キャッチャーが1年生というのはあるが、2盗塁はアピール十分だった。
ここまで、走塁練習はしてきたが、なかなか実践レベルで盗塁できる選手はいなかった。それだけに星形はリードオフマンとして、これから鍛えていきたい人材だった。
5番レフトで出場した岩井は守備で落球が一度あった。打撃面では4打数1安打2打点だった。序盤2打席は三振だったが、3打席目に左中間を破る2点タイムリーツーベースヒットで目立っていた。
守備面など、不安が残る部分はいくつかある。しかし、左の長距離砲がいないうちにとって必要な存在で、将来的には4番打者育てていきたい人材だった。
午後からは普通の練習となり、俺は山田監督と星形と岩井について話していた。
『山田監督、彼ら想像以上に良かったですね』
『俺も見ていてそう感じたよ。次の練習試合から早速試してみるつもりだ』
『それがいいと思います。他の1年はもう少し基本的なところを反復しておきたいですけど、あの2人は実践の中で鍛えていくのが良いと思います』
『近藤先輩として、良い方向に導いてやってくれよ。監督という立場だと、なかなか難しいとこもあるからな』
『任せてください。様子を見て、何かあれば声をかけようと思います』
『そういえば、神様からのメールのアドバイスは信用するな、だったな。一応あの2人は関係ないとは思うけど、一応注意しておこう』
『そうでしたね。すっかり忘れてましたよ。監督見てないところで何かあれば、すぐに報告入れますので』
ここまで一緒に練習してきて特に問題は感じていなかった。練習には一生懸命取り組み、周りとの接し方も良好で、人間性にもまったく問題ないかわいいい後輩たちだった。
ここまでくると、あのメールは神様からのアドバイスを信用しすぎるな、ってことだった説が有力になってくる。とりあえず4月中は、1年生の様子に気を配って過ごすことにしたのだった。
凸凹コンビ登場!2人の活躍、乞うご期待!




