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昔の夢


音が聞こえる。


これは、アラームの音だ。


鳴り響くアラームを止めるためにスマホに手を伸ばす。

窓からは爽やかな朝の陽ざしが差し込んできていた。

いい天気。だけど、起きたばかりの僕は、悪い夢のせいで寝汗をどっとかいていた。身体がダルい、とてもコンディションがいいとは言えなかった。


今日の夢、あれは、小さい頃の出来事。


小学生に入りたての頃だったと思う。

怪我をして泣いていた女の子がいた。

たまたま通りかかった僕は彼女の手当をして、お話をして、泣いていた女の子も笑ってくれて、僕にはそれがとても嬉しかった。その女の子とは仲良くなって、一緒に遊ぶことも多くなり、お互いの家に行ったりもした。


だけど、そのことで当時のクラスの中心的なグループに、僕たちは揶揄われることになってしまった。


「うわぁ~お前ら付き合ってんの?」

「お似合いだなぁ!ひゅーひゅー!」

「キスしてみろよ!はいキース!キース!」


今考えたら仕方ないことだとは思う。あの年だったらよくあることだけど、その時の僕たちには耐えられなかった。すぐに僕は止めてもらうように言おうと思ったが……



「はぁ~そんなわけないでしょ、なんで私が!やめてよね!」



女の子はすぐに僕を拒絶して離れて行った。

確かにその方が早い、賢い選択だとは思うけど、当時の僕はとても悲しかった。


せっかく仲良くなれた友達を失くしてしまったから……



正確に全てを覚えているわけじゃないけど、そんな感じ、今でもたまに夢で見るくらいには、結構なトラウマになっているんだと思う。あれ以来、目立っていて、騒がしいというか、活発というか、そういう人たちを見ると、揶揄われたことを思い出してしまうから、苦手になってしまった。


重い身体を引きずってシャワーを浴びに行く、無心で熱いシャワーを浴びているうちに、重苦しく感じていた身体のダルさも取れてきた。

昔のことなんだ。今でも気にしているのは事実なんだけど、それでもあの人に出会ってからはあまり気にしなくていいんだと思えるようになった。


憧れのあの人。羽月はづき みなと先輩。うちの学校の生徒会長だ。


湊先輩とは中学に入ってから出会った。

初めて見たのは生徒会としてキビキビと現場を指揮している先輩の姿。真面目そうで、誠実そうで、安心できそうなそんな人だった。先輩に憧れて僕は生徒会に入ることにした。実際に話してみると湊先輩は想像通りの人で、他人を揶揄うようなことはしない人だった。

湊先輩は気さくで、優しく仕事を教えてくれ、とても仲良くしてくれた。


そんな先輩と生徒会で一緒に働くうちに僕はどんどん湊先輩に憧れていった。この人と一緒にいれる日々が楽しくてしかたなかった。

その頃にはもう、たくさんの人と普通に話もできるようになった。


高校も湊先輩を追いかけて同じ学校にした。中学と同じく生徒会にも入った。

湊先輩は中学の時から変わってはおらず、気さくだが、真面目で誠実な先輩のままだった。それがたまらなく嬉しかったことを今でも覚えている。


湊先輩の事を考えていると、起きた時に感じていた気分の重さもすっかりと晴れている。昔は学校が苦手だった時期もあった。けど、今は学校が楽しくて仕方ない。

中学の時は気が付かなかったけど、今の僕にはわかる。



ぼくは、湊先輩の事が好きなんだ。



だからこんなにも毎日が輝いていて楽しく、先輩と一緒に学校生活を送れることに喜びを感じている。

そして僕には、今考えていることがある。


覚悟が決まったら僕は先輩に告白するつもりだ。結果がどうであれ、この気持ちに嘘はつけそうにない。


「よし!」


すっかりと悪い夢のことを切り替えた僕は、今日も張り切って学校に向かう準備を始めた。

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