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焼肉
「私、大阪に帰ることにしたんです」
「ええ〜!」
言葉にしておきながら自分が1番大阪に帰ることを理解しきれていない。
「まぁ・・・いいんじゃない?」
頷きながら彼は網の上で焦げかけた肉を箸で掴み私のお皿に入れる。
「会えなくなってしまいますね。大阪にきた時は連絡ください」
「いいから早く食べろよ」
私はこの人に止めて欲しかったのか。
2人のカルピスサワーがグラスの底をつこうとしており
彼との最後の晩餐はあっけなく終わろうとしている。
このまま帰るのは嫌なのにどうすることもできない無力さで作り笑顔が崩れかける。
この人の前では笑顔を崩したくない。
「じゃあ、今日はもう帰るよ」
「はい」
外の風は冷たくてすぐに心の芯まで冷えてしまう。
手ぐらい簡単に繋げたらいいのに。
「まぁ俺がお前のこと好きだったら大阪に帰るの止めてただろうな」
2歩前を歩く彼は振り向いて真っ直ぐ私の目を見てそんなことを言う。
本心なの?
私は何も言い返すことができなかった。