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レギュラー発表

「スタメンを発表するぞ」


 新チームが指導して、2週間ほど経った7月18日。新チームになって初の練習試合が行われることになった。


 今日の相手である湯島(ゆしま)高校も夏初戦敗退で、早めに新チームをスタートさせていた。お互い早めに実践の機会がほしいという利害が一致し、練習試合が組まれたのだった。




第1試合スタメン


1番 セカンド   川内(2年)

2番 センター   田中(2年) 

3番 レフト    北野(2年)

4番 ライト    秋田(2年)

5番 サード    斎藤(2年)

6番 キャッチャー 水谷(1年) 

7番 ファースト  近藤(1年)

8番 ピッチャー  石井(1年)

9番 ショート   越後(2年)



 俺はスタメンだった。理由は斎藤先輩がサードも守れるからだった。


 入学当時はサードだったが、当時の3年生が引退しファーストがいなくなってしまったのでコンバートしたようだった。


 ファーストには俺が入ることで、本職のサードに戻ることが出来たのだ。ただし、1年生サードの木下が俺より活躍するようだと、斎藤先輩がファーストに戻ってきて俺が外れる可能性が高い。


 秋の大会までの限られた時間の中で、斎藤先輩、木下との競争に勝てるようにアピールしていくしかないようだ。






2回表、ツーアウト、ランナー三塁


 俺の初打席はチャンスの場面で回ってきた。この投手は球速はさほど出ていないが、制球力は高いようだった。ストレート、カーブでカウントを稼ぎ、スライダーで打ち取るという配球がここまで目立った。


 ランナー3塁なので大きいのはいらないだろう。コンパクトにセンター返し。狙い球は……ストレートかな。


 『狙いの球種→ストレート

  打ち方  →センター返し

  成功確率 →26%』


 頭の中から声が聞こえた。確率は今までで1番高いようだ。


 相手投手はキャッチャーのサインに頷くとセットポジションに入り、ボールを投げてきた。 


「ボール」


 狙い球ではなかったので見逃す。わずかに外に外れたようだ。


 次は……狙いとしては同じでいいだろう。2球連続カーブは今日はまだない。


 俺は投球動作に合わせてタイミングをとり、投げられたボールに合わせてバットを振り抜いた。


『カキーン!』


 打球はピッチャーの横を抜け、ショートが横っ飛びするがグローブは届かずセンターに抜けていった。


 狙い通りのセンター前ヒット。そしてここまでの試合を通して初打点。初打席から幸先よくスタートすることができた。


 その後4打席が回ってくるが、ファーストゴロ、四球、レフト前ヒット、キャッチャーフライと4打数2安打1打点1四球だった。

 

 2試合目は斎藤先輩がファースト、木下がサード、俺はベンチというスタメンだった。


 2試合とも勝利し、新チームとしてはとても満足のいく結果だった。特に目立っていたのは1試合目に先発した。明だった。明は7回 被安打5 失点0 1四死球 4奪三振の好投を見せたのだった。


 2試合目に先発した佐藤先輩もよく投げたが6回3失点と、明と比べると見劣りする結果だった。


 ちなみにライバルの二人の結果は、斎藤先輩は2試合で9打数3安打3打点1犠飛、木下は1試合で5打数1安打だった。


 木下よりはアピールできたかもしれないが、あまり変わらないような気もする。実践の機会はまだ数回予定されているので、継続してアピールしていかないとな。








「それでは秋の大会の背番号を発表する」


 今回は夏と違って全員がベンチ入りできるので、背番号発表となっている。あの後、ほとんどの試合でファーストでスタメン出場してきたが、果たして……。


「呼ばれたら返事をして背番号を取りに来てくれ。では、背番号1番、石井…………2番、水谷……………3番、近藤」


「はいっ!」


 無事に1桁の背番号を手に入れることができた。何度か試合をしたがコンスタントにヒットを打つことができ、良いアピールをし続けることができていたのだった。


「前にも言ったとおり初戦は藤丘(ふじおか)高校。夏の大会ベスト16に入った高校だ。主力はほぼ3年生だったみたいだから、今のチームがどれだけかは分からないが、実績のあるチームだ。油断せずにいこう」


 7月の終わりに行われた秋の大会の予選の抽選会では、いきなり格上の高校と当たってしまった。しかし、どこも新チームになっているので、戦力が大きく変わっていることも考えられる。チャンスはあると思って戦うしかないだろう。


「試合までは、残り1週間。各自怪我だけには気をつけて落ち着いて過ごすように。では、解散。」


 俺はレギュラーの背番号を手に握りしめ、ルンルン気分で家に帰るのだった。








「一応神様に報告メールでもしておくか」


 自分から神様にメールすることはほとんどない。お世話になっているし、こういう機会にちゃんと報告するのは大切なことだろう。


 俺は無事にレギュラーになれたこと、今後も応援よろしくお願いします、という内容で神様にメールを送った。おそらく返信はすぐ来るだろうな。あ、もう返ってきた。





『神様           2021/08月/10


 宛先:baseball.8989@anu.ne.jp


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 よかったのぉ!


 わざわざ教えてくれて、ありがとうのぉ。人数が少ないとはいえ、お主が全体練習後も自主トレで人よりもバットを振ってきた成果じゃて。これに満足することなく、今後も鍛錬を怠るでないぞ。

 お祝いに1つ、力を開放したから有意義に使うのじゃ。健闘を祈っておるぞい。




『心の支え』


『この力は1番共に練習した人と、同時に試合に出ることで発動します。ここぞという場面で、本来の力以上のものが発揮されます。回数は1試合に1度、自動で発動します。ここぞという場面がなければ発動しない試合もあります』



「……何これ?」


 神様からのメールを見たらなぜか力を開放され、頭の中から音声が流れてきた。


 発動タイミングが自動ってことは、特に気にしなくても良さそうだな。勝手に発動してくれるようだし。


 それにしても1番共に練習した人か。明しか思い浮かばないけど、どうなんだろ?その辺は教えてくれないみたいだから気にしても無駄か。


 俺は思いがけずに新たな力を手に入れることになったのだった。

明は石井 明のことです。よく自主トレ一緒にしているエースピッチャーの子です。

7月の月末報告は飛ばしました。成長については次の報告まで、お楽しみに。

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